第18話 境界の惑星 土星

この世の全ての物事は、7つの惑星に分類することができるそうです。

今、あなたが食べようとしている温かい食べ物は木星、部屋の中に飾ってある観葉植物は金星、今しがた届いた手紙は水星、その手紙の封を開けるために用意されたハサミは火星といったように、まるで連想ゲームのようです。

このような宇宙規模の壮大な連想ゲーム、昔の人達は大真面目に学問として考えていたのですから驚きです。いまではオカルトやスピリチュアル、占いという場所に落とされていますが、昔は立派な一つの学問で有った事実は消えません。

ちなみに現代の文明の利器も、7つの惑星の連想ゲームの中に含まれています。ちょうどあなたが、私の書いた文書を読むために使っている携帯電話、いえスマートフォンでしょうか?これらを指し示す惑星が土星のように。



土星は肉眼で見える惑星のうち、太陽から最も遠くに置かれている惑星です。木星の次に大きな惑星で、印象的な環を持っていることでも有名です。

太陽から土星までを、一般的に内惑星と呼んでいます。土星から外側に置かれた惑星は外惑星です。土星は占星術で使用する惑星の外側と、土星から内側にある太陽までの惑星達を分ける境界となっています。そのため土星のことを境界の惑星と呼ぶこともあります。

土星は境界という意味を持っています。人間の皮膚は、外側の空気とその肉体を隔てるものであり、外の世界と私たちを分ける身近な境界線ですので、土星で表されます。皮膚だけでなく、人間の身体の部位を惑星に当てはめたとき、土星は皮膚の他に右の耳、歯、関節、脾臓、骨格、皮等を示します。あまりピンと来ませんが、皮膚が人間との空間の境目だから土星という理由には頷けます。

土星は太陽から一番遠くにあるため、7つの惑星の中で一番遅い動きをする惑星です。故に時の支配者とも呼ばれます。これはギリシャの時間の神であるクロノスにも結び付けられます。

また、ローマではサトゥルヌスという神と結び付けられます。サトゥルヌスは農業の神として知られます。農業は開墾から収穫まで、大変時間のかかる仕事です。そのためでしょうか、土星は農業を示します。

農業だけでなくそれに携わる人、農家、庭師、炭焼き人を示します。農業に使う道具も土星です。農業を行うのは大地ですが、地面に関連するものも土星で示されるものです。地面に生きる生物、地中で育つもの、根菜、水道工事、下水、排水溝、運河、砂地、配管、大地を削る鉱夫も土星です。

穴を掘ることも含まれますので、お墓、墓掘り、葬儀やそれを行うものも土星です。

お墓のようにどこか近寄りがたいものも含まれます。廃墟、腐食、サビ、ゴミ、荒れたもの、悪臭、汚い場所などです。

これらの名を聞くとどこか憂鬱な気分になりますが、憂鬱な気分自体も土星です。非難、隠し事、罰といったものも含まれます。罰といえば、刑務所も土星の領分です。そこは他と遮られたところや状態を示します。囲いや檻、檻にかける鍵もそうです。罰を受ける要因となる悪いお薬や暴力もそうなりますし、人の命が消えること自体も示されます。

他と隔離された場所として、そのような状態に置かれる人も含まれます。修道士や僧侶もそこに含まれる方々です。その方々が守る規律や、断ち切ろうとする悩みや邪な考えも土星です。

書いていてすっかり気分が暗くなってしまいました。ちなみに暗い色自体も土星です。黒や紺色も含まれます。紺色の美しい宝石であるサファイア(蒼玉)や、ラピスラズリ(瑠璃)も土星が示すものです。オニキス(黒瑪瑙)などの黒い石はその色の通りになりますので、言わずもがなです。


どこかどんよりしていて暗いイメージを持つのが土星です。まさしくマレフィックという意味合いのものが多く並んでいます。

しかし、いつもいつでも土星が凶星(マレフィック)であることはありません。置かれる場所によってはベネフィックと同じような作用をすることもあります。

昼産まれの方にとって土星は、無条件に自分の人生を良くするための助けとなる惑星になります。昼産まれでとても良い状態の土星を得ていると、その方の人生において、中途半端な吉星よりも吉星らしく振る舞ってくれます。

より良い人生に導いてくれる知恵というものは土星の領域に含まれます。また古い知恵、自制心、真面目さを示します。どこか土星らしいものですし、そこからネガティブはあまり感じられません。一言で相手を納得させる知恵というものも、土星の領域に含まれます。知恵には良い面も悪い面もあります。あんまりスパッと言い切ってしまうのも問題ですが、時にはそのような知恵が必要なときもあるのです。

けれども土星はどんなに吉星らしく振る舞えても、本質的に凶星です。どこか試練を与えるような厳しい一面を見せる場合があります。土星のマレフィックな部分は変えようがないものであり、気をつけなければいけません。使い方を誤ればやがて罪となり罰を受ける対象となります。

何事も度を過ぎるのはいけませんが、使いようによっては、あなたの掌にあるスマートフォンのように、私たちの生活をより豊かなものに導いてくれるのです。

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