第17話 占い結果は登山の如く

私は今の占星術の師匠に師事する前、他の先生に師事しようとしたことがあります。

その方は占星術とは全く異なることを実践してみえる先生でした。腕があり信頼できる方でしたので、ある時その先生に、私も一緒に学ぶことができないかと聞いてみました。するとその先生は少し困った顔をしたあと、こうおっしゃいました。


私とあなたは、同じ山を登っています。

しかし、あなたと私では登り方が違いますよ。


はじめはその意味が分からず、やがて遠回しに断られたのだと思いました。私にはその先生から教えを受けられない、その才能がない、資格がないのだと絶望したことを今でもよく覚えています。残念ながらその先生から学ぶことは絶たれてしまったのです。


自分が進みたいところへ行けない、道が閉ざされてしまったように思う経験をしたことは、人生において沢山はありませんが、時折発生して私たちを惑わせます。

占い結果でも同じようなことがしばしば起こります。自分の意思とは反する結果が出てしまったときです。

この結果というものには、変えられるものと変えられないものがあるように思います。

私たちには自由に選択できる意思がありますので、ご自身で選択して行動できることに関しては、ある程度結果を変えていけるのではと思います。占いでどうしてもだめだという結果が出ても、その後のご自身の努力や行動、また医療や化学の力を借りて目標を達成できたということを、私は何件も見たことがあります。

変えられないものもあります。ご自身の産まれや、両親、家族、産まれ持ったその人の色、生まれた国、その方の生きられる時間、これをやらなければいけないと決めてきたことなどです。これらを根本から変えることは、なかなか難しいと思います。決めてきたことというのは厄介で、たとえ自分が避けても、その物事が何時までたっても自分について回る、なんてことも発生します。

どうしても願った方向にいけないということもあります。先程の私のように相手から断られてしまった場合などです。いくらこちらがその気でも、相手方からNOと言われたら動くことはできません。また、もうすでに縁の終わってしまった方と再び縁を取り戻したいと思われても、どうしてもできない、何かに阻害されてしまうこともあります。ですが、それがだめだと言われるとそうではない場合もあるのです。縁が切れることが目的だったりする場合もありますし、物事を長く見た結果として、得られなかった物事が、違う何かに変わったり埋め合わせされる、なんてこともあります。後々考えると、縁を持たなかったことが功を奏することも沢山あります。

占い結果が悪かった、望む方向に行けなかったとして、結果が自分の心持ちや努力や行動で変化することもあるし、物事の縁が終わり、新たなものに置き換わることもありますし、自分の力では何ともしようがない(できない)ことも起こりえるということです。


これを実際に山に登ることに仮定して考えてみましょう。

あなたはある山に登りたいと思っていると仮定します。登るかどうかはご自身の意思がありますから、登ると決めて都合さえつけば登ることは可能です。

いざ登ると決めても実行出来ない場合があります。自分の体調が良くなくて登れないとか、天候が悪かったとか、山に登るまでの交通費が出せないなどの金銭の都合がつかない場合です。この場合は体調を整えたり、天候が回復するのを待ったり、しっかりお金を貯めて登ることはできます。つまりその山に登るために必要な準備が不足しているということです。

また、その山に登るには、登山技術が伴っていないということもあります。難易度の高い山に登るには、それなりの経験と下積みが必要になります。登山を始めたからと行って、すぐに北アルプスのジャンダルムには到達できませんし、そもそもそんな危険なところ、充分な準備をせずに登ってはいけません。人様に迷惑をかけに行くようなものです。まずは上高地を周回できるような体力をつけ、必要な登山技術をつけることが望まれます。山にはある程度の登山経験がないと登れない山がたくさんあります。登山経験や装備など、必要な経験を学び、しっかりした機材を整える事ができれば、難易度の高い山だって登ることはできるようになります。まだその山に登るには準備や経験が足りないということです。

自分ではどうすることも出来ない状況に置かれるということもあります。

火山の噴火や台風などの天災が起こり、登山道が無くなってしまった等の物理的な理由で登ることが出来なくなってしまった、なんてことも起こり得ます。また、あなたの住んでいる国が急に何らかの理由で機能しなくなった場合なんかは、もう山登りどころではないでしょう。国が大変なときに呑気に山登りに行こうとは考えられなくなります。これはご自身の努力ではどうすることもできません。

そして、もし目的の山に登ることで、ご自身に不利益が生じる場合、これも登れません。山に登ることでご自身に命の危険が発生する場合ですと、これはもう行かないほうがいいに決まっていますよね?その山には縁が無かったと思い、諦めて他の山を探し、機会をうかがって別の自分に見合った山に挑戦してみることができます。

山に登れないとなったとして、登れるように努力してその壁を乗り越えたりもできると思います。反対にその山に縁がなかったり、自分の力ではどうすることもできないことが起こることもあると思います。

これを今現在のご自身に当てはめて、占い結果が悪いものであったということに変換してみると、また違った面が見えてくるのではないでしょうか。


最初の話のその後、その先生に断われてから何年かして、今の占星術の師匠との御縁を頂きました。師匠から学ぶようになって何年か経ったとき、ふとそのことを思い出しました。

最初に師事した先生は、きっとこうなるという事を、私が別の道を歩くということを分かっていたのかもしれません。だから私に進むべき道を別に探しなさいと、上手に導いてくださったのだと感じます。


人生には色々な因子が重なって、様々な選択肢が出てきては消えるといった事が起こってきます。提示された道がすべてではありません。山の中の道でも、歩きにくい登山道の隣を、進みやすい林道が通っているところもあるのです。一つの道が途絶えても、別の道が用意されているということをもあるのです。

もし今、この文章を読んでいる方で、進むべき道が分からなくなってしまった人がいらっしゃるなら、そのことにとてもびっくりされた事でしょう。時には私のように絶望している、なんてこともあるかと思います。ですが、きっと大丈夫です。また新たな道が近くにあるかもしれないのですから。ただ今のあなたからは見えていないだけなのです。

ちゃんと進むべき道が見つかる、そして進むべき道を歩けると信じて、行動していってほしいなと思います。

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