第10話 ヘレニズム時代の占星術師たち①

ここからは歴史の中で活躍し、現代にも名前が知られている占星術師を紹介します。

ここでの文書は、主に私の師である方から教えていただいたものになります。また個人的に調べて書き足した内容もあります。

これらの方以外にも、きっとたくさんの占星術師たちがいたことでしょう。長い歴史の中で世に知られることなく歴史の陰に隠れてしまった人もいらっしゃるでしょう。長い歴史を生き抜いたすべての占星術師たちに敬意を表して。



‣マルクス・マニリウス(紀元前1世紀)

 古代ローマの詩人。占星術のことを記したアストロノミカ(5巻からなる抒情詩。アストロノミコンとも)の著者。12のサインや、産まれた時のアセンダントに、どの惑星や星座があるとどのようになるのかなど書かれている。和訳された本が出版されているので、現代でも読むことが出来る。


バビロンのテウサー(テューサー)(紀元前1世紀かそれ以前)

古代エジプトの占星術師。バビロンはカイロ近郊のバビロン要塞のことで、ペルシャのバビロンではない。

12サインやデーカンについて残している。これは後のレトリウスが、そっくりそのまま書き写しているため、今日まで残されているとのこと。ペルシャ語にも翻訳され、さらにアラビア語にも翻訳されるほどの影響を与える。


‣ゾロアスター(年代不明)

 いわずと知れたゾロアスター教の教祖ではなく、その名を借りた偽典であると言われている。その背景には、ゾロアスター教は占星術を禁止していなかったということがある。現にペルシャではイスラムに支配されてしまうまで、長い間ゾロアスター教が国教とされていた背景がある。(今現在もゾロアスター教の教祖の生まれ変わりとされる方が、自身のブログで無料の相談をし、時に星の動きから災難に注意しなければならない日を導き出していたりもします。)

ゾロアスター教では神官はマギと呼ばれ、神官であると同時に占星術師だったらしい。

何度も伝えるが、ゾロアスターと名乗っているが、ゾロアスター教とは別のものであり、名前を語ったものであると推測される。占星術について詳しく書かれていて、具体的なタイミングの取り方、例えばいつ頃結婚するか、受胎は何時かなどに主眼を置いている。レクティファイも行っていたらしい。ただ、詳しい文章は見つけることが出来なかった。


‣スラシーラス(トラシュロス)(?~36年没)

 初めて皇帝の下で働いたとされる占星術師。歴史に名が残っているが、彼が書いたものは残っていない。ティベリウス・ユリウス・カエサル帝に気に入られていた。スラシーラスがロードス島に住んでいた時に、何人もの占星術師を試していた皇帝に気に入られることになり、王に仕えることとなった。バルビルスという息子がおり、第4帝クラディウス王即位に伴い、彼もまた親子で王に仕えることになる。

プラトン名義の著作を整理し、プラトン全集をまとめる。(プラトンは前429年~347年)


‣クラウディオス・プトレマイオス(83年~168年ごろ)

 古代ローマの学者。英語ではトレミー。エジプトのアレクサンドリアで活動し、とても博識な人物。トレミーの星座はあまりにも有名である。有名な学術書であるテトラビブロスや、アルマゲスト(天文学)、アポテレスマティカ(占星術)、ゲオグラフィア(地理学)を書いた人物。

テトラビブロスには、所々間違いがあるそうで、難解で変な表現もみられる。これはプトレマイオスが、占星術だけを研究していた人物ではないために起こっているとされる。伝統からの逸脱は評価されるべきではないが、その本質(占星術を後世に残すこと)は、意味のあるものである。後にアラビアの文献にその概念が紛れてしまっているのがなんともはやである…


‣ミシガン・パピルス

匿名の文章であり、その名の通りパピルスに書かれている。書いた人物は不明だが、当時貴重であったパピルスを使用していたことから、身分の高い人物であると推測できる。ヘレニズム時代の平均的な占星術を残しているらしい。


‣シドンのドロセウス(1世紀ごろ)

古代の占星術は彼無しに語れないほど重要な人物である。

ギリシャの占星術師といわれている。後の占星術師であるフィルミクス・マテルナスによると、ドロセウスは元々シドン出身とのこと(なので二つ名はシドンとなっている)。シドンは古代フェキニア国、今のレバノンにある都市である。後にエジプトのアレクサンドリアに暮らす。アレクサンドリアは、当時占星術の学術的な中心地であった。

有名な「カーメン・アストロロギカム」という、占星術のテキストを書き残している。カーメン・アストロロギカムのギリシャ語の原文は既になく、翻訳されたものが5巻ほど残っているばかりである。

著作本の5巻は、①ネイタル、②結婚・出産について、③寿命について、④年について、⑤イレクションやホラリーについてである。ただし、⑤については、ドロセウスのものではないとも言われている。

ドロセウスのトリプリシティはあまりにも有名である。現代の古典西洋占星術の概念として今も使われている。ドロセウスのトリプリシティ以外にも、今日まで影響を与える技法を数多く残している。残っている技法としてセクトの概念、プロフェクションなどがあげられる。



つづく・・・

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