幕間・汝は亜人なりや?
〇 亜人(デミ・ヒューマン)
それは“人”という種の亜種を意味する。
亜種という言葉が、元の種の下位に位置付けられた区分であることを
故に人は、亜人を見下し、そして搾取する。
従わない者がどうなるかは語るまでもない。
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かつて亜人は『
人間はコボルトやオーク、ケンタウロスといった、姿は人間に近いながらも動物の特徴を強く持つ生物を『亜人』と蔑み、
――おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
いつの世も栄華は永遠には続かない。
権力者が横暴で傲慢であるほど終わりも早い。
強い力で抑え込めば、反発する力も強力になる。
そしてついに、歴史を大きく変える事件が起きた。
亜人たちが種の枠を越えて手を組み、人間に対して一斉に蜂起したのだ。
「亜人が人の下位種であるならば! 理性と知性を持ち、動物の発達した身体能力を持つ我々こそが上位の人種であり、『人間』を名乗る貧弱な猿もどきこそが下位の亜人種である!!」
この声明は、当時多くの亜人たちの心を打ち、自尊心を取り戻させ、反逆の炎を燃え盛らせた。人間と亜人の戦いは十年以上続き、総人口の七割を失ったところで数に劣る人間側の降伏によって終結した。
この結末を持って、亜人は『人種』を称するようになり、人間は『亜人』と呼ばれるようになった。人種は亜人たちから土地を奪い、知識を奪い、文化を奪い、歴史を奪った。
あれから数百年。
亜人たちの中に、かつて自らが『人間』であったと知るものはほとんどいない。
人種に見下され、そして搾取されることが生まれついての立場であると、刷り込まれて生きている。
一方、下剋上を果たして栄華を手にした『人種』は、それぞれの種族が国を持ち、国土を巡って争い、人種同士での争いを繰り返すばかり。
結局のところ、今は亜人と呼ばれる『人間』が世を治めようと、昔は亜人と呼ばれていた『人種』が世を治めようと、所詮は『人』のやることに大した違いなどありはしないのである。
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