転移後転生~これもありなのかなぁ?~

nou

まさか、あいつ……

 目が覚めた。俺、日空ひそらそらはこのいつもの日常と言う奴に変化を感じていた。


「どこだ。ここ?」


 それが正直な感想で混乱の原因。未だに掴めない状況への唖然だ。


 周りは見渡す限りの草原。ちょっとした都会に住んでいた俺からするとその光景は異世界染みていて幻想的な風景。


 見覚えがない緑の絨毯。爽やかな風。木漏れ日が彩る木の本で俺は震えていた。


「俺、あれ? どこだここ」


 そう呟く俺に答える声はなかった。


「何で……」

 そう呟いた時だ。


「これ、うちの制服……。あっ」

 顔がひきつるのが分かった。獣に引き裂かれたかのようにビリビリに破れた見慣れた制服。血が付着していてどう見ても怪我をおっていたようにしか見えない。


「怪我、して……ないよな」


 自分の体を触るもそんな怪我は見当たらない。


「っていうか。あれ? 変だ」


 違和感に気付いたのはその時だ。


「体が違う。俺はもう少し」


 太かったはずだ。そう思った時だ。音がした。葉が掠れる僅かな音。おかしな事におかしな事が重なって敏感に感じ取った少しの変化。


 ばっと後ろを振り返る。


「ウゴゴゴゴ」


 笑うような声。耳障りな声色。


「は、はぁ?」


 二足歩行の巨大なUMAそれがいた。


「ちょっ、待てよ。えっと」


 パニックに成っている俺。そして近づいてくるそれ。混乱で逝かれそうな俺はそれの顔を見るしかなく。呆気なくがくついた。


「ウゴゴ」

「ひっ」


 掠れる声で悲鳴をあげる。

 そして俺はその時気づいた。


「あっ」

 こいつ、りょうじゃん。


 そいつの目に映る自分の顔をようやく見られた。暗めで、でもなんだかんだで女にモテていたけど憎めないあいつ。けどそれでも俺が嫌っていた行方不明なクラスメイト。


 そう思った瞬間。


「ウゴー! ゴッゴッゴ!」

 そんな叫びで俺はパンクした。とどのつまり気絶したのだ。


『やっぱ失敗だったかしらあの世界から人を移動させたの』


 それはそう呟く。


『なんだかんだで最初の子は速攻リタイア。次の子は……まぁ、いいか』

 首をかしげるオークに連れ去られる最初の少年良の姿をしたそらの姿を見ながらそれはため息をついた。


『どうやっても駄目そうだし、他の世界の子を選びますか。やっぱり駄目な所は駄目よねぇ。ああ、人件費無駄にしたわ』


 それは自分の財布を見ながらあーあっと金勘定を始めるのだった。

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