第7話 おばあちゃん

 今は田舎に住んでいるおばあちゃん。

おばあちゃんの家に行くと、大きなやかんがあって麦茶を沸かしてくれる。

いい香りがして、ペットボトルのお茶よりずっとおいしい。


麦茶と焼きおにぎり、そしておばあちゃんの顔を思いだしたら、美穂のふるえは少しおさまった。あの日もおばあちゃんは泣きそうな美穂の頭に手を置いて言ったっけ。


「昔はね、白いご飯のことを銀シャリって言ったんだよ。

 おいしいね。幸せだねぇ。

 美穂のおにぎり、焼いてあげようかねぇ」


「おばあちゃん、幸せなの?

 目の前でたくさん人が死んで、こわいこと、いっぱいあったのに?」


「うん、そうだねぇ…。いろんなことがあったよ。

 死ななくてもいい人がたくさん、たくさん死んだ…。

 おばあちゃんだけが助かって、生き残ってしまって…」


おばあちゃんは美穂の手に、焼きあがったほかほかのおにぎりをのせて言った。


「幸せだよ。生きて、生きてこられて…。

 生きてこられたから、こんなにかわいい美穂に会えたんだから」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る