第6話 東京大空襲
その夜。
夏休みの自由課題をやっていた姉が副読本を持ってきて、美穂の前にひろげた。
「美穂、おばあちゃんから聞いた戦争の話を覚えている?
ここに載っているの。
東京大空襲でこの辺は全部焼けて。
ほら、この写真、現在の東京都新宿区だって。
戸山が原は焼け野原となり、町なかから富士が見えたって書いてある。
おばあちゃん、言っていたよねぇ」
戸山が原、とはもう誰も呼ばないけれど、美穂たちの学校や町の名に残っている。
空襲警報が鳴ると、みんな一斉に電気を消して町中が真っ暗になる。
そこへヒューンヒューンと音がしたかと思うと、真っ赤な火の玉が降ってくる…
美穂はおばあちゃんの話の続きを思いだして、思わず身震いした。
そこらじゅうが火事になってグォーングォーンと音をたてて燃えだす。
新しい空気をほしがるのか、火が生き物のように走りだす。
用水路にうずくまっていた人たちの上を火がものすごい勢いで走っていったかと思うと、ついさっきまで話をしていた人が真っ黒になってもう動かない。
悪夢のような夜も必ず明ける。昨日と同じように太陽がのぼり光がさしてくる。
見渡す限りの焼け野原に点々と黒い影が浮かぶ。
その黒い塊が動くと、あぁあそこに生きている人がいるんだと思う。
空を見上げると、昨日までは家々にさえぎられて見えなかった富士山が青く、青く
そびえていたと言う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます