第40話 神御導生再び
「周辺、どうですかね」
「もう少し広げないと、食料が厳しくなりますね。特に商業施設は、○○駅周辺なので、あっちまで行けば、かなり違うと思います」
相談をしているのは、関係者の親。
地図を中心にして、話し合い中。
「どっちにしても、あまり長くは無いし、あまり人数を増やしたくないが。襲ってくれば食らうより、つい仲間にするんだよな」
そう。暴動が起こった頃から、飢餓感が少なくなった。
「近寄ってくる、光の連中。総君がごっそり奪ったからね」
「予想外とはいえ、二〇人も一気に増やした」
「でも、話を聞いたでしょ。光の……」
「ああ。神御だろたぶん。奴に触れられると、意識が乗っ取られ、否応なく体を使われる。本人達は、中途半端に意識があるから、苦しかったって」
「ああ。夫婦者だと、自身の目の前で、奥さんが神御に奉仕するのを、見させられたって泣いていたな」
そう、奴の力は支配を持つ。
ただ俺の方と違い、キツい。
いや俺の方も、…… いや、もっとあくどいか。俺の力は、改変をしてしまう。意識そのものを。だから、神御の支配と違い、辛くは無いだろうが、目の前で妻や子が抱かれていたとしても、きっとどうぞと差し出してくるだろう。
アコギなのは、俺の方かもな。
そんなことを話していると、周辺を見張っている奴と繋がる。
目の前には、五〇人ほどの集団。
「やばそうだ、行ってくる」
そう言って飛ぶ。
現場で見ると、意識を繋いでみたときより、人数が多い。
中心。美女に囲まれて、見たことのある人。
「久しぶりですね。山崎さん」
「斉藤君か、ここを仕切っているのは?」
「そうです。手を出してこなければ、何もしません。お帰りください」
「いや君らは、不法占拠中だ、解放して出ていくのは君達の方だな」
山崎さん。力を得て、力に飲まれたか。随分雰囲気も変わったな。
そう言ったと思ったら、前列。
主に男達が、駆け出してくる。
匂いもするし、俺は仲間達に早急に下がって貰う。
麻痺か、毒か分からないが、食らい中和していく。
影から、獣の顎が襲ってくるが、逆に浸食して行く。
意識が、対象つまり俺に向いている間に、地面に影を広げる。
触れた奴らを、どんどん浸食して行く。
立ち尽くし出す仲間に、異常を理解したのか、山崎さんは逃げようとし始める。
周辺の仲間は、逃走を助けるように突っ込んできて、影に触れ正気に戻っていく。
逃走する、先へ回り込み。
山崎さんの仲間の中に混ざり込み、脇から手で触れ、光使いが常に纏っている光の障壁を直接食い潰し、浸食する。
だがやはり、食い合いでは相殺されてしまう。
足下に影を展開して、落とす。
その後、中で光の攻撃により食われたが、最後は、塗りつぶす。
力を得て期間が短かった割には、膨大な力が、流れ込んでくる。
「あーやっぱり。効率が良いなあ。適当に光を狩りたくなるよ」
周りで、ザワザワしている人たちは、すでに仲間になっている。
ざっと百二十人くらい。大人から子どもまで。
「だけど食らうと、人数が増える。これが問題だ。まあいい。見た感じ何日も食べていない様子だし帰るか」
ぞろぞろと、連れて帰る。
〈くみ、百二十人くらい。連れて帰るから、食べるもの用意しておいて〉
〈げっ。分かった〉
一人に対して、繋ぐのも大分できるようになった。
この前までは、メッセージの垂れ流しになったからな。
力が強くなったせいか、性質がこの前の異変から変わったせいか、よくは分からないが、制御に苦労する。やはり事態は、第二段階へ進んだのだろう。
「さてそういう事で、人が増えて、どうしようもなくなりました」
見回すと、最近入ってきた人たちが、ばつの悪そうな顔をする。
「だが、光に支配された人たちを、助けない手はありません。そこで、隣の駅まで支配地域を拡大します。最初から居た人には説明しましたが、農産物や海産物。それを入手し自給自足できる環境を整えていきます。慣れないうちは大変でしょうが、文化的生活を取り戻しましょう」
偉そうに、若造が宣言するが。
「「「おおっ」」」
そんな威勢のいい声が、帰ってくる。
支配のため、人数が増えると絶対に発生する反乱や苦情が起きない。これだけでもありがたい。まあ、こうしてほしいとの、意見は聞いているけどね。
翌日、一人で隣の駅まで支配をしながら歩いて行く。
俺の支配地域を抜けると、途中から、物騒な雰囲気が漂い出す。
野良の、能力者達が縄張り争いをしているのだろう。人だった物が、あちらこちらに転がり、ひどい匂いがしている。
病気の予防や、みんなを連れてくるのにじゃまなので、綺麗に食らっていく。
探知範囲に入る奴らは、次々浸食していく。
ただあまり、性格の良くなさそうな奴は、食らう。
浸食したときに、見えるからな。
さて、見た事のある奴が、まあ随分と雰囲気が変わったが、目の前に現れる。
「久しぶりだね。神御さん」
「君か、元気そうだね」
「あんたこそ、変な冠までかぶって、救世主かい?」
「ああ私は、神の声を聞いた。この星を纏めなさいと。混沌を収め王になれと」
「奇遇だな。俺も聞いたよ」
そう答えた瞬間。
目の前。世界が、白く塗りつぶされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます