第35話 捉える

 俺は、明智継義。

 ひょんな事から、力と共に彼女をえた。

 人生ここへ来て、いきなり勝ち組へと、変革の時を迎えた。


 彼女は、安田千夏。二個下。

 気が強いが、かわいく。

 何かの時に、デレてくれる。

 体操をやっていて、体は柔らかく。俺の期待も膨らむ。


 彼女を知るため、いつも見守り、情報を集めている。

 そう。その途中で、ショックな事情も知ってしまった。

 彼女の本音。だがしかし。惚れさせれば俺の勝ちだ。

 底辺で生きて来た俺は、こんな事ではくじけやしない。

 君のためなら、足も舐めよう。


 ふへふへふへへ。


 よだれを垂らし、身もだえる。明智。

 そして、力の発動は潜在的意識に影響されるのか。

 カメレオンだけではなく。

 嫌。カメレオンの持つ。力の一種なのかもしれないが、体の末端であれば長さや形を変えられる能力も身につけていた。

 趣味のニ○動ビデオ鑑賞中に、その事を発見し歓喜した。


 無論見ていたジャンルは、美少女な魔道士がうねうねとしたものに捕まり。色々されるジャンル。ぐふぐふと笑みをこぼしていたときに、自らの手が。そのシーンを再現しようとうねうねしていた。

「うん? これは、組み合わせれば。完全なる人間として、完成するのではないか」


 そんな彼が、先ほど聞いた千夏の本音。

 箍をはずのに、時間は掛からない。

 しばし鑑賞したあと後、千夏の部屋を後にする。


 計画を練る。

 昼間はさすがに駄目だ。

 友である斉藤総を、だしにしてくみ達を花火大会に誘い出し、それを安心条件として千夏を誘う。


 あまり大きな祭りではないが、花火は2000発も上がる。

 近くの、神社。此処の大祭が祭りのメインであるため、参道の脇に夜店も出る。


「千夏。チョコバナナを買ってあげよう。ゆっくりと味わうが良い。くっくっく。はあっはっはは」

 明智の妄想は加速し、すすっていたそうめんでむせ込み。鼻から盛大に吹き出す。

 それを見て、目の前でそうめんをすすっていた、母親も吹き出し。カオスな状況が発生する。


「継義食べるなら、真面目に食べな。馬鹿なことをするから、つられちゃったじゃない」

 そう、明智のお母さんは、花蓮タイプ。

 最初に、花蓮に引かれたのは彼の本能かもしれない。


 お互いに、そうめんを口から抜くか、鼻から抜くかで悩む。似たもの親子。


 

 そしてお盆。

 何故か神社で祭りが始まる。

 寺なら分かるが、この近くに寺はない。

 過去に神仏習合が在ったのかもしれないが、今は無い。


 それはさておき。


「おーい。こっちこっち」

 お気楽そうに手を振る、総。

 その脇に並ぶ、美少女達。


「ぬっ増えている」

 そう。奏と杏果が参加。

 そして脇には、千夏が仏頂面で立っている。

 つかつかと近寄り、明智に耳打ちをする。

「先輩達。30分前には来ていましたよ。遅れてこないでください」

「ああ悪い」

 そう返すが、まだ約束の10分前。

 何か理不尽を感じる。


「杏果は熱があるから、手を繋ごうか」

 そう言って、総は手を繋ぐ。


 無論。それを見て。

「人も多いし、手を繋ごうか」

 明智もすっと手を差し出す。

「結構です。そんなにたいした人出じゃないし。クラスの子達も来ているので」

「そうなんだ」


 目の前に居る女の子は、総と嬉しそうに手を繋ぎ、あまつさえ腕まで絡めて寄り添い。幸せそうだ。

 僕には分かる。あの潤んだ瞳。総はどうやって。


「花火は、8時からだから、先にお参りをしようか。神社奥の公園からも花火も見えるけどどうする。そっちで見るなら登る道々夜店で何か買うけど」

 総が話を振ると、花蓮が悩む。


「迫力は河川敷だけどね。首が辛いのと人出が多いから。行くと絶対痴漢に遭うんだよ」

 それにくみが反応する。

「そうそう。どこかのおじさんに胸を揉まれて、花蓮が喜んで、去年は大変だったわ」

「なっ。喜んでなんか、いないわよ」

「そう?普通ならさ、なにすんのよって蹴りあげるくらいするじゃない。それが結構揉ませていたから、上手だったんでしょ」

「違う。あの時は」

 そう言って、花蓮が総をちらっと見る。


「同級生達が居たから、ちょっと我慢しただけじゃない」

「あーそうか。黒瀬っちかぁ」

「黒瀬?」

 総が反応する。


「そうそう。黒瀬って同じクラスで結構モテた奴がいて、今は別の高校だけど、花蓮て好きだったものね。痴漢されても素の自分を見せないくらい」

「くみぃ。そんなこと言い出すなら、総に色々言うわよ」

「まあまあ。仲が良いのは分かったから。じゃあ、山の上へ買い物をしながら上がろうか。杏果も熱があるから、人の居ないほうが良いだろう。明智達はどうする?」

「ついて行きます」

 明智が何かをいう前に、千夏が宣言をする。


 そして、参道で夜店を物色しながら、神社へたどり着く。

 ちなみに、チョコバナナは拒否された。

 基本好きなのだが、3年で大会終了後、実質的引退。それにより練習が減って、乙女の危機があるらしい。



 あらあ。みーつけた。

「見ないと思ったら、奏あんたは総と何をしているのかしら?親友の私が、来ようって誘ったのに。大事な事だから。私は行かなければならないとか言っていたのに」

 台詞とは裏腹に、闇の中。ぽつんと寂しく、立ちすくむ一美。

 総達は、参道の光の中。

 花蓮が、総の機嫌を取るためか、横でチョコバナナをエロっぽく舐めあげ。見せつけている。


 同じく一美の右手には、チョコバナナが握られていた。

 そう、寂しい一美は、総の気を引こうと準備をしていた。

 能力者による本能。それに引かれて。

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