第29話 いえ、通りすがりの高校生です。悪い高校生じゃないよ。

  その頃。光の使い手。神御は疲れていた。

 調子に乗って、女の子達を仲間にして、とっかえひっかえ相手にしていたが、さすがにずっとやり続けることは出来ない。

 それに、自身の放出と共に、ごっそりと力が持って行かれることを、やっと気がついた。


「これは駄目だ」

 ヘロヘロとした腰で、ベッドから抜け出し。

 夜の盛り場周辺で、誰彼かまわず襲い始める。

 やがて、その姿は警官に目撃される。


 やがて、その行動は証拠が固められ、逮捕と至るが。

 その実行において、警察官では手に余るという事になった。

 当然警官達も、人間。怖い物は怖い。

 奴の扱う、光。あれに触れれば、人が消滅をした。

 被害者の遺体はないが、証拠ビデオはある。


「奴は、変な力を使うが、人間でしょう。能力を使いそうになれば、最悪銃撃をすれば」

「それが、問題なのだよ。文字通り、光れば最後なのだ。それも全方位に出せることが分かっている。問題は、それをされたとき。我々が原因で。町が一つ、消滅などとなれば。誰がどうやって、責任を取るのだ」

「それは、そこまでの力があるのでしょうか?」

「分からん。だがそのリスクがある以上。安易に手が出せない。今専門機関に対して依頼を出しているが、返答が芳しくない。向こうも前回の戦闘で、隊員を大勢失ったらしく。こちらが、光だと伝えた瞬間。精査して返答をするという事になった」

「と言うことは、向こうは、その力に関する情報を知っている、という事ですね」

「そうだろうなあ」

 手元には、世界異能力者対応機構という、タイトルの冊子が握られている。


 そして、機構では。

「タイミングが非常に悪い。それも光だと。なんで最近光ばかりが絡んでくる」

「なんだ? 君が自身で。神が我々に課した試練だと、言っていたじゃ無いか」

「そうだが、光は聖なる物でなければならない。今居る奴らのような者はおかしい」


「さてそれはいいが。うちにいた3人は消滅をした。どう対応する?」

「光の能力に普通の能力者をあてても、一方的に食われるだけだ」

「我々は、現地国の、法の外に居る存在となる。対戦車の徹甲弾でも全方位から撃ち込んでみるか?」


「奴らが言っていた、能力リポートがあっただろう。普段でも前周囲にシールドを張っていると。それに触れれば、すべては消え失せると…… いや待てよ。奴ら女好きだったが、その時はどうしていたんだ?」

「監視モニターでは、普通にいたしていたぞ」

「人間の皮膚は、通るのか?」

「いや敵対したときは、消えていた」

 そこまで、言って、何かををひらめいたようだ。


「対象の巣は、判明をしているのか問い合わせてくれ」

「分かった。何をするんだ?」

 銃で何かを狙い、撃つまねをする。ただニヤニヤと笑いながら。


「ちっ。けちめ」



 そして。

 エネルギー切れだぁ。

 くみに続いて、花蓮に吸われた。


 あいつとうとう、杏果ちゃんがいる所で襲いかかってくるし。

 まいったな。しかし、何とか花蓮の部屋へ連れ込んだのに、ずっと杏果ちゃんまで廊下にいたよな。あの年頃って興味があるのか?



 そんなことを、ぶつぶつ考えながら歩いていると。

 路地の向こうから、いつかの光の奴がやって来た。

「ひどく疲れているな」

 声を掛けてみる。

「ああ。おまえもじゃないのか? 扶養家族が増えると、お互い辛いな。おっと、何もしないよ。おまえとじゃ、能力の食い合いになる。今の状態だともっと辛くなる」

「ああ。じゃあ頑張れ」


 そう言って、通り過ぎただけなのに。


 路地を出たら、知らないおじさま達に囲まれちゃったの。

 思わず、食らいそうになった鼻先で、一人がこそこそと言ってくる。

「君、怪我とかはないかい?」

「あっはい。何もありません。どうしたのでしょうか?」

「あっいや。無事なら良いんだ」

 その人は、心配そうに聞いてきたが、もう一人が割り込んできた。すると。

「さっきの男は、知り合いか?」

「いえ。別に。名前も知りませんし」


 すると、その答えに飛びついて、言葉尻を取ってきた。

「と言うことは、顔見知りか?」

「ええ。まあそうですね」

「どういう知り合いだ?」

 えらく。ぐいぐい来るな。


「失礼ですが、あなたたちは何者です? 警察に通報待ったなしですが」

 そう言って、スマホのモニターに浮かぶ。110番の番号と赤い電話のマークを見せる。


「ちっ」

「我々はその警察だ」

 さっき舌打ちをしたな。

「何か証明は?」

 身分証と、警察手帳を見せてくるが、本物を見たことがないので判断できない。


「まあ良いでしょう」

 そう言って、スマホをポケットにしまう。


「それで、○○駅近くの公園で、幾度か見ただけです。会ったときに会釈する程度ですよ」


「○○駅近くの公園?」

「あれ?あそこは、学生達が夜な夜な徒党を組んでいて、捕まえようと思った矢先に。誰も居なくなったところだな」

 ちっ。一美達。警察にマークされて、捕まる寸前じゃないか。


「そんな公園で何を?」

「デートです。かわいい彼女と。愛を語らっていました」

「なっ。そのか…… いや、そうか」

 驚いたのは百歩譲っても、『そのか』の続きが、非常に気になる。


「そのか、って何ですか?」

「いや、まあ気にするな。そこで奴に会ったのだな」

「ええ、会いました。それと、気にします。場合によっては通報案件ですよね」

 すると別の男が割り込んでくる。


「いやすまない。まさか君みたいな子に、彼女がいるなんて思わなかったから、彼も口が滑ったのだろう」

 フォローじゃなく、ぶっ込んできた。


「ぎるてぃ。通報します。警察関係者が5人もよってたかって、おまえに彼女がいるのはおかしいとか、その顔でと言うのはひどすぎです」

 スマホを、素早く取り出し。ボタンをタップ。

『事件ですか、事故ですか?』

 そう聞かれたときに、すかさず言い放つ。

「一番偉い人を出してください。警官によるいじめです」

『はあっ?』

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