第23話 世界の状況

 その頃、色々な問題が発生していた。

 国家保安部の一室。

「ゴミの中に干からびた死体?」

「ええ。投棄場所は様々。ですが完全にミイラ状態で、作り物かと思い放置されていたようです」


 一体、世界中で何が起こっているんだ?


 有名なビデオ配信サイトでは、超能力がトレンドになって、各自が様々な能力を撮影しアップしていた。

 ある者は、手が吸盤のようにくっつき、高いビルの壁面を登りそれを誇る。

 ある者は、平気で車を持ち上げ誇っていた。

 水の上を走り、逆に口や手から水を出し色々なものを真っ二つ。


 口から炎をはき。毒を吐く。

 手から雷を発生して、川の魚を浮かせそれを自慢する。

 そして、一部から始まった、殺人ビデオ。

 フェイクだと書いてあるが、当然そうは見えない。


 当然もっとアングラなサイトでは当然のように広まり、仲間が募集されていた。


 そんな一部では、光を纏い。人々を治療する聖人が現れ。話題になってくる。

 だが、その場を訪れて帰った人はおらず。皆が、信者となる。

 そして、1大宗教活動を始める。


 それを取材に来た者達は、すぐに聖人だ、敬えとドキュメンタリーを流し始める。


「そうか。宗教かしまったな」

 ぼやいているのは、神御導生。

 彼もすぐに、人の洗脳は気がついた。

 だが、こぢんまりと、女性を侍らし満足をしていた。

 もともと、おとなしい性格で、ブラックな会社で勤めていた性格。

 大きな事など、思いもつかなかった。

 無論治療もできる。


「しかし、同じ力を持っている奴らがいるのか。目立つと襲われそうだしな。やっぱり大々的な行動は駄目だよな。あの影使いにも、目をつけられただろうし」

 ネットの情報を漁りながら、うだうだというのが関の山。


 そんなとき、一件の仲間募集の記事を見つける。

 『力あるもの集え。個人では限界がある。俺たちは才能あるものを優遇する。詳細は面談時。能力により報酬に多少格差あり。最低給与月50万円。昇給あり』

「大々的な、宣伝だな。HPも立派だし。説明会だけでも行ってみるか。家族達借金があるし」


 のこのこと、会場のレンタル会議室へ赴く。


 かわいい感じの女の子が、にこやかにアンケート用紙を配っていた。

 エントリー用紙とは違い、簡単なもの。

 項目は、名前と年齢。能力の種類。できること。

 『注記:給与に関係するため、詳細に記入すること』

 そんなことが書いてある。


 神御は、真面目に書き提出。

 会議室内には、すでに10数人。人が集まっていた。

 探ると、確かに力を感じる。

 意外と多いな。


「どうだ、結構馬鹿な奴らはいるだろ」

「そうですね。ですが、いま釣れているのは5人。いや、6人目が来たようです。ああっ? 光? これってあれか? 海外で宗教開いた奴と同じか」

 アンケート用紙が、渡される。

「どれ? そうだな。本当か?」


「ちょっと待て、見てくる」

 そう言って会場へ一人。入っていく。


 戻ってくると。焦った顔で報告をしてくる。

「結構強いぞあいつ。どうする?」

「やばそうか?」

「適当なことを言って、帰らせるか?」

「もったいない。食っちゃえば良いのよ。能力持ちを倒せば、馬鹿みたいに強くなれるのに」


「他の奴は?」

「手段は違うが、毒が多いな」

「じゃあマスクは必須だな」

「かけられるなよ」



 中で待っていると、男が一人やって来た。

「皆さん。お待たせしました。それでは説明を始めます。我々は何かの拍子に力を得て、その強化と維持に食事が必要です。効率的に行えれば良いのですが、個人だと非常にやりにくいこともある。そうですよね。みなさん」


 会場の連中が一斉に頷く。

 釣られて、頷く。

 そうしている間に、口の中が苦い。

 ぐっ毒か。


「そのため我々は、こんな方法を考えました。素晴らしいでしょう」

 そう言っている。司会者はいつの間にかマスクをしている。


 ばらけて座っていた奴らが立ち上がり、その奴らもマスク装備。

 サクラか。

 周辺の毒素を浄化。マスクをしている奴達を光で食っていく。

 受付嬢の顔が焦ったなものに変わる。

 あいつが毒使いか?

 食らおうとして、欲が出て、仲間にする。


「これは一体何だ。体が痺れて動かん」

 マスクをしていなかった5人ほどが騒ぎ出す。


「多分。この会場自体が餌場なんでしょう。奴らにはめられました」

「そういえば奴らは? あっあんた、受付だな。言え、知っていることを話せ」

「ちょっと待って、彼女はもう仲間にしちゃったので。すみません」

 彼女に向かって、説明を頼む。


「報酬で釣って、さっき言われていたように餌場にしていました」

「この会場でも、タダじゃないだろう」

「当然餌から取り上げて。この広さなら、1時間1万円くらいですし」

「何だよそれ」


「ああまあ。今回助けましたが、外で会えば敵ですからね」

 そう言い残して、会場を出る。



「見て見ろ。花蓮。こんな広告で釣れる奴などいるのかね。一度見てくるか?」

「多少はいるのじゃない? でも何かあったら、すぐに足がつきそう。会場のホールや出入り口にカメラもありそうだし」

「そうだよな。杏果ちゃん冷やし中華どう? 口に合う?」

 返事はしないが、こっくりと頷く杏果。

 昨夜残っていた、料理を父親がうまいと言って食べるのを見て、手を出した。

 美味かったようだ。

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