第22話 難しいお年頃

 そしてくみは、朝方。窓から帰って行く。

 きゃほーい状態で。


 そして俺は寝る。


 すると、ゆさゆさと起こされる。

 誰とは言わない、花蓮が人の上にまたがって、揺すっている。

「起きた? おはよう。立ってたから使っているよ」

「親でも使えって、あれか?」

「んんっ。そう。あっ。はあ~。……やっぱり起きると違うね。さあ、名残惜しいけれど、家へ行こう。ご飯作って」

「ちょっと、着替えるから待って」


 今日は、母さんも仕事なのか、誰もいない家を後にする。

 うん? 花蓮はどうやって入った? まあ良いか。


「お邪魔します」

 そう言って、花蓮の家。玄関を入ると、妹さん。

 杏果ちゃんの冷たい目で、お出迎えされる。


 杏果の心の内。

 まったく。どうしてあんな男。

 お姉ちゃんなら、もっとかっこいい男の子から、幾度も告白されていたはずなのに。

 図々しく、家へ上がり込んでくるし。

 あんな人が作るご飯なんて、気持ちが悪い。



「さて、何を作る?」

「練習がきつかったから、軽い物がいい」

「軽いもの? ねえ。あまり、そんなものばかり食べていると、夏バテをするぞ」

「そうだけど」


「そうだ」

 そう言って、鍋に水を張り、ベーコンやタマネギにんじんを刻み。

 レンジをかける。


 ざっと炒めて、その間にジャガイモも、さいの目切りにしてレンジにかける。

 コンソメを、鍋に入れて、炒めた具材を、放り込み。煮立てる。

 ホールトマトを、半分入れて、塩胡椒で味を調える。

 あっ。入れ忘れた。ジャガイモとオリーブオイルも入れる。


 パセリを散らし、花蓮に渡す。

「ゆっくり食っといて。トマトはカルシウム、マグネシウムなどのミネラルも豊富だし、リコピンも抗酸化作用が強く。夏バテに効くらしい」


 じゃあ、ホールトマトの残りを使って、それにさっきの野菜。

 合い挽きのミンチを炒め、その中に、野菜やホールトマトとカレールーを入れて簡単キーマカレーを作る。


 ピーラーでキャベツを千切りにして、さっきレンジで作った鶏胸肉の蒸し鶏をむしって、サラダにする。

 夏向けに、お酢の代わりにレモン果汁を使う。

 オリーブオイル塩胡椒。好みによって、うまみ調味料を一振り。


「できた。こんなものかな」

 レンジを使えば、煮込みの短縮や、台所の熱さが控えられる。

 メニュー的には花蓮の言った、軽い物の真逆だが。


 スープから飲むことで。トマトの酸味などで、食欲も出るだろう。


「うわ。すご。本当に何者? 杏果ぁ。ご飯で来たよ。おいで」

 花蓮が呼んでも、返事がない。

「あれ、おかしいなあ。ちょっと見てくる」


 杏果の部屋の前に行き。声をかけるが、返事がない。

 花蓮は部屋に入る。

「どうしたの? 先輩、ご飯作ってくれたよ」

「あんな人が、作ったご飯なんか。気持ち悪い」

 布団のこんもりとした山の中から、声が聞こえる。

「えーそう。じゃあ要らないのね? 凄く美味しいから、食べちゃうよ」

 エアコンをガンガンにかけ、布団に潜っている杏果にそう言うと、花蓮は部屋を出て行く。


「ごめんなさい。要らないって」

「体調悪いの? 夏バテかな」

「見た目が重いからな。冷やし中華とかの方が良かったかな?」

「冷やし中華は駄目。殺人に発展するから」

「何だそれ」


「知らないの?たがみ○しひさ先生が『DESIRE』と言う作品で書いているのよ」

「ああ、あれか。マニアックな漫画の話を、ありがとう」

「あれは、食べられないから、起こった話だろ。作っていない方がまずくないか?」

「じゃあ明日は、冷やし中華ね」

「ああ分かった」


 一応、彼女の分は、冷めてからラップをして冷蔵庫へ。


 一応、ここに来る目的。お勉強を始めるが、すぐに花蓮はごそごそし始める。

「何をしているんだ?」

「えっ。家の中だから、スカートに替えているの」

「ふーん。でっ。どうして、パンツを穿かずに俺の前に立つの?」

「知りたい? それはね。おなかが張るとデザートが欲しくなるから」

「あっこらもう。妹さんがいるんだろ」

「ふぇふぇこなにゃいから、いいの。んーはむ」



 誰かが見ていた。

 部屋じゃなく、リビングだもの。


 お姉ちゃん。あんな男のあんなもの。

 何をしているの?


 中学2年生の杏果には、衝撃的な光景。

 大好きなお姉ちゃんが、あんな顔。

 凄く嬉しそうで、見たことのない顔。

 むさぼりつくようなキス。


 そして、自身の下腹部の異常に気がつく。

 あっ。お漏らし、じゃない。

 いやっ。


 そして、部屋に戻ろうとして、階段で転ける。


「今。物音」

「うん。見てたから杏果」

「それ」

「うん。大丈夫よ。私の妹だから。エロいはず」

「何だそりゃ」


 そうして結局、搾り取られ、ヘロヘロになって、夜の闇へ消えていく。



「お姉ちゃんどうして。あんな男の。そんなに良いのかしら?」

 知らず知らずのうちに、自分の手がいたずらを始める。

 自分でするのと、そんなに。

 妹ちゃん。花蓮の言う、エロい杏果の手は止まらず。眠れない夜は更けていく。


 無論。俺も眠ることはできない。

「なあ、3日も続けて。体大丈夫なのか?」

「あっうん。無茶苦茶元気」

「そうか。良かったな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る