第21話 私はこうして、入り込む

「ふう良かったよ。総」

 そう言って、花蓮がぐったりしている俺の頭をなでる。


「なにか、流行なのか、それ?」

「何それ?」

「いや、なんでもない」


 結局、一回して。

 着けると駄目ね。

 などと言って、ぱっくりされた。


 何か、流れ込んでくる物が、不足するらしい。


 一緒に、下へ降りると、母さんから声が聞こえる。

「ねえ、彼女さんなの?」

「はいそうです。おかあさま。前田花蓮と申します。先輩の1つ下です」

「あら、かわいいわね。天ぷら作るから一緒に食べていく?」

「はい。お手伝いします」

「じゃあ。お願いするわね。あっ。お家に連絡をしておかないと、心配するわよ」

「そうですね。電話します」


 そして電話をしたが、途中で母さんまで話をして、助けただの、助けられただなど色々長電話をして電話が終了。

 その間、俺は天ぷらを揚げ、そうめんを湯でる。


 水でさらし、きっちりと粗熱を取る。


 天ぷらは、なるべく少量ずつ揚げる。

 温度が下がると、からっとならないからな。


 ついでに、父さんのつまみ用。長芋スティックや、鳥胸をスライスをして天ぷらにしていく。鳥は、ショウガと出汁、醤油とみりんで下味を付ける。


 辛子と、ポン酢で頂くと上手い。


「あら。不思議。家ってたまに、小人さんが出てきて、料理してくれるのよ。便利でしょ」

「良いですね。あっ」

 花蓮の口に、アスパラを突っ込む。


「あつ。でも美味しい」

「それって、さぬきのめざめって言う品種なの。立派で美味しいでしょ」

「そうなんですね。甘くて、柔らかい」


 ギャアギャア言っている間に、取り皿や器を用意する。


 そうしているうちに、父さんが帰ってくる。

 そうめんを見て、またかと思ったようだが。

 俺が天ぷらを持っているのを見て、にやけながら、いそいそと風呂場へ向かった。


 俺が天ぷらを作ると、必ずとり天を作ることを知っている。

 きっと風呂上がりには、ビールを抱えてくるだろう。


 そして、食卓は賑やかだった。


 花蓮が、意外とじゃないな。こいつは、人ったらしだ。あることないことを織り交ぜ。俺に助けてくれたことを喧伝し、モテるから大変なんですと家族にばらす。


 すると、父さんがつまらないことを言い始める。

「いかんな。こんな彼女がいながら、余所に色目を使うなど」

 


 当然花蓮も。

「そうでしょ。そうでしょ。もっと言ってあげてください」

 などと、調子に乗る。


 そうして、食事後。

 当然。

「物騒だから、送っていってあげなさい」

 そんなことになり、送っていく。


「あー楽しかった。良いご家族ですね」

「そうか」

「明日から、部活の帰りに寄りますので。送り。よろしくお願いします」


 そうして、花蓮の家に到着し。当然、素直に、さよならとはならなかった。


 親が出てきて、話をする。

 妹の杏果(ももか)ちゃんも、今、中学2年生だから不安でね。

 とか言う、話になる。


 花蓮の親は共稼ぎ。そのため、不安らしい。

 ただまあ、当然中学校の方が近いし、帰宅時間も早い。

 送ってこいとはならなかったが、花蓮が部活の帰りに、家によって勉強の後に送ってきてもらうと言ったので、少し空気がピキッとなった。

 主にお父さんが。


「2人でと言うのはあれだな。勉強をするなら、杏果も一緒にお願いしようかな。そうすれば、私たちが留守の間。心配しなくてすむ」

「あっそれなら、私が家へ先輩を連れてくれば良いのよ。先輩料理もできるし。今日頂いた天ぷら美味しかったよ」


「ほう。そうなのか。良いことだ。男も料理くらいできなくてはね」

 お父さんがそう言うと、お母さんの目が鋭くなる。

「そうね。お父さん。料理くらいしてくれれば、随分助かるわ」

「あっ。うん、そうだな」


 そんなこんなで、訳が分からず。話が決まる。

 明日から俺は、前田家で、昼飯を作るらしい。

 帰りに、本屋で毎日の献立でも買って帰ろう。


 そして、やっと帰りだが。

 当然、うろうろと徘徊をする。


 あの2人が、最近飢餓感がなくなって、食わなくても大丈夫になったのは、俺が食われているんじゃないだろうか。とくに、くみは、かなりきつい。

 残り一滴まで、食われている気がする。


 さてと、最近覚えた。お誘いをしてみよう。

 俺は公園の真ん中で、力を少し解放する。

 最近、常時開放していると、追いかけられるようになって来た。

 逆に、こいつも能力者だと分かる様にもなった。


 徐々に、皆が変化をしているのだろう。


「あー匂うぞ。お仲間だあ」

 そんなことを言いながら、近寄ってくる男が一人。

 相手が分かるなら、そこそこ強いはずだが。

 視界の外から、鞭が来た。


 だが遅い。

 掴んで、引っ張る。

 目の前にいた奴が、とんでもない方向へすっ飛んでいく。

「あれ?」

 いくつかの木を経由していたらしく。

 至る所で、ゴンとか、ガンとか音が聞こえる。

 どんどんたぐると、血だらけになった、さっきの男が地面を転がってきた。


 ヒクヒクしていたので、いただく事にする。


「あんた、変わった力だな。虫でも動物でもないな。変な奴」

 そう言って、変な奴が、出てきた。

「さっきから、見ていただろう」

「ああ。でも分からなかったが。まあいい。殺ったほうが勝ちだ。俺の必殺パンチを受けてみろ。ギャラクティカ・まっ」

 そこまで聞いて、やかましいから食った。

「そこそこ力があったな。帰ろ」


 そして。

「せ~ん。ぱぁ~い。食わせろ~」

 うん来るよね。

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