第19話 幼馴染みの親友

「そんなに警戒をしないで。私は、桐谷奏。一美の親友かしらね」

 そう言われて思い出す。だがあの時、10人衆の中には居なかった。


「あの集団の中では、見なかったよな」

「うん。全体の監視と指示をしているのは、私だから。一美はちょっとそういうの向いていないから。あの子に任せると、集まれー、行けーの二種類の命令しか無くなるから」

 うん思い当たる。


「そうだな」

「ふふっ。にらまれているけれど、お二人とも恋人?それとも兵隊かしら?」

「「恋人よ」」


「あらあら。そうなの」

 そう言って、目の前にいる。奏が口を開ける。

「やば」

 二人をしゃがませ。

 奏の口を塞ぐ。


 目を見開き驚くが、意識が俺に、入ってきた。

 それと同時に、目がとろんとして、口を押さえた手のひらが舐められる。

 ――あーそうか。ふふっ。主様ね。うんいいわ。好きにして。――


「あー。ひどい。従えちゃった。もう仲間じゃない」

「攻撃されたのに~」

 2人が文句を言う。


 抱きしめて、頭をなでる。

「私も」

 そう言って、奏も頭を持ってくる。

 とりあえず、頭をなでる。

 何だこの状態?


「まあいい。一美達は相変わらず。あの公園か?」

「うん。人が多いし。変な人も多いし」

「でも同じところで、同じパターンは。敵も作るし、国にも目を付けられるぞ」

「うん。なら、理由を考えて移動をする」

「そうした方が良い」


「ちょっと話をしてくる」

 そう言い残し、走って行った。


「連絡先も、交換せず。結構おっちょこちょいなのか?」



 まあそんなことを言ったが、一歩遅かった。

 海側を、飽きもせず徘徊をしていたが、奏からの危険を知らせる感情が流れ込んできた。

 すぐに、影に潜り移動する。


 そこには、一人程度の、ワンピースを着た女の子達の集団。

 そして、にやけた白いスーツを着た男。

 なぜか、光を纏っている。


「奏」

「主様」

 そう言って走ってくる。

「無事か? 一美達は?」

「何とか、逃げています」

「私は、殿で、状況確認中」


 彼女から伝わる心が、安堵に変わる。


「あの女達も、能力もちか。周辺が甘ったるい匂いがする」

 毒ではなさそうだが。影を使い浄化をする。


「あんた何者だ?」

 白スーツに聞く。

「うーん? この若者たちの商売仇かなあ。最近ここで仕事を始めたんだけどねえ。客を、この子達が食っちゃったようで困っているんだ。潰そうかと思ったけれど。まあ来たら、使えそうだから、仲間になってもらおうかなと思ってね。君の横にいる子もかわいいねえ。お兄さんの仲間にならないかい。かわいがってあげるよ」

「ひっ」

 そう言って、奏は後ろに隠れる。


 その瞬間。白スーツから光が発せられる。

「あーこの光。同種だな。俺の影が怒っている。珍しいな」

 ぶわっと勢いよく、地面と空を。影が覆い尽くす。


「俺の方が強いか?」

 白スーツは、まだ扱いに慣れていないようだ。


 いける。などと思ったときもありました。

 影を、ごっそり食われた。

「あがっ」

 一気に喪失感が来る。


「やべえ」

 地面から、針のように影を撃ち出す。

 身軽にひょいひょいと、かわされる。


「うーん。奏」

「はい」

「音を波にして、干渉させ。周辺空気乱せないか? できれば、筒みたいな感じで」

「うー。すみません」

「だめか。それができれば、2450MHzの音で、水に影響が与えられるはずなんだが」

 考える。


 ああこの場に、花蓮が。いや俺と同じなら光を纏っている時点で、効かないか。


 うだうだ考えている間も、影による攻撃は行っている。

 幸い暗いから、やつの攻撃は見やすい。

 反射するものも、近くには無い



 ああ畜生。困ったね。相手の影に比べて、こちらの攻撃は、暗闇では目立つ。撤退して、昼間にお相手してもらうか。だけどなあ。昼間は寝ているのだよ。

 自身の夜型生活が、足を引っ張るとは。ええい。帰る。


「皆。帰るぞ。また今度。昼間に遊ぼう」

 そう言って、全方位に光を発する。


「やなこった」

 どこかで、そんな声が聞こえる。

 足下に影が、広がってくるが、光により焼く?事ができる。


 何とか逃げ切る。

「皆居るか?」

「ええっ。居るわね」

 

「まいったな。光と影なら、普通。光の方が正義だろう」

 公園を振り返るが、そこに人の気配は無かった。


 そして。

「君達。何処の店?」

「客引きとかしていないよね」

 おまわりさん登場。


「何ですか? いやだな。変な勘違いをしないでください」

「勘違い?」

「ええ僕たち。音楽の同好会で、練習の帰りです。お店とは何の話でしょうか?」

「あっいや。すまない。物騒だから気をつけて帰って」

 そそくさと、逃げていく。


「音楽?」

「ああ毎日のように、発声練習はしているだろ」

「しているわね。確かに。おもに。あ~だけど」

「いいじゃ無いか。人それぞれ」



「主。いえ。総。ありがとうございます。ですがなぜおわかりに?」

「ああ。どこかで繋がっていてね。危険を知らせる。助けて。まずいって言う声が聞こえたのさ」

「えっ。私の心の声が筒抜け?」

「いや筒抜けでは無い。普段はあまり聞こえないし」

「そう。それは良かったです。筒抜けだと、ちょっと恥ずかしすぎます」

「そんな事、考えているの?」

「ええ割と」

「そうなんだ」


 そう言っていると、柔らかなものが唇に触れる。

「後片付けをしてから、帰ります。先にお休みになってください」

 そう言って彼女は手を振り、闇へと消えていった。

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