第14話 幼馴染みの変化

 近くで人が死んだけど、攻撃をしていないから。変化は無いよな。


「なっ。おまえ。いつの間に。マスターお知り合いですか?」

「ああ。知り合いだけど。しばらく合わないうちに、少しは鍛えたの?」

「うんまあ。守ってくれる人がいなくてね。一美。久しぶりだね。それじゃあ。また」

「ばかね。現場を見られて。帰らせる訳がないでしょう?」

 俺はそれを聞いて、ニヒルに笑い。


「こういう場面では、素直に帰す方が。被害が少ないし。お互いのためなんだよ。我が愛する。一美」

「きも。なに? しばらく合わないうちに。おかしくなったの?」

「いや昔から。好きだったけど」

 この際告白して、情に訴える。

 一美ならきっと、答えてくれる。


「良いもう良い。幼馴染みだけど。きもい方向に進化したみたいだし。食って良い」

「えっ。本気か? 僕はこんなにも、君を愛しているのに」

 僕は両の手を広げ、訴える。一美は、何も言わず。手を上げる。あれ?


 するとまあ、来るよね。

 明智君もこの際だ、仲間になって貰うか。

 真の仲間に。


「おい。おい明智君」

「何だよ、この状況」

「やかましい。おまえが、軟派なんかするせいだろう」

 明智君を砲弾にして、一人にぶつける。


 よかった。攻撃されなかったようだ。

 よろめいた、そいつを。食らう。

「気を付けろ、こいつ能力持ちだ」

 その情報に間違いないが、すでに俺は、明智君を小脇に抱えて逃走中。


「何処だ。さがせ」

 そんな声が聞こえるが、すでに影へと潜り。明智君家の前。



「明智君。おい」

「んあ? 奴らは?」

「もういない。家まで来たぞ。歩けるか」

「ああ。助かったのか」

「多分熱が出るから。明後日。大丈夫かな?」

「はっ。舐めるな。這ってでも行く」

 やれやれという感じで、答えてくる。

「おう。頑張れ」



 その頃。

「見つかりません」

「えっ。あっ。分かった。もう良い」

 私はパニックを起こしていた。


 数年ぶりに会った、幼馴染み。

 総は、小学生の時。いつもいじめられていた。

 私は、助けるのを理由として、周りの奴らを腕試しに使っていた。


 いつも、私の足下で、変な顔をして、泣いていた総。

 あの力は何? 

 普段出てくるのは、昆虫の力が多い。

 でも、あれは。あの力は、全く違う。

 人が、一瞬で消えた。

 全くの異質。私の背中に冷たい汗が流れる。


 中学3年生の時。私をレイプしようとした奴に、襲われたとき以来。

 あの時、私の中にまだ、恐怖はあまりなかった。


 だけど、練習帰りの疲れと、素人だという侮り。

 襲ってきた奴の肘が、たまたまだろう。私の頭に当たり、ふらついた隙に本気で殴られた。

 私は初めて、体に力が入らず。動けなくなった。

 そう。その時、初めて。怖いということを知った。


 でも、何とかその時は、抵抗しなくなった私に安心したのか。

 間抜けにも、隙を見せた男。


 先生の、言っていた言葉を思い出す。。

 ――男相手なら、困った時は、とりあえず。金的。次が目潰しよぉ――


 私は寝ていて、相手は、立っている。

 躊躇無く。とりあえず金的。

 股間を蹴り上げ、蹲った所に。

 私は手近にあった、土留め用のコンクリートブロックを落とした。

 幾度も。幾度も。


 動かなくなった、その男。

 足が震え、口の中はからから。


 そして、あれがやって来た。

 ひ弱な私を、助けてくれる力。

 意識したところから、凶悪な口が出て、その男は餌となった。

 そう。周りの雑魚とは違う。動物系の力。

 その後、1週間も熱が出て。寝込んだけどね。


「まあいい。今日は撤収」

「「「はい」」」

「一美。あの男はどうするの?」

 声を掛けてきたのは、数少ない私の親友。

 桐谷奏。

 髪はロングで、清楚な感じの超美人。

 普段は図書館で、静かに笑みをたたえ。座っている。


 中学生になって、男子の良くある。

 異性としての興味から始まった、いじめを受けていた。

 それを、助けてからの付き合い。 


「あいつは、知り合いだから。何とかするわ」

「そう。早めに何とかしないと、まずくなるわよ」

「分かっているわ」


 そして、二日後。

「よう一美。奇遇だなあ」

 駅前。10時前。

 脇にかわいい女がべったりと張り付き、横には体調が悪そうな男。


 それにしても。驚きだけど、どう見ても彼女。

 こんなのがいるのに、あの晩私に言った。愛しているは何だったのよ。

 好きでも何でも無いけれど、妙に腹が立つ。


「良い根性しているわね」

「うん? そうか」


 そこへ、また一人。女が来た。

「先輩。やっと復活です」

 そう言って、総に抱きつく。


 なっ。こいつも?

「くみ。熱は引いたのか」

 ためらいもなく。総の手が、くみと言う女の額へ、あてられる。

「あん。熱引いたでしょ。でっ。この子は? 紹介するのは千夏でしょ」

「そうよ。ねえ、総。この子誰?」

 花蓮の物言いと、態度の変化にくみが気づく。


「ああ。この子は、俺の幼馴染み。不破一美。子供の時は、泣かされていた俺を助けてくれた恩人だよ」

「ふーんそうなんだ。そんなことより、花蓮あんた何? そんなに甘えて」

「うん? えへっ。くみごめんねぇ」

 その表情、その言葉。

 てめえ。やりやがったな。


 くみと花蓮の視線上で、火花が幻視される。


 あたしを紹介されて、ふーんの一言。

 何? なんなの、この状況。


「お待たせしました」

 そして、また一人。


「千夏おそーい。あっこの人が、明智さん。じゃあ後は、お二人で」

 そう言った後。何かテンパった、くみは。俺の手を引き。どこかへ行こうとする。

「どうしたんだ。くみ」

「どうしたもこうしたも、花蓮だけなんてずるいです。ホテルにゴー」

 そう言って、右手を突き上げる。


「朝っぱらから、何を言っているの? とりあえずデートからでしょ」

 花蓮が常識的発言をして、たしなめる。くみがぐぬぬとなる。


「じゃあ。俺たちデートだから。またな」

 そう言って、奴らは雑踏に消えていった。

 ぽつんと取り残された一美。


 なに? この言いようのない敗北感。

 それに、彼女2人? ホテルにゴー? なによそれ。


 その晩。駅周辺は、徹底的なナンパ狩りがされたとか。

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