第12話 デートの下見というデート

「俺、明後日って言ったよな」

「うん言ったわよ」

「あいつ。今から行くって言ったよな。あーくそ。出やしねえ」

「見に行こう。デートの下見にも良いし。レッツゴー」


 元気よく花蓮が立ち上がる。

 やっとミニスカートは止めてくれたようだ。

 マニッシュコーデで、広めのパンツと長めのジャケットを合わせている。


 電車に乗り、○○駅へ。

 到着して、おバカ明智の携帯を鳴らす。

 周りで音はしないし、出もしない。

「でないな、どうする?」


「あっあそこ行きたい」

 指さすのは、複合の商業施設。

 ファッション関係はもちろん。雑貨や、本。ちょっとした、ゲームコーナーとかもある。


「まあ良いか。行こう」

 あいつなら。本気で待つなら、遊んで終わってからでも。居るだろう。


 てくてく歩いていると、結構人が居る。

 思わず、手を繋ぐ。


 横であたふたしているが、無視して歩いて行く。

 到着して、建物に入ると涼しい。


 本屋を見て、その後。ゲーセンへ。


 クレーンゲームやお菓子を掬うものを、少し賑やかし。欲しがったぬいぐるみを取る。そして定番のようで、流れるようにプリントシール機が並ぶ場所へ進む。


「撮りましょ撮りましょ」

 花蓮は妙なリズムで歌いながら。喜んでいるから良いけど、絶対変な顔になるんだよな。

 いくつか連続で撮影し、印刷するものを選択する。

 いくらか足せば、盛ることができるらしいが、そのまま出力。

 花蓮が、ポケットへ一瞬入れようとして止まる。

 俺の方に向いて、にへっと笑う。


「ねえ。手」

「うん?」

 そう言って、左手を渡すと、つかんだまま自身のポケットに突っ込む。

 はいているズボンは、だぼっとした感じで手が入るが。

 問題は、ポケット。

 今は機械に座っている状態で、普通ポケットにある、底がある部分を突き抜け。手に素肌の感触。

 ズボンの盛り上がりが、花蓮の股部分に向かって進んでいく。

 あわてて、引っこ抜く。


「えー。せっかく作ったのに。まあここだと目立つから。また別の所で」

 どうも、俺に触らせるために、ポケットの底を抜いたようだ。

「馬鹿なことをすると、つい物を入れて落とし物をするぞ」

「大丈夫」

 そう言うと、油断も隙もなくキスをされる。


「さっ。フードコートから、駅が見られるはずだから行こう。今日はスカートじゃないから大丈夫。行きましょ。ふふん」

 すっごく足取り軽やか。鼻歌まで歌っている。


 飲み物と、ポテト。俺は追加でバーガー。


 窓際の席に向かう。

「ここって、向こう側からだと、もろに見えるのよね。一応濃い色のフイルムは貼っているけど」

「そういえば、練習はないのか?」

「ああ。ちょっと熱も出たし。安静にしています。くみもまだ復活をしていないし」

「熱?」

 すっと額に手を当てる。


「おまえなあ」

 ちっちっちと指を横に振る。

「かれん。です」

「いや熱が」

「良いんです。これは知恵熱のような物。発酵していい女になるんです」


「発酵の美少女なら字が違うぞ」

「えっ。光る?」

「違う。薄幸の美少女。美人は幸せが薄いという意味。後はまあ、静かで儚げな印象かな」


「そうなんだ。じゃあ私は。でもいま幸せよ」

「おう良かったな」

「色々な言い回しも、当てにならないわね」


 この妙なハイテンションは、熱のせいだったのか。

 それから少しだけ回って、花蓮の家へ送っていく。

 ぶつぶつ言っていたが、家まで送っていくと言ったら、おとなしくなった。

 あっ。親へのご挨拶。クッキーとかと思っていたら、美味しそうなシュークリームを見つけて購入。

 花蓮の家は、両親と妹が居るようだ。

 2つずつとして、8つ買った。

 まあ、花蓮の希望によるところが大きい。


 家に送っていき、花蓮が玄関を開ける。

「どうぞ入って」

 と言われて、中へ入る。玄関先で一応。

「お邪魔します」

 と、声を掛ける。


 だが返事がない。

 あれ、素直になった花蓮。はめられた?

「どうしたの。上がって」

「おう」

 さすがに、女の子の家に入るのは初めて。ドキドキが止まらない。


 ずんずん、進み。奥側左の部屋を、花蓮が開ける。

「あっ。シュークリーム」

 素直に渡す。

「中で座っていて」

 そう言われて、ぽつんと置いていかれる。


 うーん。どうしてこうなった?

 ちょこんと、小さなテーブルの脇に座る。

 背中側は、ベッド。テーブルを挟んで、反対側はAVキャビネットがあり、上にはテレビ。向かって右側には勉強机。基本的には4畳半だから、そんなに大きくはない。


 そして、クローゼットとチェスト。

 うん。別に、女の子だから、ピンクのぴらぴらが氾濫をしていなくても良いけど、シンプル。


「お待たせ」

 トレイに、ジュースとシュークリーム二つ。

「あれ?」

「うん?」

 ちょこんと、脇に座る。


「どうしたの?」

「今食べるの?」

「うん。もう一つはキープで、残り一つはお母さんと妹」

「それじゃあ、悪いよ」

「良いの。お父さんはあまり甘いもの食べないし」


「ご家族は?」

「そのうち帰ってくるでしょ。はい。あーん」

「あっ美味い」

「ほんと?」

 そう言って、なぜかかじった奴をかじる。


「ほんと。おいしい」

「口の淵に、粉砂糖が」

「何処?」

「ここに」

 そう言いながら、指さすが指が食べられる。

 ヌメヌメと舌の動くのが分かる。


 ぽんと、指を離すと。

「砂糖。舐めて」

 ああ駄目だ。花蓮にはめられた。

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