第二章 チーム戦?

第11話 明智君。恋愛の進め

 俺の所へ着信。

 リーンリーンとベルが鳴る。

 まあ、画面を見れば、相手は分かる。


「何だ?」

「南田じゃねえよ。明智だ」

 うーん。まあいいか。

「ああ。それで?」

「極めて、重要な個人情報が消えてる」

「そうなのかあ。たいへんだなあ」

 努めて、棒読みでしゃべる。


「くみちゃんと、花蓮ちゃんが、僕の手元から滑り落ちて。うっくっ。これからどうすればいいんだ」

「そこまで言うなら、聞いてみるけれど、エッチなことと、自分よがりな自己紹介と見栄を張るのをやめろ。お兄さんとの約束だ。守れるか?」

 一瞬の無言。


「じゃあ何をしゃべるんだ?」

「モテたければ、聞き手に徹すれば良いらしい。何かを言えば、そうだね。とか、大変だね。とか。服のことをどっちが良いと聞かれたら、うーんそうだね。どっちも良さそうだけど、やっぱり気に入った方じゃないと後悔しそうだから、自分ではどっちがお気に? と聞けば良いらしい。質問に質問をさらっと返せ。肯定も否定もするな。すべては曖昧に。唱和せよ。すべてを曖昧に。明言、アドバイス、自己主張は敵だ」

「おっおう」


「いいな。守れるなら、だれか紹介してもらう。おまえの好みなど関係ない」

「ああまあ。うん。でも。なるべく、くみちゃんと、花蓮ちゃんレベルがいい」

「ちっ。貴様に掛ける情けは、無用なようだな。万死に値する」

「いやごめんなさい。図に乗りました」

 そう言って、プチッと通話が切れる。


「いまの、電話は、明智君かな?」

「そうだよ」

 横を歩いているのは、花蓮の方。

 意外とダメージが少なかったようだ。くみはまだ寝込んでいる。


「今ので、内容は分かっただろ。誰か紹介してくれない」

「でも。私も友達。少ないしね」

 んーという感じで考える。


 ふと繋がる。

 明智かぁ。うまく行かなくて、友達が減ると困るし。付き合いが少ない奴。誰か。

 中坊のときの、後輩かなぁ。絡むことも少ないし。くみとも距離がある子。誰がいいかなぁ? ああ。あれでいいか。あの一見美人で、鼻につく嫌みな奴。


 スマホの画面をフリックしていく。

「あっ。あった。ちょっと連絡するね」

 そう言って、近くの公園でベンチに座る。


 タップしたら、そこそこの音量で呼び出しが聞こえる。

 ビデオ通話か、そう思ったら、俺の方にもたれかかり、画角に2人が入る。


「はい。千夏です」

「あっおひさ。私だよ」

 向こうも、花蓮の顔を見た瞬間。顔が曇る。


「お久しぶり、御無沙汰しています先輩」

「3月に会ったじゃん」

「そうですね」

「元気ない? 夏休みに入ったのに?」

「最後の大会。あっという間に負けましたから。多少はその影響がありますね」

「そうなんだ。あっそれでね。あんた、今誰かと付き合ってる?」

 一瞬そう聞かれて、目が驚く。


「いっいえ。まだ中3ですし、これから受験勉強もあるので。しょんなことしているひみゃあ。ありません」

「そっかあ。ちょっと年上だけど。高2の人から、だれか紹介してって言われて。あんたのこと思いついたんだけど。かわいい子で、性格の良い子って言われたから。あまり思い浮かばなくてね」


「くっくみ先輩が、いるじゃないですか」

「ああ。くみは、彼がいるから駄目よ」

「そっ。そうなんですね。卒業してそんなに経っていないのに高校生って、凄いですね。ずっと横に見えるのは、彼氏さんですか?」

「あっうん。そうそう」

「良かった。光の加減で、地縛霊かと思っちゃいました」


「…………」


「あんたねえ。言うに事欠いて地縛霊って何よ」

「あっすいません。せっかく先輩なんかに、できた彼氏なのに。つい口が本当のことを。悪い癖だとは思っているんですが。私正直なので」

「あっそう。でっ会うの会わないの?」


「えーどうしよう。これでも結構忙しいから」

「じゃあ別にいいわ。それじゃあね」

「あっちょっと待ってください。さすがに明日は無理ですけど、明後日なら」

「じゃあ。○○駅前10時ね」

 そう言って、いきなり通話を切る。


「はぁー疲れた。ねえ頑張ったから。ぎゅっとして」

「はいはい。お疲れ」

 ぎゅっとしながら、思い出す。

「明智の予定を聞いてないぞ。いきなり決まったけど、大丈夫かな?」


 つい、ビデオ通話を押してしまう。

 寝ぼけた顔をして、顔にビーズをつけた明智が画面に映る。

「おう。明智君。顔がビーズだらけだけど、どうした?」

「ああ、この枕。ファスナーが開くんだ。それで斉藤君は嫌みのために、花蓮ちゃんとの2ショットで、電話を掛けてきたのかね」

「そんなつもりは無いが、たまたまだ。それで要件は、明後日10時に予定はあるか?」

 それを聞いて、両手を肩まで上げ。やれやれとポーズをする。


「あるわけないだろう」

「じゃあ明後日、○○駅前10時。えーと名前は?」

「明智継義」

「おまえじゃない。花蓮。後輩の名前」

「うん? 安田千夏。今中3。160cm位で、多分48kg。78のBかCくらい。胸は私が勝っている」

 そう言って、顔がにやける。

「本当なのか?」

 明智君から、必死形相で確認がくる。


「ああ本当だ」

「ありがとう。今から行くよ」

「「はっ?」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る