第6話 秘密暴露とお散歩

「上手でしたよ。最初以外」

「うんうん。良かったです先輩。最初以外」

 両隣から、妙な攻撃がくる。


 明智は、いつもの事だから無表情。


 そんなこんなで、楽しかったが、保証時間直前に電話がカウンターから入る。

「はーい。でます」

「次が待っているらしい。出るよ」

「「はーい」」


 そして、捕らえられた宇宙人状態で、会計をしにいく。


「よし。じゃあ帰ろう」

「先輩達、明日も補習ですか?」

「くる前に言っただろ。今日で終わり。やっと夏休み」

「じゃあ明日から、どこかへ集まって勉強しません」

「勉強。えっ俺も?」

 明智が、自分を指さす。

「「えっ」」


「勉強するの?」

 花蓮が聞くが、完全にため口。何があった? ああそうか。写真撮らせてって言ったのか。

「いや。しないです」

 そう言って、ぽてぽてと歩き始める。


「いや。ちょっと待てよ。帰る方向一緒だろ」

 『いや。ちょっと待て』辺りで、一瞬、うれしそうになった顔がまた沈む。

 彼女たちに手を振り、別れる。


「ああー。楽しかったけど。終わっちゃった」

「あんたねぇ。どうしたの? どう見ても。今日。おかしかったよ。発情期?」

「んー。ご報告。私先輩のものになっちゃった」

 それを聞き。すごく、素直に驚く花蓮。


「いつ、告ったの?」

「ちがう。そんな浅いものじゃ無い。花蓮も意味が分かるでしょ?」

「えっ。何のことよ」

 本当に分かっていないようだが、ガン無視で続ける。


「知らなかったけど、あの行動。花蓮も、能力を持っているんだ」

 久美にそう言われた瞬間、ビクッとして雰囲気が変わる。


「いやねえ。争う気は無いのよ。私。力を使って、先輩を振り向かそうと思ったけど。返り討ち。逆に従えられちゃった」

「あんたも。同系統なの?」

「へーそうなんだ。あっ。匂いが変わった。そうか。まだ、コントロールが出来ないのね」


「どうして、効かないの」

「この匂い。毒なの?」

「いやさすがに、あんたにそんなこと出来ないし。麻痺するくらいだけど」

「この前。使えば良かったのに」

「あんなあわてた状態で使ったら。毒になっちゃうのよ。その場にいる。全員殺すことになるし。そうなったら、死体だって困るし。あんただって、巻き添えにするし」


「ふーん。まあいいわ。花蓮ちゃん修行が足りん。と、言っても。私はこの針で刺さないと駄目だけど」

 そう言うと、指先から針が飛び出す。

 そしてすぐに、霧散する。


「あんたこそ。あのとき使ってくれれば」

「いやそれがね。すぐに後ろ手に縛られちゃって。けれど。おかげで先輩に会えたし。良かったじゃん」

「そりゃそうだけど」


「花蓮ちゃん。先輩に惹かれたでしょう。会った瞬間」

「うん。親がいたから、あれだけど、速攻で連絡先は聞いたもの。離れると冷めるけど。目の前に姿が見えると、すべてを投げ打ってでも、欲しくなっちゃう」

「先輩きっと強いのよ。それに対して、雌としての本能が働くみたいね。子供が欲しいって」

 そう言われて、納得したらしい。


「毎晩どうせ、衝動に負けて彷徨っているんでしょ。一緒に組む?」

「いや私の力。周りを巻き添えにするから。それにね。力が入ってきたときは嬉しいけれど。どうしても、死体がね」

「そういえば、先輩はどうしているんだろ」

 秘密を暴露し合った二人は、結局。いつものように仲良く帰る事にした。


 前田花蓮。

 体操の練習で怪我をして、病院へ行き。

 指定された、処置室へ移動中。

 重症患者搬送中のストレッチャーと、軽くぶつかった。だが、それが攻撃判定を取ったようだ。能力は、フェロモンというか、体から出す霧。

 くみと同じように、種類を変えることが出来る。

 もっと上手くなれば、範囲コントロールや、風に逆らい。流すことも可能になるが、今はまだ出来ない。


 浅井くみ。

 死の間際まで、なでていた、飼い猫が死んで。力を得た。

 指先から、針を刺し。

 まだ弱いが、相手を操り自殺させるくらいは出来る。

 

 そう。総の目前へ、落ちてきた奴。

 実は痴漢野郎で、感触を堪能しているときに、くみに刺された。

 そして、屋上が開いていたビルから、飛び降りた。近くで相手が死んでいないので、くみ本人は、力がなかなか得られない。


 総は人が落ちてきて、指先が自身の鼻先をかすめた。

 それが攻撃判定。

 完全に、棚ぼたである。


 そして、明智継義。

 今のところ彼は、普通の人。以上。



「せん、ぱぁ~いぃ」

「夜中に、変な声を出すな」

「いや。裏飯屋とおんなじで、定型句でしょ」

「うん? アクセントが、おかしくなかったか」

「気のせいです。それにしても格好真っ黒ですね」

「個人的趣味だ。それこそ、気にするな」


「でっでっ。先輩。当然無差別じゃ無いんでしょ。好みの女の子。レイプ後に証拠隠滅とか。それなら、先輩の好みが分かる。どきどきする」

「俺には、そんなことは出来ない。そんなことが出来る、極悪非道な人間に見えるのか?」

「いえ。見えません」

 元気はつらつに、返してくる。


「昨日ちょっと派手になったから、今日は町中の裏路地とか、公園を歩く。こそこそと」


「あれ? 今日はいないか? いつもなら、いるけどな」

「板をめくって。対象は虫ですか?」

「いや。今めくった板は、なんの関係も無い。落ちていたから、つい捲っただけ。探している雰囲気」

 いや。おかしいな。消しすぎて、平和になったのか。

 能力持った奴も、意外と増えているし。


「あっ。いた」

 そう言って走り出す先輩。

 先輩が行った方を目で追う。

 状況。1対1だが、私たちと同じ感じ。

 


「んんー。んっー」

「やかましい。おとなしくしやがれ」

 ごん。と後ろから殴る。


「大丈夫ですか?」

「あっはい。ありがとうございます」

「警察呼びます?」

「あー。いえ」

「ですよね。呼ばれると、僕も高校生なので。まずいです。こいつは、転がしておきましょう」

 そう言って、生け垣の向こうへ投げる。

 すごい力。


「それじゃあ。お気を付けて」

 ぴらぴらと手を振り、女の人を、にこやかに見送る。マスクしてるけど。

「で、どうするの?」

「んっ。何が」


 後ろ側の、生け垣を指さす。

「あの男」

「もう食った」

「へっ」

 あわてて、生け垣に近寄り、のぞき込む。


「いない。何処へ」

「だから食った。それは良いけど。どうしてミニスカートなんだ。さっき生け垣の向こうを、のぞき込んでいるときに、思わずのぞき込みそうになったぞ」

「覗くかなと思って。夜の公園。良い雰囲気。どうです?」

「嬉しいお誘いだが、警官がのぞきに来た。あの女の人。結局連絡をしたのかな。にげるぞ」


「バク転するな。目立つし。ミニ。中身が見える」

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