もう、迷いはない
【仲間】じゃない。【仲間】じゃない。【仲間】じゃない。【仲間】じゃない。
【仲間】じゃない。【仲間】じゃない。【仲間】じゃない。【仲間】じゃない。
【仲間】じゃない【仲間】じゃない【仲間】じゃない【仲間】じゃない【仲間】じゃない【仲間】じゃない【仲間】じゃない【仲間】じゃない【仲間】じゃない。
「もう、止めてくれ……」
言葉が、連呼する。
自分が吐いた呪いの言葉が、永遠の如く繰り返される。
――初めて会ったあの日の出来事を、今になって後悔する。
一番馬鹿をやった日だった。一番勇気を振り絞った日だった。
この先を一人でやっていく事を見据えながら、だが結局僕は誰かと一緒にいる事を選んでしまった。こうなる事を分かっていながら、僕は選択してしまったのだ。
彼女たちと共に過ごす時間はとても楽しくて、心のどこかで失いたくないと、そう思っていた。
「なんで、それなのに……どうして」
「どうして……」
『どうして、僕の言う通りにならない! 僕はこんなにもお前らを心配して! お前らの為に余計な回り道をする羽目になって! 元より、僕はお前らを利用する為にパーティに入ったんだぞ! この僕を! Sランクにして史上最年少の大魔術師にして【雷帝の魔術師】であるこの僕のいう事さえ聞けばいいのに何でどうしてこんなにも僕はお前らを僕は悪くない悪いのはあいつらだ僕じゃない僕じゃない僕じゃない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない悪いのはあいつ等だ僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない――――』
心が、荒む。荒んだ心が叫ぶのは、みっともない言い訳と、自己責任の転嫁だった。
あぁ、何てザマだろうか。反吐が出る。
悪いのは僕なのに、それなのに僕はいつだって僕は責任転嫁を繰り返してきた。そうやって自分を守って来た。そうすることで、楽になれたからだ。
『酒におぼれた振りをして、心配を煽ろうとしたんだろ?』
あぁ、そうかもしれない。あの、どこか無慈悲で無情な『憐みの視線』に、僕はどこか居心地の良さを感じてしまった。ハウルの優しさを一身に浴びて、いい気分になっていた。あぁ、何て可哀そうなんだろうと、悲劇の主人公気取りをしていたのだ。
『街を離れたのだって、本当はいつか見捨てられるのが怖くなったからだろ?』
あぁ、そうだよ。僕は怖くなって出て行ったんだ。
この街にいられなくなった、ただの負け犬だ。
そうして名前を『ゼロ』に変えて、心機一転頑張ろう――と、思った。
それは本当だ。実際、シーアに来て楽になったのは確かだ。
そうして彼女たちに出会って……あぁ、僕は馬鹿だ。
僕は――彼女たちの事を、好きになってしまったんだ。
失いたくないとそう思ったんだ。
「初めてだったんだ……こんな事を思うのは」
自分が守らなくてはいけない。彼女たちになるべく、危険な目に会わせたくない。
だけど、彼女たちはそれでも行く。命を賭してまで、自分の目的の為に。
だが、結局はこうだ。僕は自分の愚かしさが原因で、彼女たちと離別してしまった。
最低最悪な形で、双方ともに痛みを残していきながら。
だけど彼女は、それでも救いに行った。たった一日間だけ行動を共にした人らの為に。命を懸けてまで…………。
「僕は、馬鹿になれない……」
僕は誰かの為に命を懸ける様な馬鹿にはなれない。
心配なのは確かだけれど、それでも、行くとなるとやはり危険すぎる。
【
【
【
だって【
「…………」
過去の
僕は今、マイナスにいる。過去の自分にすら負けてしまっている、どうしようもない程の愚か者だ。
「自分のマイナスを、ゼロにして……」
僕は自分勝手だ。こんな時でさえ、自分の事ばかり考えている。
仲間か、名誉か――いや。
【
『どうする? お前は』
僕は――――。
「……こんな時、あいつらなら、どうするかな」
リーシャはきっとどちらかを選ぶなんて出来ませんと言いながら、いざという時は即断する勇気を持っている。ディジーは、時間は掛かるだろうけど、決める時は後悔しないと思う。リリムは……きっと、両方を取る道を選ぶだろうな。例えその道が無くとしても、ずっと探し続けると思う。
僕は、どうする――?
悩む、熟考する、悩んで、悩んで、のたうち回る程に悩んで、頭の中でぐるぐるとリーシャとグラム、出会って来た皆の顔が巡り回る。
そうしてそうしてそうしてそうして―――やがて、僕は一つの結論を出した。
結論を出してからの行動は早かった。
立ち上がって、荷物を全て【亜空間収納】に仕舞い込んで、僕は短剣を抜き取る。
眼前にあるのは暗く先が見えない暗黒の道。彼女たちが進んでいった道。
魔獣の気配がする事は確かで、戦闘は避けられない事は確か。
無謀だ、馬鹿だ――と、以前の僕なら言うかもしれない。
いや今も心のどこかで馬鹿だと言い続ける僕がいる。
だけど、そんなのは一端心のすみっこに追いやって、僕は深く息を吸った。
そして、吐き出すかのように一言、僕は自分に言い聞かせる様に、言った。
「僕は馬鹿だ」
散々彼女たちの事を思ったけど、やっぱり選択するのは僕だから。
多分きっと、僕は後悔するかもしれないし、選択を誤ったと嘆くかもしれない。
だけどどうしてか、晴れやかな気持ちだった。
雨が止んで、分厚い雲から一筋の光が差し込むように。
一つの蕾が、花咲くように。大丈夫、僕はもう一人じゃない。
「行こう――」
もう迷いは無い。
行こう、僕の――大切な【仲間】の元へ。
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