第六話 【ゲーム配信】懐かしのアレをやります!①
ロッテン家の四人、残念姉妹とその両親と一緒に夕食を食べた後。
蛍光灯に照らされた居間のフローリングにて、私たち子ども三人は向かい合って座っていた。
タブレットを構えたお母さんが生放送開始の合図を送ると同時、私は出来るだけお淑やかに見えそうな笑みを浮かべて話し始めた。
「夜も更けてきた頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
異世界の超絶美少女、カタリナ・フロムです。まずは突然の告知にも関わずこんなに沢山の方がくれたことに感謝を」
【こんばんわー】
【お、本当に始まった】
【ええんやで むしろ二回行動感謝や】
【レトロゲームかな? 結構楽しみ】
「さて、今回は何と特別ゲストに来ていただいております。
さ、挨拶をどうぞ」
「タニア・ロッテンよ。一応カタリナの幼馴染をやらせてもらってるわ。
よろしくね、リスナーさん?」
「お姉さまの妹、サーニャ・ロッテンです。
今日はお姉さまの魅力を伝えるために来ました。それはもう、カタリナなんかとは比べものにならないほどの最強っぷりを存分に教えてあげます」
【幼馴染キターー】
【どっちもかわええなあ】
【カタリナちゃんと同い年くらいかな】
【美人姉妹……大好物です】
【妹ちゃんの方、なんかすごい圧を感じる……】
手筈通り挨拶する二人。
結局私の口車に乗せられて配信に出ることになったのだ。流石私、やればできる子。あ、勿論ちゃんと危険性は教えたよ。
「そして今回はカメラマンを務めさせていただきます、カタリナママです。
その横にいますのがーー」
「地球人の皆さん、初めまして~。
ロッテンママです、私の二人娘をよろしくお願いしますね~」
【よ、カタリナママ待ってましたっ】
【おっとり系美人妻、、ですか。ふぅ】
【わっっっか。これならまだ……】
【おいなんかやべーやついるって(n回目)】
カメラに向かって手を振る母親二人にコメント欄が一気に沸く。
因みにロッテンママは本当に優しい人でーー私の初恋です(最低)。
「そして最後に、離れたテーブルで宴会を楽しむ父親たち二人です。
可愛い娘たちを
「おう、そら絶品よ。
俺たちにとっては娘たちの笑顔が最高のスパイスだからなあ」
「いやはや、全くもってその通りですね。ささ、どうぞどうぞ」
【オラオラ系とクール系のイケメソ……これは女性層も狙えそうですね】
【い、いや俺の足元にも及ばないな】
【やめとけ、可愛い妻と娘がいる時点で俺たちに勝てるはずがねえよ】
【唐突なNTRによって脳が破壊されました】
「うわっ、皆さんうちのお母さんを狙っていたんですか?
流石カタリナのファンの人たち、さいてーですね」
【お、これは良い煽り】
【何か、、胸がむずむずするな】
【ちょっと、ざーこ♡ざーこ♡って言ってみてよー?】
「……気持ち悪いです」
「みちゃだめよ、サーニャ。こんなの見たら穢れてしまうわ」
「はい、お姉さま。私はお姉さまだけを見ていますっ」
【……これはこれでいいな】
【ふ、悪くありませんね】
コメントを見て辛辣なことを言う残念姉妹に、わりと好意的に返すリスナーたち。
最近の人たちはこういうのがいいんだ(驚愕)。
……ってか私の人気、残念姉妹に奪われてない?
急いで軌道修正しないとっ。
「さ、さて、紹介はこれくらいにして本題に移りましょうか。
今回やっていくのは懐かしのこちらーー百人一首ですっ」
【百人、一首?? 百人一首きちゃー!!】
【よ、予想外のが来たなあ】
【確かに懐かしいっちゃあ懐かしいけど……】
【俺はてっきり64とかそういう系のレトロゲームをやるのかと思ってた】
【あー、最近流行ってますもんね! 昔の全然知らないゲームをやるの!】
【う。そ、そうだね】
【そうだね……(昔やってたなんて言えない)】
お母さんがフローリングに雑に広げられた百枚の取り札と、その周りに離れて座る私達を写していく。
そして、コメントを見えるよう私の対面に腰を下ろした。
「あ、因みにレトロゲームとかはやろうと思ってもできませんよ。
最近の娯楽機器は滅多に流れてこなくて、異様な高値で取引されますから」
「そうねえ、ここラキア村だと村長の家にテレビが一つあるくらいよ。
昔のものだったら結構あるんだけど……きっと物を大切にする精神を忘れてしまったのね」
【流者は”もの”に対する強い思いが根源……なんだっけ】
【まあ最近はそういう感情は薄れてるだろうなあ。
大量生産大量消費の時代で、壊れたら買い替えるのが当たり前になってるし】
【さっきテレビとかが見当たらなかったのはもんなあ】
【まじか、俺らからしたら考えられない生活だな】
お母さんの言葉に、どこかしんみりとした雰囲気で流れていくコメント。
あー、よくないなあ。みんなにはリリストアルトがもっと楽しい世界だって知ってほしいのに。
「それじゃ、早速始めていきましょうか。
ロッテンママさん、読み手をお願いします」
「は~い。みんな準備は良い~?」
「大丈夫よ。私、二人には負けないわ」
「はい、お姉さま。お姉さまの覇道を阻む邪魔者は私が阻んであげましょう」
「いいですね、受けて立ちますよ。
ただし今回の私には強力な助っ人がいることをお忘れなく」
「??」
頭に疑問符を浮かべる二人の前で、タブレットに向けて可愛くウィンク。
私の前には数百人の集合知がある。頼んだよ、視聴者さんっ!
【「悲報」カタリナちゃん、汚い】
【だから百人一首を選んだのかww】
【小学校の百人一首大会で一枚も取れなかった俺に任せろっ】
「それじゃあ始めます。
みちのくの~」
【めっちゃ綺麗な声】
【???】
【あー、なんだっけ聞いたことあるような……】
【「乱れそめにし 我ならなくに」 川原左大臣の一句やな】
【ま? それならさっきサーニャちゃんの方にあったぞ?】
よし来た、と早速サーニャの方に目を向けて、みたれそめにし、みたれそめにし、と探し――
「見つけましたっ」
バシリとその札をたたく。
「お、カタリナちゃん正解~。
すごいねえ、覚えてたの?」
「ええ。私の灰色の脳細胞を以てすれば簡単ですよ。
どうしたんですか? 私の邪魔するんじゃなかったんですかー?」
「くっ……絶対、おかしいですよ、これ」
「さらに出来るようになったわね、カタリナ」
【煽りおる煽るおる】
【おいこらww】
【ほぼ俺らの功績じゃねえか ……ところで正解した人は何者?】
【高校の時カルタ部だったんや 全国大会でわりと上のほうまで行った】
【何でこんなところに猛者おるんだよw】
「ふっふ……」
予想以上の助っ人登場に、にんまりと口角が上がる。
まだ二人は私の他力本願戦法に気付いていない。それに例え気付かれたとしても、今のカメラ位置を死守すれば、顔を横に向けなくていい私の方にアドバンテージがある。
さあ、私の華麗なる活躍でリスナーの心を鷲掴みにして、ついでに完全になめやがってくれている年下二人にお灸を据えてみせますかねっ。
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