第四話 【雑談】NGなしの質問コーナーです!



 勉強机の上にタブレットを置き、カメラをこちらに向ける。

 配信の待機枠には既に100人近くの人が来ていた。


 うん、順調順調。やっぱりこのガワは強いなあ、とか本物のVTuberっぽいことを考えていると、時刻は11:00に。

 小さく息を吐いて、私は向こう側の彼らに微笑みかけた。


「現実と空想の狭間よりこんにちわ。

 皆さんの美少女、カタリナ・フロムです」


【お、はじまた】

【こんにちわー】

【何かまともに始まって凄い違和感がw】

【昨日のあれは衝撃だったからなあ】

【今日はママさんとパパさんはいないの?】


「ええ、私ひとりです。今日は皆さんの質問に答える回ですからね。

 どうぞバシバシ質問してください」


【デビュー三日目にようやくか、、】

【色々ありすぎて逆に迷うなあ】

 ……

【カタリナ先生っ、スリーサイズを教えてください!】


 私の言葉に、一気にコメントの流れが速くなる。やっぱりみんな色々とため込んでいたらしい。

 その中で一番目に付いた質問を拾う。


「えー、上から129.3,129.3.129.3です。はい次」


【はえー、異世界人は丸太みたいな体型してるんやなあ】

【どこの猫型ロボット!?】

【こいつ手慣れてやがる……】

【そーいや、なんでTwitterとかやらないんだっけ? 理由とかあるの?】


「あー、それについてはごめんなさいです。

 異世界と地球と繋ぐにはいろいろと制約があって、ここのサイトしかアクセスできないんですよね。

 だから感想とかは動画のコメントに直接書いてくれると嬉しいです」


【了解、気を付けないとだね】

【相変わらず変わってるなあ……】

【今後の配信予定とかは?】


「基本的にこんな感じで不定期に配信していきたいと思ってます。

 ただ夕方はやることが多いので、昼配信が多くなるかもです」


【異世界生活もいろいろ忙しいんだなー】

【丁度休憩時間に見れるし、俺としてはありがたい】

【ま? 俺は普通に仕事中に見てるわ】

【コラボの予定とかはあるの?】


「コラボですか。一応考えてはいるんですけど、配信機材とかの関係で多分難しいんですよね。SNSがないから、なかなかコンタクトも取れませんし。

 どなたか、リリストアルト人の配信者を知りませんかね?

 ロロの国、ナキア村のカタリナ・フロムがコラボを望んでいたと伝えてください。可愛い女の子だと尚よし、です!」


 このタブレットは本当に必要最低限な機能しかなくて、配信以外に出来るのは動画編集と某大手動画投稿サイトへのアクセスのみ。コラボ配信に必要な会話アプリなどは入れられなかったのだ。

 だから誰かと一緒に配信するには、ここに来てもらう以外方法はない。……まあ多分無理なんだけども。


【ここまでネジが飛んだ配信者は他に知らないなw】

【一応リリストアルト人であることを伏せて配信している可能性が微レ存?】

【それよか隠しきれていない願望よ】

【女の子好きはマジなの?】


「ええ、大マジですよ。

 というか男なんてみんなエロガキじゃないですか。あんなん眼中に入りませんって」


 前世の学生時代をフワフワと思い出しても、何か馬鹿話をしていたような記憶しかない。正直、あいつらと結婚するのなあ……。

 今まで男に興味を惹かれなかったのにも、まさかこんな理由があったとは。


 あ、でもシルビオみたいな人もいるし、仲良くするくらいは良いかな。


【おお、なかなか辛辣やな】

【何というかこう、、、わからせたい】

【↑わかるで、どことなくメスガキ臭が漂ってるんよな】

【今は好きな人とかいないの?】


「うーん、今のところはいませんね。

 幼馴染の女の子二人は恋愛対象という感じじゃありませんし」


【くそっ、ガチ百合展開はまだ先かっ】

【あれ、というか他の友達は? まさか二人だけ……?】

【やめてくれ、その技はオレに効く】


「し、仕方ないじゃないですか。

 私はまだ見習いで、自由に動けないんですから」


 鋭いコメントに、思わず声が震えそうになる。

 私と関わりがある同年代の子は、幼馴染の二人とーー以上。

 ほんと、百合ハーレムまでの道は遠いなあ。私の異世界転生、世知辛すぎでしょ。


【??どゆこと?】

【結構親が厳しい感じ?】


「あ、いえ。私たち稀人は、穢れを浄化するっていうその役割故に穢者に襲われやすいんですよ。

 だからまだ力の弱い私は、外に出来るときは誰かと一緒じゃないといけないっていう話です」


【なるほどねえ】

【やっぱりどの世界にもモンスター的存在はいるんだなあ】

【稀人とか”けがれもの”ってのは?】


「稀人は流者の中で、私たちみたいに人と全く同じ体を持った存在のこと。

 穢者は穢れがついて凶暴化してしまった流者のことです」


【読んで字のごとくってことか】

【そういえば流者は色々なものが混じってるのが普通なんだっけ】

【まじ? 俺は勝手に動物の尻尾とかが生えてるものだと思ってたわ】


「ふ、そんな薄い本みたいな設定はありませんよ」


 と、まあこんな感じでリスナーたちの質問に答えていき、あっさりと終了時刻の12;00になった。


「さて、それじゃあこの配信もそろそろ終わりますかね。

 最後までお付き合いいただきありがとうござました」


【おつ】

【お疲れ様ー】

【のんびりできたし、結構楽しかった】

【何よりこのグラフィックよな。本当に目の前で話してる気分になるわ】


 パラパラと流れてくる嬉しいコメント。

 一応みんなの印象は良かったらしい。ただーー


「今度は動画でリリストアルトに関することを纏めて紹介したいと思います。

 多分皆さんもその方が分かりやすいですよね?」


【おっけー】

【たすかる】

【正直ありがたい。色々ごっちゃになっていたから】


 私の言葉に肯定的な言葉が続く。

 やっぱりそうだよね。世界観を説明するのって難しいなあ。


 とにかく、お母さんに融通してくれるよう頼んでみよう。


「分かりました、それじゃあ頑張ってみますね。

 では、皆さんに素敵な幻想がありますように」


【おつー】

【素敵な幻想がありますようにー】

【これも決め台詞なん?】

【↑そうよ。初配信から言ってる】

【りょ。素敵な幻想がありますようにー】


 私が適当に考えた決め台詞にも律儀に反応してくれる彼ら。

 三回目の配信はこうして好評のうちに幕を閉じた。


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