第54話 第一機動艦隊

 昭和一九年六月一一日、サイパンならびにテニアン、それにグアムが米機動部隊の艦上機による空襲にさらされた。

 さらに一五日にはサイパンの守備隊より敵が上陸を開始したとの報が入る。

 米軍の意図がはっきりすると同時に、連合艦隊司令部は「あ号作戦」を発令、第一機動艦隊はただちに抜錨、マリアナへとその舳先を向けた。



 第一機動艦隊

 第二艦隊

 第一遊撃部隊

 戦艦「大和」「武蔵」「長門」「陸奥」

 重巡「愛宕」「高雄」「摩耶」「鳥海」

 軽巡「矢矧」

 駆逐艦「雪風」「天津風」「浦風」「磯風」「浜風」「谷風」「野分」「舞風」

 ※第三艦隊から臨時編入

 「祥鳳」(零戦二七)

 「瑞鳳」(零戦二七)


 第二遊撃部隊

 戦艦「金剛」「榛名」

 重巡「熊野」「鈴谷」「最上」「三隈」「利根」「筑摩」

 軽巡「能代」

 駆逐艦「長波」「玉波」「藤波」「早波」「浜波」「沖波」「岸波」「不知火」

 ※第三艦隊から臨時編入

 「千歳」(零戦二七)

 「千代田」(零戦二七)


 第三遊撃部隊

 戦艦「山城」「扶桑」

 軽巡「阿武隈」「鬼怒」「長良」

 駆逐艦「朝雲」「山雲」「満潮」


 第三艦隊

 甲部隊

 「大鳳」(零戦二七、彗星一八、天山一二)

 「翔鶴」(零戦四五、彗星一八、天山一二)

 「瑞鶴」(零戦四五、彗星一八、天山一二)

 重巡「妙高」

 軽巡「阿賀野」

 駆逐艦「秋月」「涼月」「秋雲」「風雲」「朝霜」「早霜」「秋霜」


 乙部隊

 「赤城」(零戦三六、彗星一八、天山一二)

 「飛龍」(零戦三六、彗星九、天山一二)

 「蒼龍」(零戦三六、彗星九、天山一二)

 重巡「羽黒」

 軽巡「五十鈴」

 駆逐艦「初月」「若月」「霞」「涼風」「海風」「白露」「時雨」


 丙部隊

 「隼鷹」(零戦三六、天山一二)

 「飛鷹」(零戦三六、天山一二)

 「龍鳳」(零戦二七)

 戦艦「伊勢」「日向」(彗星四四)

 軽巡「多摩」

 駆逐艦「霜月」「冬月」「春雨」「五月雨」「初春」「若葉」「初霜」



 第一機動艦隊は空母一三隻、戦艦一〇隻、重巡一二隻、軽巡七隻、駆逐艦四〇隻からなる大艦隊だった。

 このうち水上打撃部隊の第二艦隊はその戦力を三群に分けている。

 第一遊撃部隊は第二艦隊最強部隊であり、四六センチ砲を搭載する「大和」と「武蔵」それに四一センチ砲を装備する「長門と「陸奥」の四隻の戦艦を基幹戦力としている。

 第二遊撃部隊のほうは高速艦で編成され、「金剛」と「榛名」の二隻の高速戦艦、それに六隻の重巡が配備されている。

 第三遊撃部隊は低速戦艦の「山城」と「扶桑」が主力で、軍令部と連合艦隊司令部との間で今回の戦いに参加させるかどうかを巡って喧々囂々の議論がなされた。

 そして、敗北の許されない戦いであることなどからその投入が決定された。


 第一遊撃部隊には「祥鳳」と「瑞鳳」、第二遊撃部隊には「千歳」と「千代田」が臨時編入されているが、これらは第二艦隊の頭上を守るための戦力ではなく、敵艦上機の攻撃目標を戦艦から逸らせることが目的、つまりは敵戦力を誘引する囮あるいは被害担当艦としての役割を期待されてのものだった。


 機動部隊である第三艦隊は甲部隊と乙部隊、それに丙部隊の三つに分かれている。

 甲部隊は「大鳳」ならびに二隻の「翔鶴」型空母からなり、第一機動艦隊司令長官の小沢中将は最新鋭装甲空母の「大鳳」にその将旗を掲げている。

 乙部隊は「赤城」と「飛龍」それに「蒼龍」からなる開戦以来の歴戦空母で編成され、山口中将がその指揮を執る。

 丙部隊は商船改造空母の「隼鷹」と「飛鷹」それに特務艦改造空母の「龍鳳」の三隻のほかに航空戦艦となった「伊勢」と「日向」が配備されていた。

 「伊勢」と「日向」は「隼鷹」や「飛鷹」では運用が困難な彗星を搭載、丙部隊の航空戦力の増強とともに空母の用心棒も兼ねている。

 艦上機のほうは戦闘機はすべて新型の零戦五二型で固められ、艦爆は九九艦爆から彗星に、艦攻は九七艦攻から天山へと更新されている。

 後が無い戦いであることから、それら搭乗員の中には練習航空隊の教官や教員も数多く含まれている。


 これら戦力をもって第一機動艦隊はマリアナの戦場へと急ぐ。

 もし、第一機動艦隊が敗北してマリアナを失うようなことがあれば、日本の敗勢は決定的なものになる。

 だから、この戦いにおいては自軍の損害は一切これを省みずに攻めに徹するとともに、作戦上必要と認めた場合には一部の部隊を切り捨てることもあり得た。

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