第55話 第五艦隊
「ようやくのお出ましか」
日本近海を哨戒中の友軍潜水艦より連合艦隊が出撃したとの報を受けた第五艦隊司令長官のスプルーアンス提督は、合衆国海軍が待ち望んでいた復讐の機会が訪れたことを確信する。
開戦以来、合衆国海軍は連合艦隊に対して常に辛酸を舐めさせられてきた。
米日の洋上決戦は多くの場合、その時期と戦場を決めることが出来たのは連合艦隊の側だった。
そのうえ、洋上航空戦力に関しても米側は常に数的劣勢を強いられている。
米日の戦力差が最も隔絶した昨春の第二次珊瑚海海戦では新旧空母を一度に五隻も沈められるという大敗を喫している。
戦前に整備してきた正規空母もその戦いの中ですべて沈められ、大勢の優秀な搭乗員を失った。
水上打撃艦艇の被害も甚大で、開戦以降に撃沈された戦艦や巡洋艦それに駆逐艦の数は一〇〇隻を超える。
(だが、忍耐のときは終わった)
第五艦隊に配備された空母は一五隻で、一二乃至一三隻程度を擁していると思われる連合艦隊に対してそれほど大きなアドバンテージは無いように見える。
しかし、一方で戦力の要となる艦上機の質と量は明らかに優越している。
水上打撃戦力も第二次珊瑚海海戦で深手を負った「インディアナ」の修理が終わり、さらに三三ノットの快速を誇る「アイオワ」と「ニュージャージー」の二隻の高速戦艦がこれに加わった。
巡洋艦や駆逐艦も新鋭艦で固められ、それらには最新の射撃管制システムが装備されるとともに多数の機関砲や機銃もまた増備されている。
さらに、統制射撃をはじめとした新戦術や、あるいはVT信管といった新技術が導入され、そのことで艦隊防空能力は開戦時のそれとは完全に別次元の力を持つに至っている。
その第五艦隊の母艦航空隊はサイパンやテニアン、それにグアムの日本軍航空隊との戦闘でかなりの機体を損耗した。
撃墜された機体はさほど多くは無かったが、しかし一方で被弾損傷した機体が思いのほか多かったのだ
それでも、後方に控える護衛空母部隊からの補充を受けて今ではすべての空母が定数を満たしていた。
だが、このことで護衛空母部隊のほうは保有する艦上機の数が激減したため、こちらは後方に下げざるを得なかった。
(フレッチャーやハルゼーといった名うての空母部隊指揮官がことごとく敗れたのは単に戦力が少なかったからだ。だが、今回は違う。圧倒的戦力を誇る第五艦隊がその物量で連合艦隊を正面から押し潰す!)
スプルーアンス提督は第五艦隊の戦力を脳裏に描き、連合艦隊との戦いを夢想する。
そのスプルーアンス提督は万事に慎重な人間だ。
だが、その彼をして強気にさせているのは第五艦隊が持つ圧倒的とも言える戦力の裏付けだ。
空母一五隻、戦艦六隻を基幹とする世界最強の艦隊は、迫りくる連合艦隊を迎え撃つべくその舳先を北西へと向けた。
第五艦隊
第一機動群
「イントレピッド」(F6F四八、SB2C三六、TBF一五、夜戦型F6F四)
「ヨークタウン2」(F6F四八、SB2C三六、TBF一五、夜戦型F6F四)
「カウペンス」(F6F二四、TBF九)
「モンテレー」(F6F二四、TBF九)
重巡一、軽巡二、駆逐艦一五
第二機動群
「バンカー・ヒル」(F6F四八、SB2C三六、TBF一五、夜戦型F6F四)
「レキシントン2」(F6F四八、SB2C三六、TBF一五、夜戦型F6F四)
「ラングレー」(F6F二四、TBF九)
「カボット」(F6F二四、TBF九)
重巡一、軽巡二、駆逐艦一五
第三機動群
「フランクリン」(F6F四八、SB2C三六、TBF一五、夜戦型F6F四)
「ワスプ2」(F6F四八、SB2C三六、TBF一五、夜戦型F6F四)
「バターン」(F6F二四、TBF九)
「サン・ジャシント(F6F二四、TBF九)
重巡一、軽巡二、駆逐艦一五
第四機動群
「ホーネット2」(F6F四八、SB2C三六、TBF一五、夜戦型F6F四)
「プリンストン」(F6F二四、TBF九)
「ベロー・ウッド」(F6F二四、TBF九)
重巡一、軽巡二、駆逐艦一五
第七機動群
戦艦「ニュージャージー」「アイオワ」「サウスダコタ」「インディアナ」「マサチューセッツ」「ワシントン」
重巡四、駆逐艦一六
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