第18話 第三艦隊司令部壊滅
最初のうちは順調だった。
ミッドウェー海戦で得た戦訓に鑑み、敵艦隊の早期発見に努めるべく二四機にものぼる索敵機を放った。
その甲斐あって、早い段階で米機動部隊を発見することに成功した。
しかし、時を同じくしてSBDドーントレス急降下爆撃機と思しき機体が第三艦隊甲部隊の上空に現れる。
警戒中の零戦がこれを撃退したものの、しかし甲部隊の所在が暴露されたことは疑いようが無かった。
これを受け、第三艦隊司令長官の南雲中将はただちに「飛龍」と「蒼龍」それに「隼鷹」からそれぞれ零戦六機に九九艦爆一八機、さらに「龍驤」から零戦一二機の合わせて八四機からなる第一次攻撃隊を発進させる。
さらに、そのすぐあとに「飛龍」と「蒼龍」からそれぞれ零戦三機に九七艦攻一二機、「隼鷹」から零戦三機に九七艦攻九機からなる第二次攻撃隊を同じく米機動部隊に差し向けた。
その間に「瑞鳳」と「祥鳳」を基幹とした丙部隊がガダルカナル飛行場を攻撃、さらに同部隊が四〇機ほどの空母艦上機と思しき敵機から空爆を受け、「瑞鳳」が撃破されたとの報告がもたらされている。
「瑞鳳」の被爆は残念だったが、それでも一連の戦闘が事前想定通りに推移していくことに第三艦隊司令部のその誰もが高揚感を覚えていた。
そのようななか、「飛龍」に新しく装備された電探が敵編隊と思しき反応をキャッチする。
第三艦隊司令部は知らなかったが、これらは「エンタープライズ」それに「ワスプ」から発進した攻撃隊だった。
「エンタープライズ」からはF4Fワイルドキャット戦闘機とSBDがそれぞれ一二機にTBFアベンジャー雷撃機が一五機、「ワスプ」からF4F四機にSBDが三六機、それにTBFが九機。
「エンタープライズ」のSBDが少ないのは、同艦が当日の警戒担当艦の任にあたっていたからだ。
「エンタープライズ」はこの日、二〇機あまりのSBDを索敵や哨戒任務に投じていた。
一方、「ワスプ」のF4Fが少ないのは「エンタープライズ」がこれを三六機搭載していたのに対して「ワスプ」のそれは二八機しかなかったからだ。
「エンタープライズ」と「ワスプ」が放った八八機からなる攻撃隊は航法ミスも無く第三艦隊の発見に成功する。
これらに甲部隊と乙部隊から発進した四八機の零戦が立ち向かう。
ミッドウェー海戦では低空から迫りくる敵雷撃機に戦力を集中し過ぎたために急降下爆撃機の奇襲を許してしまった。
その反省から、今回は半数が低空を守り、残る半数が中高空を担当することになっていた。
低空域を守る二四機の零戦は同じ数のTBFに対して優位に戦いを進め、その過半を撃墜、友軍艦艇にただの一本の被雷も許すことなく撃退に成功した。
一方、中高空を守る零戦は苦戦した。
一六機からなる護衛のF4Fに半数の零戦が拘束されてしまい、SBDに対する攻撃の手が緩んでしまったのだ。
いかに零戦が高性能で搭乗員が手練れ揃いだとはいっても、限られた時間のなかで四倍ものSBDをすべて阻止することは困難だ。
半数以上を撃墜され、それでも不屈の闘志で進撃を続けたSBDはついに甲部隊の上空へと到達する。
それらは二手に分かれ、それぞれ「飛龍」と「蒼龍」に急降下爆撃を敢行した。
狙われた側の「飛龍」と「蒼龍」は三四ノットの韋駄天にものをいわせ、軽快な運動性能を十全に発揮して爆弾の回避を図る。
腕利きの艦長が操艦する「飛龍」と「蒼龍」はSBDが投じた一〇〇〇ポンド爆弾を次々に躱していくが、それでも全弾回避とはならなかった。
「飛龍」は二発、「蒼龍」もまた一発を飛行甲板に食らい両艦ともに艦上機の離発着能力を喪失する。
第三艦隊にとっての最大の不幸は「飛龍」が食らった二発の爆弾のうちの一発が艦橋真横の飛行甲板に命中してしまったことだ。
一〇〇〇ポンド爆弾炸裂の衝撃はすさまじく、「飛龍」艦橋にいた南雲長官以下の第三艦隊司令部スタッフはその全員が猛烈な火炎と爆風に巻かれてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます