回るドアノブ
ラムココ/高橋ココ
(1話読切です)
俺は如月誠きさらぎ まこと。
茨○県のT大学で寮生活をしている。
寮、というよりも宿舎の方が正しいかもしれない。
ここでは、起床時間や点呼、消灯時間、門限などの制限がない。食事も出ないので、自分で確保するしかない。
現在の時間は、真夜中の午後1時。
明日提出の課題をやっていたら、もうこんな時間だ。
俺はもともと勤勉な方ではない。不真面目でもないが、明日までの課題を前日の夜にギリギリこなす、なんてことは中高生の時もザラにあった。
だが最低でも7時間は睡眠を確保したいので、そろそろ寝よう。
そう思って、寝る準備をしようとしたところへ、俺が課題をやっている間に意味もなく居座っていた友人、桐田と前嶋がやっていたトランプを中断して声を掛けてきた。
「おっ、終わったか? だったら誠も一緒にやろうぜ、トランプ」
「断る。俺は寝たいんだ。邪魔すんなよ前嶋」
即座に断るが、前嶋も引き下がらない。いや、引き下がれよ!
「そんなこと言わねえでさあ〜。あ、駄菓子もあるぞ?」
「うっ・・・」
駄菓子という言葉に誘惑されてしまう。頭を使ったあとは特に、甘いものが食べたくなる。
「トランプは3人だとなんか味気ないね。・・・・そうだ。隣の加賀って確かいつも遅くまで起きてるよね?
ちょっと誘ってみてくるよ」
止めるまでもなく、桐田は出て行ってしまった。
「・・・・・ま、そういうことだからやろうぜ!」
なにがそういうことだ、なんだ?
まあ、たまには友人と夜更かしっていうのもいいかもしれないな。
「わかったよ。じゃあ桐田待ってようぜ」
「おう!」
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
待ち初めて5分ほどが経った。
「なかなかこないな。どうしたんだ?」
「まだ話してんじゃないか? まだ待ってようぜ」
それから数分が経ったあと、急にガチャガチャとドアノブが回った。
「戻ってきたか。なんだ、怖がらせようとしてん・・・・・あ? だれもいねえじゃねえかよ。なんなんだ?」
「ん、桐田たちじゃないのか? なんだろう。ホラーだな」
桐田たちだと思ってドアを開けに行った前嶋だが、明けても誰もいなかったらしい。
てっきり俺も怖がらせるためのドッキリだと思ったんだが。
そして待つことまた5分ほど。
またドアがガチャガチャ回り始めた。
・・・・なんだ? なんか違和感を感じるんだが・・・
また前嶋が見にいくが、また外には誰もいなかった。
「・・・・あ〜隠れてんのか? そうならいい加減出てこいよ」
前嶋がそう呼びかけるが、なんの反応もない。
流石にゾッとしたのか、すばやくドアを閉め鍵をかけると、早足でこちらに戻ってきた。
それからも数分置きに一定の間隔で、ドアノブがガチャガチャと回り音をならした。
じっとその様子を観察していると、先程感じた違和感がなんだったのか気づいた。
「なあ。前嶋」
「どうした?」
「あのドアノブって外側から回された場合は、こちらの方は回らない仕組みになってるよな?」
「ああ、そうだな。それがどうかしたのか?」
それがどうかしたのかって、前嶋。まさかお前、気づいてないのかよ?
「・・・・いや、ちょっと気になってな。大丈夫だ」
「・・・そうか?」
「ああ」
聞き返してきた前嶋に重ねて平気だと伝える。
それからしばらく経つと、隣が静かなことに気づく。
見てみると前嶋が頭を垂らして寝ていた。
そのままの体勢では辛そうなので、床に寝かせても起きる気配はない。
まあそうだ。すでに1時半は過ぎている。それどころか、あともう少しで2時に差し掛かるところだ。
ドアノブのガチャガチャという音も止み、落ち着いてくると俺も眠気が襲ってきた。
そして眠気に身を任せて目を閉じて、気づいたら朝になっていた。
昨日はもう眠くて最後は桐田と加賀のことはすっかり頭から抜けてしまっていた。
大学で、昨日どうして戻ってこなかったのか桐田に聞いてみると、
「ああ昨日? ごめん。加賀の部屋に行ったらまだ起きてたから、部屋に入って一緒にゲームやっちゃって、
気づいたら朝になってた。おかげでまだ眠いよ〜・・・・」
あくびをしながら桐田はそう言った。
はあ? 俺たちが恐怖体験してる間にお前らはゲームで楽しんでたのか?
なんか癪に障ったので、ちょっとした仕返しで言い返す。
「自業自得だな。子供かよ」
「アハハ・・・辛辣だなぁ、誠は」
乾いた笑いを漏らす桐田。
結局、昨日のドアノブ事件がなんだったのかは分からずじまいだ。
ほんと、久しぶりに恐怖ってのを感じた。
外側から回されても内側は回らないはずの、ドアノブ。
ただ、ドアが壊れていたのか?
それとも・・・・・
回るドアノブ ラムココ/高橋ココ @coco-takahashi
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