第06話 解錠師シアラは眠りたい(5)
「んも~っ! わたしはシアラさんの姉弟子の娘なんですから、シアラさんが弟子に迎えるのが筋じゃないですかぁ!」
「その筋、ぜんっ……ぜん通ってないからなっ! 娘というのも確定じゃないし! それにさっき言っただろう! 俺は生き物飼わない主義だって!」
「だったらわたしも、ネズミみたいに勝手にここへ棲みつきますっ! そもそもおかあさんの遺言書に、シアラさんがわたしの面倒見てくれるってありましたから! てこでも動きませんよっ!」
「そんなこと初耳だっ! だいたいジョゼットさんが、おまえを俺に引き合わせるのがおかしいんだよっ!」
「えっ……?」
「…………」
い、いまのシアラさんの言葉……どういう意味?
シアラさんも思いっきり「しまった」って顔して、視線そらした。
わたしてっきり、おかあさんとシアラさん、仲いいものだと……。
もしかして……違うの?
おかあさんの過去……これ以上深掘りしないのが、いいのかな……。
……………………。
でも、おかあさんがわたしをシアラさんに巡り会わせたの、わたしに解錠師って仕事のすばらしさを、教えるためだと思う。
そこは不思議と……確信あるっ!
「……エルーゼ、一週間」
「はい?」
「一週間、試用期間をやる。ニ〇〇万稼がせてもらった礼は、一応しないとな。それで使いものになりそうだったら、ここで雇ってやる」
「本当ですかっ!?」
「使えなかったら、田舎に戻ってひっそり暮らすなり、指輪を換金して都会で豪遊するなりしろ」
「あ……ありがとうございますっ! 一週間ですねっ! それで必ず、シアラさんが手放したくなくなる、愛弟子になってみせますっ!」
「……フン。じゃあ俺はソファーに戻る。一日十六時間は寝ないと、体調悪くてな」
「まるでネコ科の動物ですね……。ネズミは獲らないみたいですけど」
「おまえもそこらで寝るなり、近くに宿を取るなり、好きにしろ。じゃあな」
「あ、あの……? シアラさん?」
ふて寝のようにソファーへと転がり、毛布にくるまるシアラさん。
すぐさま聞こえてくる、小さな寝息──。
「すううううぅ……」
早っ!
もう寝てるっ!
驚異の寝つきの良さ!
ええっと、わたしはどうしよ……。
ここに寝ろって言われても、そんなスペースないし、お布団もないし。
そもそも男の人と、二人っきりで寝るだなんて……。
……………………。
……あ、でも。
シアラさん、寝顔はちょっと、イケメンかも……。
顔細くて顎尖ってるし、鼻高いし、睫毛長くてきれい……。
中性的な感じの……美青年?
毛布の中で丸まってるからわかりにくいけど、背高そうだし……。
おかあさんの弟弟子ってことは、まだ二十代後半くらいかなぁ?
それくらいの年の差は、わたし全然アリ……。
……って、ないないない!
こんなものぐさで口悪くて生活力のない男、絶対ないっ!
はあ……。
きょうのところは、近くに宿取ろうっと──。
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