第006話 解錠師シアラは眠りたい(6)
「……んも~! わたしはシアラさんの姉弟子の娘なんですから、シアラさんが弟子に迎えるのが筋じゃないですかぁ!」
「その筋、ぜんっ……ぜん通ってないからなっ! 娘というのも確定じゃないし! それにさっき言っただろう! 俺は生き物飼わない主義だって!」
「だったらわたしも、ネズミみたいに勝手にここへ棲みつきますっ! そもそも、おかあさんがわたしをシアラさんの元へ向かわせたの、絶対引き合わせるためじゃないですかっ! てこでも動きませんよっ!」
「そのジョゼットさんが、おまえを俺に引き合わせるのがおかしいんだよっ!」
「えっ……?」
「……………………」
い、いまの……どういう意味?
わたしてっきり、おかあさんとシアラさん、仲いいものだと……。
もしかして……違うの?
おかあさんの過去……これ以上深掘りしないのが、いいのかな……。
うううぅ……。
でも、おかあさんがわたしをシアラさんに巡り会わせたの、わたしに解錠師って仕事のすばらしさを、教えるためだと思う。
そこは不思議と……確信あるっ!
「…………エルーゼ、一週間」
「はい?」
「一週間、試用期間をやる。ニ〇〇万稼がせてもらった礼は、一応しないとな。それで使いものになりそうだったら、ここで雇ってやる。ダメだったら、田舎でひっそり暮らすなり、指輪を換金して都会で豪遊するなりしろ」
「あ……ありがとうございますっ! 一週間ですねっ! それで必ず、シアラさんが手放したくなくなる、愛弟子になってみせますっ!」
「……フン。じゃあ俺は昼寝に戻る。一日十六時間は寝ないと、体調悪くてな」
「まるでネコ科の動物ですね……。ネズミは獲らないみたいですけど」
「おまえもそこらで寝るなり、近くに宿を取るなり、好きにしろ。じゃあな」
「あ、あの……? シアラさん?」
「すううううぅ……」
早っ!
もう寝てるっ!
驚異の寝つきの良さ!
ええっと……わたしはどうしよ……。
ここに寝ろって言われても、そんなスペースないしお布団もないし、そもそも男の人と二人っきりで寝るだなんて……。
……………………。
……あ、でも。
シアラさん、寝顔はちょっと、イケメンかも……。
顔細くて顎尖ってるし、鼻高いし、睫毛長くてきれい……。
中性的な感じの……美青年?
毛布の中で丸まってるからわかりにくいけど、けっこう背高そうだし……。
おかあさんの弟弟子ってことは、まだ二十代後半くらいかなぁ?
それくらいの年の差は、わたし全然アリ…………。
……って、ないないない!
こんなものぐさで口悪くて生活力のない男、絶対ないっ!
はあ……。
きょうのところは、近くに宿取ろ……。
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