第005話 解錠師シアラは眠りたい(5)
ピュア・ブラッド……。
えっと……純血?
いっさい混じりけのない……純血……。
おかあ……さん……っ!?
「じゃ、じゃあ……シアラさんっ! 叔母さんは、叔母さんじゃなくって……。わたしの本当の……おかあさんっ!?」
「断定は早計。確定するための情報が、少なすぎる」
「で、でも……!」
「真実を知りたいなら、これから情報を集めていけばいい。その指輪を換金すれば、有能な探偵百人は雇える。もちろん、俺への解錠代を差し引いたあとでな?」
「えっ……? あ、そうですね……。シアラさんの解錠の報酬……払わないとですね……」
だけどこれ、おかあさんの形見……。
せっかく遺してくれたものを、すぐに換金するなんて……。
でもいま、これ以外にわたしに金目のものは……。
「あっ……あの、シアラさんっ! わたしを代金分ここで働か「いらん」
あうっ!
言葉被せて拒否られたぁ……。
「フフッ。指輪を換金するのがイヤなら、こっちの小箱で払ってくれてもいいが?」
「えっ……?」
「この陶製の小箱、年代物のファザミ
「あ、は……はいっ! それでお願いしますっ!」
「商談成立。実はな、箱を見た時点で、それが俺への謝礼だってわかった。だったら中にあるのは、さらに高価な物。この箱のサイズなら宝石……って見当もな」
「はあ~。そうでしたか……。でも、箱より中身が高価なら、こう……箱を床に叩きつけて割っちゃっても、いいですよね? これ陶器だから、簡単に壊れますし」
「……ほう? そこに気が回るか」
「普通、鍵が開かないなら箱を壊そう……って、考えません? わたしここへ入るときも、ドア蹴破ったほうが早そうって思いましたし」
「なんだ……ただの脳筋か。まあ、この手の小箱の
「アンチ……チルト?」
「……専門用語だ、気にするな。で、それほどの富を遺すってことは、親子ほどの愛情、もしくは本当の親子……と、察しがつく。そこで合言葉が『おかあさん』系だと考えた」
「あはっ……。まるでシアラさんが、有能な探偵さんですね」
「知識と経験を生かし、施錠者の意図や想いを読み解く……。それが解錠師の仕事。と、言えば聞こえはいいが、要は頭でっかちな
「小さいって言われたの、もしかして気にされてました?」
「……うるさい」
解錠師……秘められた想いを紐解く職人。
なんてすばらしい職業っ!
わたし……このお仕事やってみたいっ!
きっと、おかあさんが引き合わせてくれた……天職なのよっ!
「あの……シアラさんっ! どうかわたしを弟子に「いらん」
「あうううぅ……! また被せてきたぁ!」
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