第15話 【訓練2日目】剣術基礎
次の日、私の体は今までに感じたことのない痛みに襲われた。
「うぅ……う、動けない」
「それが筋肉痛だ。まぁ、今日、1日は動けないぐらい痛いだろうか、ほら、これ飲めば、痛みが和らぐから」
エイジさんは私に、抹茶色な玉を私に飲ませた。舌に触れると苦さが伝わり、反射的に吐きたくなるが、こらえて飲み込むと。
「す、すごい………痛みが」
一瞬にして、痛みが引いていった。若干、まだ痛みはあるけど、訓練する分には
十分。
「それじゃあ、次の訓練に入るけど、その前に、アルカ。お前は今日2日、魔法禁止だ」
「え!?ま、魔法禁止!!」
「そして、教えるのは俺じゃない。出てきていいぞ!」
エイジさんが一声かけると。「はい!!」と威勢のいい声とともに、空から突然、姿を現した。
「初めまして、アルカさん。私は教皇様に使える騎士が一人、アリスです」
「…………ってこの人!?門番してた人じゃないですか!!」
「うん?そうなのか?」
「エイジさん、覚えていないんですか?」
「あんまり?まぁ、そんなことより、このアリスって子が2日間かけて、お前に剣術を教える。しっかりと、教わっておけよ。じゃあ、俺は、やることがあるから、ここでお暇させてもらう」
「ちょっと、待ってください!!」
「どうしたんだ、アルカ?」
「私、魔法使いですよ?なんで、剣術を教わらないといけないんですか?」
アルカの疑問に、俺は、たしかにと思った。でも、この訓練の目的はアルカを英雄と渡り合えるようにするのが目的だ。
その上で近接戦をある程度理解してもらう必要がある。
「それは、このアリスに聞いてくれ。じゃあ、俺は……………」
「え、ちょっと!?」
そのままエイジさんは水上都市『モルディカ』の方角へと向かった。
「それでは、さっそく訓練といきましょう。時間は限られているのですから」
「ちょっと待ってください、アリスさん」
「なんでしょうか?」
「まずは、剣術を学ぶ意図を教えてください」
「…………なるほど。あまり時間がないので簡潔に言いますと、相手は近接戦を得意とします。ですので、その間合いの取り方などを学んでいただくために剣術を教えるということですね」
「……………理解しました!!」
アリスさんの簡潔な説明。分かりやすく、一瞬で理解したアルカ。ここから、地獄の2日間が始まった。
「まずは素振り1万回!!剣とは、基礎となる型が必ず存在します。まずはそれを理解する。一回一回丁寧に少しでも、ぶれたら、私の鞭がアルカさんを襲います」
「ふぇぇーーーーー」
最初に素振り1万回。しかも、失敗したら、鞭が飛んでくる。見た目は優しそうなのに、鬼だ。
「こら!!今、腰がわずかにぶれましたね。そんな悪い子はこうですっ!!」
「ふぎゃぁぁ!?い、いたい……………」
それから5時間が経過した。
「1万回終了です。よく頑張りました。5分間の休憩ですので、しっかりと休んでください」
「たった5分!?」
もう何回鞭に叩かれたか、わからない。全身が痛いし、手なんて感覚すらない。
「……………」
そんな姿を無言に見つめるアリスは、アルカに感心していた。
この5時間という短い時間で、ほぼ型が崩れずなくなった。もともと体感もいいし、足りないとしたら、全体の筋肉だけ。
これはいわゆる天性の才能。さすが、魔法だけでなく、しっかりと剣術を学べば、さらに強く……………。
2日間ですべてを教えることは不可能でも、彼女なら……………。
「よし!次の訓練に移る!立つんだ!!」
「はいっ!!」
「次の訓練はこのカカシをひたすら、叩き込み、壊す訓練だ」
「え…………それだけですか?」
「そうだ、ただし……………このカカシは一回叩くたびに硬くなる魔法がかけられている。一発で壊せれば、その時点で今日の訓練は終了だ。それでは、初めていいぞ」
「は、はい…………」
あのカカシを一発で壊せば、終わり?そんなの楽勝じゃん。だって、一回叩くたびに硬くなるんでしょ?てことは、最初は柔らかいってこと。
「ふぅ……………」
最初の訓練で、剣の振り方、腰の使い方、呼吸の仕方は大体理解した。あとは、絶好のタイミングで振り下ろすだけ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
私は全力で剣を振り下ろした。しかし、「ぎーーーーーん」と鉄が響いていく音が聞こえてきて、手元も響いていくのが伝わり、手がしびれる。
「あわわわわ、な、なにこれ……………」
「言い忘れていたが、そのカカシは特注でな、相手の魔力を図り、最初の強度を設定してくれるんだ。だから、魔力量が多ければ多いほど、そのカカシは硬い」
「……………う、噓でしょ」
それって、もう私に対する意地悪では?
それから、私は何度もカカシに剣を振り下ろすが、壊れる気配もなく、むしろどんどん固くなっていく。
「こ、こんなのどうすればいいの……………」
すでに体力の限界、日もとっくに落ちていて、空が真っ暗に染まっている。
このままじゃ、この訓練で終わっちゃう。
カカシは一撃を与えるたび、強度を増していく。けど、カカシが決して無傷というわけじゃない。私が一撃を与えた個所にはしっかりと傷跡が残ってる。
つまり、傷なら私でもつけることはできる。なら、壊すにはどうすればいいのか?これが問題だ。
「いったいどうすれば……………いや」
そこで私はあることを思いつく。
そういえば、師匠が言ってた。硬い武装を身に着けている相手には、ただ強力な魔法を打つのではなく、同じ個所を何度も狙えと。そうすれば、その硬い武装も少しずつ破損していくと。
「そうか、そういうこと……………ふふ、わかっちゃった」
急に不敵な笑みを浮かべたアルカ。その様子を見ていたアリスは口角を上げた。
「気づいたか」
そして、深夜0時を過ぎた頃、広い草原で強烈な轟音が鳴り響く。
「や、やった……………」
真っ二つに切り裂かれたカカシはそのまま倒れ、同時にアルカも草原に身を任せる。
空は暗く、星が輝いていた。
「き、きれい………だな」
そのまま、気絶するように、アルカは眠りについた。
「……………まさか、半日でカカシを切り裂くとは」
いくら、天才でも1日はかかると思っていた。でも、アルカさんは私の予想を超えて、半日でカカシを切り裂いた。
「磨けばもっと輝く原石。なるほど、エイジさんが期待するわけです。次の日が最後、まだまだ鍛えてあげたいですが、時間もない。最後の仕上げ、きっちりと全うしましょう」
次の日、アルカがぐっすりと眠りについている中。
「起きなさい!!」
鞭の音が聞こえると、アルカは飛び跳ねながら、起きた。
「はぁ、はぇ?ここは?ってそうだ!!訓練!!!」
「今日が最後の訓練だ。しっかりと、集中して励むように」
「は、はい!!」
こうして、3日目が始まった。
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