第14話 【訓練1日目】忍耐力を鍛えよう

 1週間という短い時間。英雄どもに対抗すべく、俺とアルカは都市の外へと出向いた。


「外に出て大丈夫なんですか?」


「ああ、許可を得ているからな。それに都市内に戻りたかったら、このパスポートを見せれば、すぐに入れるから、安心しろ」


「なるほど、なら安心です」


「それじゃあ、早速、訓練を始めるんだが、世の中において、もっとも強い武器になるものは何だと思う?」


「知識と力です。知識はより考えを広め、その考え方を用いて力に適用し、攻撃する手段や方法を考える。ですから、答えは知識と力です!」


「……………なるほどな。まぁ、だいたい正解だ。それじゃあ、アルカ!英雄について、説明してみろ」


「はい。英雄というのは、超越した世界の法則を外れた力を持つ者であり、かつて、人々のために戦った者たちです。現在では複数の英雄が確認されており、特に12英傑と呼ばれる英雄がもっとも強い英雄であると、そう教わっています」


「正解だ。よく覚えているな」


「はい、こう見えても、師匠に叩き込まれましたから!!」


 アリシャはしっかりと、英雄たちのことを教えているようだ。これなら、次の話に移ってもよさそうだな。


「では、英雄たちが使っている武器の名称をこたえてみろ」


「『神器』です」


 神器、それは神に与えられた武器と伝承される兵器のことだ。だいたいの俺たちと英雄の差は神器を持っているから、いないかで決まる。


「なら、英雄の中で複数しかもっていない武器がある。それはなんだ?」


 そこで、アルカの口が閉じる。


 そうか、アリシャはまだ教えていなかったか。


「わ、わかりません」


「英雄達は基本、神器という桁外れな力を持つ武器を持って戦う。だが、神器の力をさらに引き出すために、もう一つ、武器が存在する。それが、『神装』だ」


「神装ってなんですか?」


「神器は殺傷力がある武器だ。なら、その身を守り、補正する武器も必要になってくる。そのために用意されたのが神装。12英傑の中でも選ばれた者にしか、与えられなかった神の羽衣。神器と神装を装備されれば、確実にこちらが不利になる」


「もしかしてですけど、今回、攻めてくる虐殺王バルシャは……………」


「そうだ。あいつは神器と神装を所持している。最初は神器のみだろうが、ピンチになれば、必ず、神装を使ってくる」


 神器も神装も神に与えられた敵に対する抑止力。二つとも使われたら、現状では勝ち目がない。


 だから、ここで、鍛える。


「つまり、倒す方法としては、神装を使われる前に倒すか、使われても倒せるように鍛えるしかないと」


「そういうことだ」


 ふと、アルカは回り全体を見渡した。一面に広がる雑草。周りには何もなく、よく見ると水上都市『モルディカ』が見える。


「それで、エイジさん。最初の訓練はなんですか?」


「最初の訓練、それは、タフになるために、ひたすら、自分に魔法を打ち続ける訓練だ」


「……………へぇ?」


 エイジさんが言うに、アルカには圧倒的に実戦経験が足りない以上、戦況を見極めるのは極めて困難だ。


 そこで、時間がない中、できることとして、痛みになれるという鍛え方だ。戦場において、痛みは考えを鈍らせ、状況を見る力を衰えさせる原因の一つ。


 その痛みになれるため、まずは自分に魔法を打ち続ける。


「安心しろ、威力さえ、手加減しなければ、3時間で、痛みになれるはずだ。じゃあ、さっそく始めてくれ」


「あ、はい」


 1日目の午前。


 私はひたすらに自分に魔法を打ち続けた。


 最初は、基礎魔法の【サンダーボルト】を1000回、自分の身に打ち付ける。


「【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】【サンダーボルト】!!」


 何度も、打ち付けられる魔法。ボロボロになるたびに、エイジさんが回復魔法を私にかける。


 エイジさんに魔法をかけられている。これはこれで、いいかも……………。


 ひん曲がった性格を浮き出てくる中、わたしはさらに魔法を打ち付ける。


「そろそろ慣れてきたころか、よし、次は何でもいい、応用魔法で打ち付けろ」


「は、はい!」


 魔力はまだ全然大丈夫。


 1日目・午後。


「【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】【ライトニング・サンダー】」


 次は応用魔法を数えきれないほど自分の身に打ち付けた。


 そんなことを続けていると、どんどん痛みは感じなくなり、気がつけば、無表情で魔法を唱え、自分の身に打ち付けていた。


 もはや、作業になってしまった様子を見て、エイジさんは一声かける。


「よし、そこまでだ」


 終わりの合図が出ると、私は魔法を打つのをやめた。


「やっぱり、時間がかかったな」



 まだ魔力は2割ぐらい残っている感覚がある。でもそれ以上に体全身に違和感を感じている。


 痛みを与えすぎて、体がマヒったのかな?でも、それにしては……………。


 体をつねってみるも、痛みは全く感じない。いや、それどころか、つねった感覚すらない。


「今、全身の感覚がないと思うが、1日も経てば、戻るから安心しろ。まぁ明日にはひどい筋肉痛が襲ってくると思うが…………」


「筋肉痛?」


 こうして1日目の訓練が終わった。

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