第11話 未知であふれた光景
水の都、水上都市『モルディカ』は一人の教皇を崇め、慕うことで成り立った都市。すべての決定権が教皇にあり、まるで家族のように扱うのが特徴だ。
現在の教皇はクロ=アーデ5世と呼ばれている女性で、都市に住む人たちに愛されている存在。
「さらに、この都市は300年の歴史があるが、その前期、100年は今だ、謎に包まれていると言った謎の部分が存在する。この都市が水の上を浮いているのも、いまだ謎らしい………わかった?」
「なるほど、つまり、その教皇さんがすごいってことですね!!」
「なるほど、とりあえず、この話はここまでにしよかった」
「はい!!」
水上都市『モルディカ』に無事到着して、数時間が経過した。俺は、この都市の歴史をアルカに教えつつ、情報収集兼アルカの付き添いをしているが。
アルカはこの都市にくることが初めてだから、すべてが新鮮に映るのだろう。
「今思うと、よくここまで発展したよな……」
「エイジさん!なんで、上を見ているんですか?何かあるんですか?」
「いや、ただ上を眺めただけだ。それより、気になったものでもあったか?」
「あ、はい!見てくださいよ!!」
袖引っ張りながら、とあるお店に案内される。
「ここって……雑貨店」
「ざっかてん?っというのですか?」
「そうだけど、なにが気になったんだ?」
「あ、そうです、そうです!これを見てください!」
そう言って、アルカは雑貨店に置いてるとあるものを見せてきた。
それは、初代教皇の肖像画。
「これが、どうかしたのか?」
「いえ、エイジさんから聞いた。今までの歴史を私になり考えるとですね、初代教皇の顔があるのはおかしいなと思ったんです。100年という長い歴史が残っていないのに、初代教皇の顔があるのが、不思議でありません」
よくこんなものを見つけたなと少し感心するエイジ。
アルカの言いたいことはすごくわかる。だがこの「記録に残っていない歴史」というのは、深堀すると意外とわかっていることもある。
「初代教皇の肖像画があるのは、100年という記録に残っていない歴史の中で唯一の手掛かりとして発見されたのが、初代教皇の似顔絵だったからなんだよ」
「つまり、何も記録に残っていないのに、初代教皇の素顔だけが残されていたということですか?」
「そうだ、でも、それ以外は何も見つからなかった。だから、細かく語るなら、100年という記録に残っていない歴史の中、唯一の手掛かりが初代教皇の肖像画だったが、そこからわかることはなにもなかったってことだ」
「………………これはあくまで私の考えですが、この初代教皇は頭が冴えていると思うんです。だから、普通の形で記録は残さないと思います。だって、記録を消されれば、築き上げてきた歴史がすべて忘れ去られてしまうから。ならきっと…………」
「おい、アルカ。俺たちは別に歴史を知りたいわけじゃない。それに、あまり深く考えると、目を付けられるぞ」
よくよく周りを見渡すと、一部の人たちがこちらを向いていた。
「そ、そうですね。すいません、エイジさん」
「…………まぁ、そうやって考えるのはいいことだ」
俺は慰めるように、アルカの頭を撫でた。
とはいえ、アルカの鋭さには感服した。
アルカの言うとおり、教皇というトップの座についた人間は只者ではないの確実だ。だからきっと、文字で記録するのではなく、別の方法で記録する方法を考え、実行した可能性は十分にある。
ただ、200年も前の話だから、調べるのにかなりのコストがかかる。だから、詳しく調べない、割に合わないのだ。
それに、噂では100年の歴史を知られないよう意図的に隠しているっといった噂もあるしな。
「なんか、甘い食べ物でも食べて、糖分を補給しよう」
「甘い食べ物…………楽しみです」
1日目は普通に観光。それが今日の予定だ。アルカは外の世界に無知すぎるがゆえに、珍しい反応を見せることが多い。
これから先、アルカには知らないことの連続が待っている。だから、今のうちに少しでもたくさん知ってもらおうと、そういうつもりで予定を立てているのだが。
「エイジさん!エイジさん!この、アイスクリームという食べ物がすごく甘くておいしいです!!」
「そ、そうだな」
俺が思うに、アルカは世界というより、常識を知らなさすぎる気がする。
こうして、今日1日、いろんなところを回った。おいしい食べ物を食べたり、博物館に行ったり、教会に行ったりと、とにかくたくさん。
「さすがに、疲れたな」
「エイジさん!今日はすごく楽しかったですね」
アルカが見せる微笑ましい笑顔。それは純粋で、一切濁りのない光。とても眩しくて、顔が見れない。
「エイジさん?なんで、顔をそらすんですか?」
「な、なんでもない、それより、そろそろ泊まる場所へ行くぞ」
「はい!!」
しばらく、歩き続けると、ひときわ大きく高い建物に到着する。どこを見ても、裕福そうで豪華な服装を着ている人たちばかり。
そんな周りを比べて、私たちの服装はとても場違いに見え、逆に目立ってしまっている。
「ここに泊まるんですか?」
「そうだ、ほら早くいくぞ」
「ちょっと、待ってくださいよ」
エイジさんの後ろを追いかけるアルカ。この場違いな雰囲気を気にしながら、建物中へと入っていく。
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