第五十三話 相性

 「行け」


 バレないように球体にもっと強弱をつけよう。

 レクトルは様々な大きさに一つ一つ威力を変えた球体を作り出した。

 それは勝つ為の攻撃ではなく相手を知る為の攻撃。


「さっきと違ってまぁこうもいろんなものを」


 さっきまでの攻撃はどれも同じだったけど今回は全部違うか。

 それでも回避することには変わりないけど。

 まだ知らない攻撃方法がいくつあるかもわかんないし。

 サリシアは自分に向かって来る攻撃をすべて回避するつもりでいた。

 そしてその上で近づくと。


「全部躱すつもりか!!!」


 レクトルはサリシアの回避行動に少し驚いた。

 いくらかは剣で打ち落としていくだろうと予想していた為に。


「ちっ」


 この際多少近づかれるのは良しとするか。

 この弾幕の中で近づける距離には限界がある。

 先程みたいにいずれは剣を振るう時がくる。

 その時を待てばいい。

 レクトルは間髪を入れずにどんどん打ち続けていく。

 サリシアの限界がくるまで。

 そして打ち込むこと数百以上、ある一定の距離が来た時サリシアが前に進めなくなった。


「これ以降はキツいかな」


 回避出来る限界はここまでか、これ以降はまともに食らう可能性がある。

 剣で弾いて行けばあと数歩は行けるけどそこから攻撃出来るか怪しい。

 そもそも数歩進んだとしても攻撃が当たるかわかんないギリギリの距離なんだよね。

 今の二人の距離は約三十メートルほど、サリシアが力に任せて剣を降れば余裕を持って攻撃出来る範囲であったが怪物を相手にするのであればその半分の十五メートルほどまで詰めていたかった。


「そこまでか」


 前進が止まったということは限界がここか。

 こちらに攻撃しようと思えば出来るのであろうが確実に当たるという自信がないといった所か。

 確かにこの距離なら僕の防御も間に合うだろう。

 ならこの距離で全力で行けば当たるか?

 避けれないほどに広範囲に攻撃すれば当たるだろうがそんなことをすればこちらが無防備になってしまうか。

 そこまでのリスクを負うべきか悩みどころだな。

 それにそんなことをすれば向こうも同じような攻撃をすればいい。

 デュラハン達を一気にやったように。

 レクトルはサリシアに対して攻撃を続けながら次の行動を考えていた。

 どうにかしてサリシアを疲弊させないといけなかった。

 レクトルの目的はサリシアの支配故に。


「強制するにしても勝たなければ支配できないからな」


 レクトルが相手を支配するにも条件がいる。

 なんでもかんでも自分の思い通りに支配は出来ない。

 最低限支配する相手がレクトルの支配を受け入れる必要があった。

 強制支配も出来なくはないが普通の支配と違ってある程度抵抗出来ないようにしないといけない。

 どちらにしてもレクトルが支配するには相手に勝たなければいけなかった。


(支配した奴らを使って陽動したいがそれも出来そうにないか?思った以上に削られているな)


 レクトルはここに来るまでに多くの生物たちを支配していた。

 戦いに際して数で押す必要性がある場面に遭遇したい時の為に。

 だがその多くはヴァンとトウカの二人とビーダン率いるガイカゼ公国の者たちによって抑えこまれていた。


(このままこの場で回避し続ける訳にはいかないんだけどどうしようかな)


 いつまでもこのままじゃいずれ私の方が先に限界が来る。

 躱されるか防御されるだろうけど一発くらい仕掛けないといけないかな?

 でもやるにしても仕掛け方が重要だ。

 意識を少しでも防御に回させるような一発じゃないとまた同じ状況下になりかねない。

 サリシアは今の状況を抜け出す手段を考えいた。

 だがどんな手段を取ろうとも通じる気がまるでしなかった。

 それ程にサリシアはレクトルとの相性が悪かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

剣帝聖女~聖女の取り柄は回復魔法ではなく剣で薙ぎ倒すことです。 賀天 風歩 @katrnnhuuto910801

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ