第四十四話 獣
「久しぶりに来たなサルマニアに」
いやー何年振りかね〜五年か六年かそれくらい振りか。
剣帝聖女の嬢ちゃんに会った時がサルマニアに訪れた最後だからまだ五年か?
昔は大怪我するたびに体を治しに来てたからな。
ある男はサルマニアに着いてからというものずっと怪しくらいに周りを見渡していた。
男の大きな体格と明らかに猟兵と思われる格好に周りの人間は不用意に近づこうとせずにむしろ出来うる限りの距離をとっていた。
サルマニアでは他国の兵士や騎士、そしてこの男のように猟兵も傷を治しにやってくる。
その為他の国々よりも普通に見かけるのだがそれでも皆その男から離れていた。
他の猟兵達とは一線を画す存在。
そんな感覚がしていた。
それだけなのに離れていた。
離れていた人達曰くまるで人間というよりもただの獣のような存在感だったと。
「とりあえずサルマニアを観光しながらバング王の元にでも向かうとするかね」
こっからなら被害があったラグナにむかいながら行けるし丁度いいか。
流石にちょっとは当時のことを聞きたいしな。
だけど話してくれるかこれ?
そもそも会話出来るのか?なんか避けられてねぇか俺。
男の名前はヴァン。
猟兵獣などと呼ばれ猟兵の中で最強との呼び声がある男であった。
だが最強の猟兵はここまで避けられるとは思っていなかった為かその体格に見合わず小さく丸まって歩いていた。
それが余計に避けられている原因だとも思わずに。
◆◆◆◆◆◆
「陛下いつ着くの二人は」
「わからん」
「そっか〜頑張って急いだんだけど」
仕方ないかな〜エニグマ帝国はともかくイフ崩国はここから遠いしトウカちゃんの足じゃ時間かかるし運び屋達に頼んだとしても結果は同じ。
早く着くには着くけどそれでも後三日はかかるかも。
北門でザイトから話しを聞いたサリシアはその次の日には北門を出発してサルマニアの首都に帰って来ていた。
そこでバングの元に詳しい話しを聞きに来ていた。
「聖刻の間でどんな話があったの?ザイト王子から掻い摘んだ話しは聞いたけど詳しく教えて陛下」
「そうだな、私も二人の派遣が決定した時にはいなかったからオーレリ連邦のリックル王からの話になるが…………」
サリシアはバングから当時の話を聞きながら二人がくるまでの間の時間を潰していた。
◆◆◆◆◆◆
「ここがラグナか、外は凄いことになっていたがラグナの中は被害なしか」
ヴァンは観光ついでにフラフラとサルマニアの中を見ながらラグナに到着していた。
「それにしてもやり過ぎだろうサリシアの嬢ちゃん」
少しずつ外の復興をしていたラグナだが被害の範囲が大きくまだまだ手つかずの部分が多かった。
その被害の大半がサリシアの思いっ切り振るった一発せいであったが。
「そのせいで外側に集まってきてんな魔獣共が」
魔獣共がポツポツといやがるな。
流石に生活圏が脅かされた結果だろうな。
一時的に離れていた奴らが帰って来たか。
仕方ないが狩るか。
魔獣。
水源から魔力が溢れ出してから人間だけが変質したわけではなかった。
魔力を得て新たに生まれ変わった生物たちも当然いた。
そこからさらに月日がたっていき絶滅した生物もいたが世界の変化に合わせて分岐し進化してさらに新種の生物も生まれた。
それがオーガやゴブリン達でありデュラハンもこれに該当する。
「ガギャ!!」
「ギャギャ!!」
ゴブリン共が多いな、残党か?
他の魔獣をいるし速攻で仕留めるか。
ヴァンは魔獣を狩る為自らの武器を構える。
両手に鉤爪を模様した武器を魔法で再現したのがヴァンの武器であった。
「オラ!行くぜ!」
ヴァンは一人で魔獣の群れに突っ込んでいく。
策なんてものはないただ真正面から狩る。
「ハハッ」
「グギャッ!!!」
「アギャ!!!」
目に写った魔獣からどんどん鉤爪をたてほぼすべてを敵を一撃で狩っていくヴァン。
その姿はまるで獣そのものであった。
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