第三十五話 二人に対して
「…………」
「…………」
爆破したのはこの二人組か。
体が動こない。
代わりに意識は自分でもビックリするくらいはっきりしている。
目が霞む。
そんな霞んだ目でもこの部屋一帯が焼け焦げているのがわかる。
僕以外のこの階層にいた人達は無事だろうか?
今まであった盾糸は解除してしまっているから自力で防御していないとだけどこの威力は……彼らセルフジーニアスが北門に侵入する為に使用した爆弾と同じくらいのもの。
そんなものを受けたら基本無事じゃないか。
護衛騎士であるのに守りきれずほぼ一撃で倒れてしまうなんてとんでもない失態で自分が情けないよ。
すまないが後は頼んだよサリシア。
「…………」
ラルクが意識を失う前に最後に見た光景は自分の前に立つサリシアであった。
◆◆◆◆◆◆
ドドドゴゴゴゴゴゴ
「なにこの音は?」
上層から聞こえたけど………まさか来た!!!
ラルクの死ぬ原因が!!!
サリシアは地下通路での戦闘を終え急いで他の場所に移動していた。
そんな時に聞こえたとてつもない爆発音。
それも上層から。
「次に向かうのは上か!」
サリシアは地下通路からザイトがいる後方に移動していたが後方ではなく上層に切り替えた。
◆◆◆◆◆◆
「ここまで被害が出ているなんて」
私が魔力の水源に行っている間にここまで。
すぐに回復魔法を使ってあげたいんだけど今の私だと制御が難しい。
水源の魔力を使用して回復魔法を使うとどれだけの重症者であっても治せるけど力が強過ぎて対象者の体に合わない可能性がある。
しっかり一人一人見て与える回復魔法の力を守らないと逆効果になってしまう。
いつもみたいに広範囲に回復魔法をかけようにも水源の魔力はどれだけ効力を弱めても回復魔法で治せる最低値が違いすぎるから威力が出す過ぎて今使ってしまうと二次被害になりかねない。
使えばなんでも治せる便利な回復魔法なんてこの世界にはない。
「だからこそ速攻で終わらせる」
サリシアは被害が出た上層を走り抜けていた。
爆破音があまりに大きくさらに威力も飛び抜けていたため爆心地を見つけるのに時間はかからなかった。
そこに何ごともなかったかのように立っていた男女二人組を見つけるのも倒れ伏しているラルクを見つけるのも。
「ごめんラルク遅くなった」
体にとんでもない火傷のあと。
特に両手足がヤバいかも。
それでも心臓と頭はしっかり守っている。
まだ間に合うか。
ここに階層に居る全員に回復魔法を使う前にこの目の前にいる二人をどうにかするか。
「貴方達がやったんだね。この爆発の中で明らかに無傷だし」
「………」
「………」
あれ?
二人ともなんか様子がおかしい?
目の焦点があってない?
サリシアの問いになにも反応を示さない二人組。
サリシアが来てから一歩も動かずそこにいる。
普通の意識ある人間とはなにか言い難い感触をサリシアは感じていた。
「「………我々の支配者の為に」」
◆◆◆◆◆◆
北門に襲撃がくる少し前。
少年と男女二人組が対峙していた時。
「誰ですかね」
「ふむ、こういう時に名乗る名前を持っていたほうがいいか?支配者として名前を」
「何言ってんだこのガキ?」
「支配者ですか?また大層なことをいう子供ですね。そんな格好までして」
二人組は前に現れた少年はまるで自分が王様であるかのようなきらびやかな格好をしていた。
ただ二人には王のような風格をこの少年には感じなかったのでただの子供としか思っていなかったが。
「僕と違って君たちはボロボロじゃないか」
二人はとにかくボロボロであった。
二つの国に必要以上に追いかけられ幾度も戦闘を繰り返し疲弊していた。
そんな二人の前に現れた存在。
彼は明らかなまでに臨戦態勢を取りつつ
ゆっくりと近づきながら手の平に小さな黒い球体を作り上げていた。
「いくら私らが手負いだからってそう簡単に負けねぇぞ」
「負けるとも。そもそも君たちに勝ち目なんてないさ」
「舐めやがってこのガキ」
「疲弊しているとはいえアヴィも私も子供相手に負けるほどではない」
「こいつぶっ飛ばすぞビーク」
そう言うとアヴィも相手と同じような赤い球体を手の平に浮かべた。
「あぁ来るがいいさ」
アヴィと少年は球体を互いにぶつけ合いに破裂した。
これが戦闘開始の合図となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます