第三十六話 黒いモヤ

「はぁはぁはぁ…こいつ」


 アヴィとビークの二人は少年との戦いで地面に膝をついて肩で息をしていた。

 ボロボロであった体がさらにボロボロになりながら。


「見た目に騙されてはいけないとは言うがこれほどか」


「てか見た目以前にこいつの正体リアラの怪物かよ」


「達成目的は支配ですか」


 アヴィとビークの二人は目の前に現れた少年との戦闘によって相手がいったい何者なのかを知った。

 リアラの怪物。

 まごうことなき世界の災厄だと。


「今の私達だとキツいな」


「仕方ないでしょう相手が怪物であるならば」


 怪物だと始めから知っていて尚且つ万全の状態であればまだ逃げることはできたかもしれないがこの疲弊した私達二人では荷が重い。

 怪物はしっかり怪物だな。

 二人の考えをよそに怪物は怪物で別のことを考えていた。


「しかし思った以上に上手くいかないものだ」


 二人とも予定通りの支配が出来ないか。

 疲弊した状態でここまで抵抗されてしまううと支配が上手くいかないのか。

 このまま続けとも二人を殺してしまうかもしれない。

 それでは目的達成ではない。

 すべての支配が僕の目的なのだから。

 なら無理やり支配を使っていこうか。

 あまりこのやり方は好きではないが仕方ない。

 殺してしまうよりかは幾分かマシだろう。


「意識を全部奪って強制的にいこうか」


『強制支配』


 少年の体から有り得ないほどの黒いモヤのようなものが大量に溢れてくる。

 

「なんだこれ」


「触れないほうがいいでしょうね」


 二人は少年から生まれた黒いモヤから一気に距離を取るが


「逃がすはずがないだろ。そもそもそんな状態で逃げれるはずがはない」


 少年は二人を逃さないように黒いモヤを二人めがけて動かす。

 モヤのその速度は二人の想像を遥かに超えていた。


「なんつうスピードで」


 黒いモヤは想像以上のスピードで二人に追いつき覆いかぶさる。

 二人を食らいつくすかのように。

 自分の好きなやり方で二人を支配はできなかったが少年は自分の力に笑っていた。


◆◆◆◆◆◆


「………」


「………」


「なにこれ!?」


 なんで二人ともこんな状態なの!!??

 この場所を襲った敵だよね。

 人としての意識なさそうだしどうなってんのこれ。

 サリシアは二人と打ち合っていた。

 この二人がこの北門の上層をこんな状態にしたのだろうとそして自分の敵であろうとも考えて。

 だが実際は目の前にいる二人の様子がおかしい。

 サリシアはなにか違和感のようなものを感じ取っていた。

 そして二人と打ち合い始めてそれが確信に近いものへと変わっていた。


「なんか操られてる?動きもどこかぎこちないし」


 例えどんな状態であろうとも取り敢えずは無力化する。

 まずはそこから。

 二人の様子がおかしいけどお構いなしに斬る。

 サリシアはどこかぎこちない二人に対して斬ることにした。

 魔力の水源から帰って来た今のサリシアは本来自身が持っているの魔力と異なり純度百パーセント天然の魔力を所持している。

 そんな状態であるため基本的には誰も相手にならない。

 サリシアは二人めがけてて最速の剣で横になぎ倒そうとした。

 だがその攻撃はサリシアも予想できなかったものに阻まれていた。


「っっっうっそー!!なにそれ?」

 

 サリシアの攻撃はよくわからない黒いモヤのようなものに止められていた。

 なにか近ずいてはいけない感触を感じ取ってすかさずその場から離れたサリシア。

 黒いモヤはサリシアの攻撃を防ぐと二人の体に巻きつきゆっくりと体内へと帰っていった。


「なんか巻きついているし体内へと入っていったしどう考えてもあれが原因っぽいよね」


 何あれ?見たことも聞いたこともないんだけどあんなの。

 なにか新種の魔法?それにしたって嫌な感触を感じたんだけど。

 普通の魔法にそんな感触はしないはずだし水源からの魔力でも体に合わなくて気持ち悪くなるって感じだけどあれは触れたらダメそう。

 最速で剣を振り抜いたのに防がれたし、もしあれ以上の速度で剣を振り抜けたとしても防がれそうかな。

 もっと威力重視でいってみよう。

 サリシアはなりふりかまわず剣を叩き込むことにした。

 これも効かなかったら今度は削ぎ落とす。

 まだまだやり方はある。

 サリシアは自身の考えをまとめながら再度二人に対して剣を構えなおした。

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