第三十四話 もう二人

「ビーダンもう武器をおろしても良さそうだぞ」


「そのようだな」


「お前らなにか知ってんな」


 北門にて突如として発生した力の奔流。

 普通であればあんなに冷静でいられるはずがない。


「この異常な魔力は……まさかとは思いますが水源に存在する濁っていない純度百パーセントの魔力ですか?」


 突如膨大な力を感じ狼狽していたがゲムは冷静に力の正体について分析を開始した。

 その結果自分たちが狙っている魔力の水源の力ではないかと当たりをつけていた。


「いや何言ってんだゲム?確かにここにあるしなんなら私達が狙っていたが普通は使っちゃだめなんじゃなかったか。とんでもないことそれこそリアラの怪物とかが現れたりでもしないとさ」


 ザイトはフユイの言葉に思わず眉が動いてしまった。


「いえ、リアラの怪物でしたら現れた可能性があれば使用しても良かったはずです。確認中だと言って手遅れになった結果今までいくつもの被害が出ていましたから。そして彼らの反応的に間違いなさそうですしね」


 ゲムはザイト達の様子を伺うながらも思い至ったことを素直に口に出していく。


「サルマニアに怪物がいんのかよ」


「まだ可能性の段階だ。だがあんなことが出来るのは怪物くらいだと思われるからな」


 フユイの言葉に律儀に返答するザイト。


「なるほどラグナがゴブリンの大群や複数のデュラハンに襲われた話ですか。確かに今だ原因不明なのでリアラの怪物の可能性が高いですね」


 ラグナで起きたことをサルマニアは隠してはいない。

 まだかもしれない段階だがそれでも状況的にはあり得てもおかしくない話な為むしろ大々的に公表していた。

 この世界には大群を一気に操るすべなどはない、ゆえに怪物の仕業ではないかという疑いが各所でかかっていた。


「そういやあったそんな話。ここに来る途中であの二人に聞いたんだっけ。ラグナが大群に襲われたとかで、でも剣帝聖女が解決してなかったか?全部ぶっ飛ばしたとか聞いたぞ」


 誰が一番初めに魔力の水源にたどり着くかで話いる時にあの二人からサルマニアの現状を聞いて………そういや二人ともどこにいるんだ? 

 手を組んだ連合と連邦に負けたって連絡は聞いたけど死んだとか捕まったとかは聞かなかったからそのまま南下してきて予定通り北門にもちょっかい出すもんだと思ってたんだが……

 フユイがそうやって話を聞いた当時のことを思い出していた時、


 


 ドドドゴゴゴゴゴゴ


 そこに突然の轟音が響いた。


「なんだこの音は?」


「上か!」


 だがこれほどに響くほどの音は!


「うん?この爆破音と規模は私が門を破壊する為に調合した爆薬ではないか」


「なんでお前の爆薬を使用した爆破音が私達の上から聞こえるんだよ。今回の突入メンバーにしか渡してねぇじゃんか」


 フユイの言葉にゲムは自分が調合しその爆薬を渡した当時を思い出す。


「そうだな。持っているのは正面担当の三人、地下通路担当の二人、私達後方入口メンバーの三人、そして右翼を担当するはずの予定だった二人だ。……………あぁなるほどこれは右翼の二人か、なら納得だ」


 渡したのは今回の参加メンバー九人。

 それに対して突入したメンバーは七人。

 遅れて来てた右翼担当の二人ならまだ使ってない。

 だからこそゲムは右翼の二人が自分が調合した爆薬を上の階層で使用したのだろうと考えていた。


「連絡が取れなかった二人が来てんのか!!でもなんで上から聞こえたんだ。右翼にある門の爆破用じゃないのか?」


「そうですね、なぜでしょう?そこは私にもわかりませんが、ただ向こうは大変そうだ」


 ゲムはひとしきり周りを確認しながらつぶやく。



「おいザイト!盾糸が消えていっているぞ!!!」


「これは!!」


 盾糸がいきなり消えていくだと!

 私を守っていた盾糸だけじゃない。

 全部の盾糸が消えだしている。

 ザイトはいきなり消えだした自分の盾糸に違和感を覚え周囲を見渡していた。

 まだ戦闘が終わっていないのに消えるなどラルクの魔力が切れたかもしくは、


「ラルク自身の身になにか起きたか」


 私の直感時にラルクが死んでしまうほどのなにかが起きる気はしていたがそれがいま来たか。

 マズイな!爆発音は上から聞こえたがこんなタイミングよくラルクの盾糸が消えるなど、セルフジーニアスの二人がラルクの下に行ってしまったとしか思えんな。


◆◆◆◆◆◆


北門 上層


「はぁはぁ………いきなりこちらを強襲してくるなんて………はぁはぁ………危ないじゃないか」


 嫌な予感はずっとしていたしザイト王子が僕が死ぬと直感的に感じていたお陰で何とか回避できたな。

 だが北門全域に敷いた盾糸が消えてしまったか。

 ラルクがいた上層はいきなりの襲撃によってあちこちが崩壊していた。

 馬鹿みたいな威力の爆弾が連鎖していきこの階層を吹き飛ばし多くの煙が立ち込める。

 そんな中には強襲した二人だと思われる影が見えていた。


「君たちは誰なんだい?」


 ラルクはいきなり強襲してきた誰かに語りかけた。

 セルフジーニアスだとしてもなぜ自分を狙ったのか?

 だが返答として返って来たのはあまりにも多くの魔力を含んだ爆弾であった。

 

「そんな返答は望んでいないんだけど」


 ドドドゴゴゴゴゴゴ


 ラルクがいた部屋は返答として返ってきた多く爆弾によってとてつもない爆発音と共に一瞬にして消し飛んだ。

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