第五話

 パーティーの翌朝、僕はいつもどおり素振りを1000回してからシャワーを浴びて朝食を取った。そして、いつのまにか用意されていた新しいシャツを着ると侍女を母上のもとに前触れとして行かせた。母上から了承の言葉を頂くと同時に、僕は母上の部屋へ向かった。母上の部屋は同じ離宮の中にあるから行き来がしやすい。


 僕は、母上の扉をノックして、入室許可を願いでた。

「レオ?入ってきなさい」

中に入った瞬間、僕は母上に抱きついた。普段はこんなことをしないが今日はどうしてもしたい気分だった。

「レオ、お行儀が悪いわよ」

貴族としてはあるまじき行為なので母上は少し叱ったが、そこまで怒ってはいないようで安心した。

「ごめんなさい、母上」

「気にしないわ。それよりレオ、パーティーはどうだったのかしら?」

「パーティーはすごく疲れました。数々の貴族やその令嬢達が僕に対してダンスしろ婚約者になってくれとかで面倒でした。僕もう参加したくないです」

「そう、レオでもね、パーティーは避けられないわ。ただ、レオは王族だから王家主催のだけ出ればいいの安心して。貴族主催のは基本的に断って大丈夫だわ。それを考えると場数は少し減るのよ」

「それでも嫌です。母上も一緒に出てください」

「それはダメよ。私は王太后で、もう引退している立場なの。レオ、私がしゃしゃり出てくるとレオの評判も落ちるわ。ただでさえ王家にいい感情を持っていない貴族も多い以上レオにこれ以上敵は増やしたくないの」

「わかりました、母上。我慢します」

「良い子ね、レオ」


 そして、僕の存在の公表と婚約発表から一週間がたった。遂に、立太子の儀が始まった。僕は、正装を侍女たちに無理くり着せられると、豪華な馬車に乗せられて、神殿に行って神様にお祈りした。ここで王太子となる誓いをするらしい。


「私、レオナルド・リンガリア・フォン・ローザム、この名に誓い、これより、王太子としてリンガリア王国の民を愛し、慈しみ、立派に統治する事を誓います」

そう定例の決まった言葉で宣言をした。そのしゅんかん、突然銅像が光り、神様の声が急に聞こえて来た。

「わが愛子よそなたに誓い受けた。そなたに魔法神、技術神、生命神、商業神、創造神からの加護をやろう」

「ありがたき幸せ」


 どうやら、僕は何柱かの神様から加護をいただいたらしい。まあ貰うのはありがたいことだし、取り敢えずお礼をしておいた。でも、頭の中は混乱に包まれていた。


 そして、神様から加護の証としてそれぞれの紋章が入ったアンクレットを貰った。それが僕に手に入ってきた瞬間、僕の手はアンクレットを吸収した。どうやらこのアンクレットは体と一体化できるらしい。


 光りが収まり、周りが見えるようになると、司教が神のお加護をお貰いになったのですねと頭を垂れていた。そして僕は豪華な馬車に乗って王宮に帰った。それからほんの少しの休憩時間ののち、王宮のバルコニーから姿を現して僕が神の加護持ちだと兄上が公表した。そのため、国民からの拍手が相次いだ。神の加護持ちの希少さは有名だし、兄上は国民からの支持は厚くなるだろうとご機嫌な様子だった。


立太子の儀から一週間経った。僕は、突然、義姉上のお茶会に呼ばれた。流れのまま後宮の中に入ると近衛騎士にすぐに、義姉上の元へ案内された。そこにはルイーズ嬢と義姉上が座っていた。義姉上に促されて、僕も座った。

「王妃殿下、お久しゅうございます。今日は何故、私をお呼びになったのでしょうか?」

「堅苦しいのはいりません。ここはプライベートですから。今日、レオナルド殿を呼んだのは質問があるからです。レオナルド殿、なんでルイーズ嬢と会わないのですか?」

「もう少しで学院の入学試験です。僕は試験勉強をするべきですし、兄上から押し付けられている執務もあります。それにルイーズ嬢も学生ですから勉強に集中するべきです」

「ある程度はし正論ですが、誰もがレオナルド殿のように考えません。それにオリバーのやらかしのせいで、ルイーズ嬢とレオナルド殿が会わなければ不仲が疑われるので会ってください。元をいえばオリバーが悪いのですが。オリバーのこと本当にすみませんね。レオナルド殿、ルイーズ嬢に多大なる迷惑をかけてしまって......」

その後、オリバーの事を思い出したのか、ストレスか、義姉上は体調が悪くなったようだ。


「義姉上は別に悪くありません」

「王妃様は悪くありません」

ルイーズ嬢も僕と同じ意見だったようだ。


「いいえ、私が教育を間違えたから」

「シャル様お下がりを」

義姉上があまりにも自分を責めているのを見かねたのか、義姉上の侍女が義姉上に対して、帰るのを勧めてきた。

「私が開いたのだから私がいなければ」

と最初は意地を張っていたが、体調が相当悪化したのか途中で諦めて、義姉上は帰って言った。


 僕はこの後の予定を考えた。そして数時間なら開けても大丈夫だと気づいたので外に連れ出すことにした。さっき交流を深めろと言われたばかりだしちょうど良いと思った。

「ルイーズ嬢この後予定はありますか?」

「いいえ何もありません」

「そうですかでは一緒に城下町に出ませんか?」

「しかし護衛は」

「今すぐ手配させましょう。そしたら30分後ぐらいには用意もでき、外出も大丈夫でしょう」


 そう言って僕は侍女を呼ぶと近衛に伝言を頼ませた。

伝言を渡してから十分ぐらい後に、近衛から用意ができたと伝えられた。そして変装した近衛騎士などに警固されながら、近衛用の入り口から街に出た。王太子とその婚約者の外出なだけあって、近くの他にも少し離れたところにも護衛は配置されていた。





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