第二話


 僕は離宮に戻ってきていた。ミカに怒られると心配になり、何度か手が震えたが、遂に執務室のドアを開けた。そしたら、待ち望んでいたようにミカがやってきた。そして僕に話しかけてきた。


「殿下、遅かったですね。陛下とはどんなお話をなされたのでしょうか?」

僕はあまり怒っていないようだと少しほっとした。しかし、次の瞬間その気持ちは消えた。

「殿下、陛下とのお話の帰り、近衛騎士団に寄っていたでしょう。今日はたくさん執務が残っています。きちんとやることを終わらせたら魔法は剣の鍛錬などやりたい事をやってもいいですが、終わらせていない限りはだめです」


 ミカは僕が遊んできた事をわかっているようだった。そして普通に怒っているようだった。いつもミカには隠し事できなくて全てバレてしまう。ミカは完全に僕の保護者だ。


 僕はミカの発言を聞いて口を尖らせた。そしたら少しミカは優しくなる事が多かった。

「殿下、そんな事をしても駄目なものは駄目です。執務を行いますよ。その前に陛下とのお話を聞かせてください」

ミカに今回ばかりは効かなかったようだ。もうこうなったら早く終わらせるしか執務地獄から逃げる方法は無かった。そして、ミカに兄上から言われたことを説明した。ミカに隠す理由はないし、これは僕の侍従に当たるミカにも関わる事だから隠すなんて考えは無かった。


「兄上は僕にルイーズ嬢と婚約をして王太子になれと言ってきた」

ミカはそれに何にも感じていないようだった。普通にただ無表情だった。

「そうですか。王太子任命おめでとうございます」

そして僕は剣の稽古でかいた汗を流しにお風呂に入った。その後は、ミカに監視されて2時間休憩もできずにひたすら執務をやらさせられた。


 執務がちょうど終わったぐらいに夕食の時間が来た。いつも通り侍女が僕を呼びに来た。ただ、普段と違ったのは、普段は離宮で母上と一緒に食べていたが今日から兄上達と一緒に食べるように言われたのだ。そして母上も兄上達と食べることになった。僕は、あまりにも面倒な風に物事が変わっていくため、行く途中に何度もため息をした。


 既に生活が変わり始めているのに、これで存在の公表や実際に王太子として発表されたら更に日常が変わるのだろうと思うと憂鬱で仕方がなかった。


 そして、ずっとこれからの生活の変化について考えているといつの間にか、食事場所についた。食事場所には兄上夫妻が先に来ていた。そして、兄上の側妃と姪達はいなかった。僕は兄上達と半年に一回しか夕食を一緒にとったことなかったので、久しぶりにとることになってとても緊張していた。着いたらすぐに僕は兄上と義姉上に挨拶した。


「オリバーのこと迷惑かけてごめんなさいね」

義姉上が急に謝ってきたため、僕は少し慌ててしまった。僕の持論では別に義姉上は何も悪いことはしていなかった。僕的に悪い事をしたのはオリバーだけだった。それに、義姉上は前に会った時よりやつれて見えた。


「迷惑をかけられたことには賛同しますけれど義姉上が謝ることではなくてもう15歳になって成人しているオリバーが悪いので義姉上が気を病むことはないと思います。なので謝られる必要はありません」

僕はそう言ったが、義姉上は納得されていない様子だった。


「しかし……」

義姉上はさらに何か言おうとされていた様子だったが、兄上が止めた。

「レオの言う通りだ。シャルが気に止む必要はない。オリバーの馬鹿が恋に盲目になっただけだ」


 兄上がこの言葉を言い終わった直後に母上がやっとお越しになった。僕は母上やっと来たことを嬉しく思っていたが兄上や義姉上はなぜか緊張感を少し持っていた。僕には兄上夫妻が緊張感を持っている理由が全く理解できなかった。


 そのまま、母上は僕の隣に着席した。そして夕食が運ばれてきた。母上は少しお怒りの様子だった。僕にはその理由は予測できなかった。お怒りの様子だといえど、母上がわざとその雰囲気を出していることは明らかだったし、表情管理などももちろん完璧でなんでなどは読み取れなかった。何故だろうかと考えていたら母上が口を開いた。


「リカルド、シャルロットなぜ私の可愛いレオを自由にさせてあげないの?レオがいくら優秀でも明後日から王太子教育なんて可哀想よ。レオならすぐ終わらせられるだろうしもっと自由時間をあげなさい」

「しかし、母上、誰かがオリバーが抜けた穴を埋めなければならないのです。それに一番相応しい立場だったのがレオなのです。一日も早く埋めるためには少しでも早く王太子教育を終える必要があります」

母上はそんなの気にしていない様子だった。そして、その後はただ黙々と食事を食べた。食事を食べ終わった後、僕と母上は和やかに話していたが、兄上達は怒られただけでなく、それ以外の理由でとても緊張している様子なのでなぜかと聞いてみた。

「ここでは話したくはない明日、執務室に来たら話そう」

「じゃあ明日執務室に行きます」

そして、質問には答えてもらえないまま、解散した。


 夕食の後、僕と母上は一緒に離宮へ帰った。そして僕は部屋で母上から新しく買ってもらった本を読んでから、侍女に促されて寝た。本当はもう少し読み進めたかったが、怒られたく無かったから素直に指示に従っていた。でも一番の理由は夜抜け出すために、休憩をしておこうという考えだった。


 そして、三時間後、王宮で働く人々が寝静まった時間を見計らって僕は起きた。まず、僕は自分で密かに作った特別性の防具と剣を装着した。そして、誰かが僕の様子を見にきてもいない事がバレないように幻影を作った。更に、バレづらくするために幻影にパジャマを着せて、寝ているように見せて誰か入って来ても大丈夫なように対策した。今まではこんな時間に様子を見に来る人なんて確実にいなかったが、立場が変わった以上何があるかわからなかったし、居なくなったら余計大騒ぎになる事は簡単に予測できた。


 そして、裏工作を全て終わらせると転移魔法で魔の森に飛んだ。それからはいつも通り、魔物を剣と魔法で倒した。そしたら赤いドラゴンが出てきた。一瞬怯みかけたが、僕は今までも強い魔物を倒した事があるしと思い、自分自身で自分を鼓舞をした。


 結果から言うと、僕はドラゴンを瞬殺した。そのまま、ドラゴンが出てきた洞窟の中に入ってお宝を全てアイテムボックスに入れた。その後、この辺りには魔物がいないことを確認したので召喚魔法を行使した。魔法陣に二分の一ほどの魔力を入れるとそれ以上魔力を吸収しなくなった。


 魔力を吸収しなくなってしばらくすると召喚魔法が発動した。魔法陣が大きく光った後、小さい銀色の狼と金色の龍が出てきた。なんの魔物か調べるため。僕は出てきた狼と龍を鑑定をした。彼らは伝説の神獣であるフェンリルと神龍王だった。


 彼らは僕に襲い掛かってきたが僕が撃退すると、すぐに僕のことを主だと認めてくれた。

「お主とても強いな。気に入った。契約を受け入れよう。これからよろしく」

僕は急に声が聞こえたため、驚いたが、フェンリルの声だったようだ。僕はフェンリルが喋れるなどと知らなかったため、一瞬誰か周りにいるのかと警戒していたが、誰もいなかったため、警戒を解除した。

「そうそう警戒するな。我ら神獣は話せる故な。さっきの声は我だ」


 結局警戒の価値はなく、フェンリルが話す事はまあ神獣だしと納得できた。


 そしたら神龍王も話しかけてきた。

「ご主人様、これからよろしく。僕の名前をつけて」

僕は悩んだすでにフェンリルに対してはフィル、神龍王に関してはシンに決めた。彼らは気に入った事を念話で伝えてくれた。神龍王が僕達のような特別なものはテイムされた場合、主人と念話を使って会話できると驚いている僕に対して教えてくれた。そして、僕はいい名前をつけられて満足だった。


 その後、一回送還してみてから、僕は彼らを召喚する実験をして成功した。そのまま、僕は命令するまで二人には自分の巣での待機を命じて僕は城に転移で戻った。


 僕は召喚魔法が成功して、新たな冒険仲間ができたことがとても嬉しかった。そして興奮する気持ちを隠して生活魔法クリーンで体をキレイにして再び着替えた。そのまま、僕は幻影を消して再び寝た。


 朝起きたら、密かに日課のトレーニングをして、戻ってきたごろには丁度周りの人たちも起き始めていたため、素直に自室でゆっくりしていた。


 次の日僕は兄上の執務室に昨日の約束の話を聞きに言った。



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