2話 井戸

 幼少期の頃。

 幼稚園も夏休みという事もあり、長期休みを家の庭で遊んで過ごしていました。

 サッカーボールを蹴り壁当てをして飽きたら昆虫採集なんかを。

 その時絶対視界の端々に映る物がありまして。

 自宅と壁に挟まれた裏庭へと続く通路、その通路の端に積まれた岩の山、岩山から突き出す長いパイプ。

 それを見る度に思うのです。

 あそこには一体何があるのだろうか? 何の為にパイプが刺さっているのだろうか? と。

 今日も今日とて庭で遊んでいるといつものように見える岩山にパイプ。

 少しすると、家の中から母親が二足の靴を片手に持ち、出てきたのです。

 いつも気になっていた事を今日尋ねてみよう! と思い、小走りで近づき。

「ママ、あの岩の中ってなにがあるの?」

 と、指を差し。

「あそこ? あそこには井戸があるの」

「じゃ、何でパイプが刺さってるの?」

「それはね、よ」

 それだけを述べると母親はニッコリと笑顔向け、自宅の中へと消えていきました。

 井戸の中に一体何が住み着いているというのだろうか。

 それとも、家族の知らない秘密を母親は抱ええているというのだろうか。

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