〈43〉勝ち筋
【
ボクの妹――――師走花子の固有能力。
その力は、空中に最大一億丁のライフル銃を召喚し、それらを自由自在に操る力。
もう一度言う、一億丁だ。
すなわち、一丁のライフル銃で人間一人を殺せば、単純計算するも一億人の人間を殺せる力――という訳だ。
一億人――――小国ならば、人がいなくなる。
当然、連射も可能。
一丁につき、最大連射回数は決まっているそうだが、銃弾は時間が経つことで自動的に溜まるシステムとなっているらしい。
つまり、弾切れなく、相手がいなくなるまで撃ち放題というわけだ。
一丁だけで、一人といわず、何万人も殺害できる。
小国どころか、大国すらも滅ぼせる力。
それがボクの妹、師走花子こと――スーの固有能力である。
な? この能力を聞いてしまったら、ボクの【
それが、ボクとスーの、現在の差である。
シュミレーション戦闘システムという、最高峰のAIが算出した、答えなのだ。
だけどボクは今、そのAIの答えを、覆すためにここに来たのだ。
ボクとナデシコは、蛇の【原種】ことクイーン・スネークと向かい合う。
シャシャシャと、蛇っぽく、クイーン・スネークは笑った。
「ようやく……真打ち登場って訳ねぇ。さっきの爆発が、あんたの能力ってことで良いのかしら?」
「……好きに思ってくれて構わない。そこを読み取り、思考するのが戦闘だろう?」
「シャシャシャ! 確かに」
戦闘に勝つためには情報が必要だ。
「ナデシコ……キング・マウスは、高速移動と【
「うん、あるみたい。紫色の毒の液体に身体を変化させる力と、【
「脱皮?」
「うん、脱皮。その様子を見るに、ダメージを受けた身体を捨てて、新しい身体を作る……って感じなのかも……。何にせよ、巨大な盾で押し潰す程度では、彼女は倒せないみたい」
「なるほど……」
再生能力か……それも、ハイレベルな……厄介だな。
……とまぁ、情報収集はひとまずここまでにしておいて……。
「お前……その左足の大怪我、大丈夫なのか?」
「え? あ、うん、大丈夫。銀盾ちゃんの治癒能力があれば、数分で完治できると思う」
「数分?」
ドロドロに熔けてなくなってるその左足が?
すごいな。
まぁ、治るのならば良しとしよう。
「ナデシコ、ボクは一回、その【
「了解です!」
ボクはすかさず動き出した。
クイーン・スネーク目掛けて、急接近を試みる。
「シャシャシャッ! 一度破壊した程度で油断しないことね! このライフル銃たちは、壊れても数秒で復活するのよ!!」
「…………知ってるよ」
当然知っている。
なぜならその能力は、ボクの妹の固有能力なのだから。
「死になさい! 【
クイーン・スネークは、自らの背後に百丁ほどのライフル銃を召喚する。
そして、それらで一斉射撃を開始。
……舐められたものだ。
たったの百丁? その程度の攻撃なら、容易く対処が可能だ。
「【
今発動した能力は、名前の通り念動力を操る力である。
という訳で、百丁ほどのライフル銃が放った銃弾たちが、ボクの身体に触れようとしたその瞬間、念動力を使用し、銃弾の動きをピタッと停止させる。
百の弾丸が、空中で動きを止めた形だ。
その、明らかに物理法則を無視した光景を前に、「シャ?」と、目を丸くするクイーン・スネーク。
ボクからしてみれば当然なんだよ。なぜなら――――
物理法則を無視するのが、念動力というものなのだから。
その念動力で、停止させていた弾丸を全て地面へと叩きつける。
更に――――
「ボク程度の念動力でも、この世に存在するほぼ全ての物に対して干渉することができる。例えば――【
「シャ? 向き? っ!?」
ボクは念動力を使用し、宙に浮かぶ百丁のライフル銃すべてを、クイーン・スネークへと向ける。
そして、そのすべての引き金を念動力を使用し、ひく。
「シャギャアァアアァアーーッ!!」
数多の銃声が鳴り響くと共に、クイーン・スネークの身体が蜂の巣になった。
普通ならば即死だが……さて……。
暫く銃撃を続けた後、弾切れなのだろう、銃声が止まった。
すると、蜂の巣になったクイーン・スネークの身体から、めりめりっと音が聞こえはじめた。
そして、脱皮のように、健康体なクイーン・スネークが、蜂の巣状の身体から這うように出てきた。
なるほど……これが、【
まさに不死と言っても過言ではないのかもしれない。
となると……攻略法は……。
一、脱皮しても意味のない状態を作りだすこと。
二、脱皮できない状況に相手を追い込むこと。
の二つとなる。
ボクが持ちうる手で可能なのは……。
「……よし、勝ち筋が見えた」
「ぽかーん……」
「何をしているナデシコ。戦闘中にボサっとするな」
「いやいやいや、ボサっともするし、ぽかんともなるよ! なに今の能力!! しーちゃん凄すぎじゃない!?」
「言ったろ? ボクの力は器用貧乏なんだ。相手が舐めた行動をしてくれたからこその反撃方法だ。【
まぁ……【
「それはさておき、ボサっとしてないで、ここからはしっかりとサポート頼むぞ? ナデシコ。クイーン・スネークもバカじゃない。きっと、同じ
「う、うんっ! 分かってる!」
「ともに戦う者として、お前に伝えておく。クイーン・スネークの攻略法を」
「え!? 攻略法!?」
「ああ……奴の【
脱皮できても意味のない状況を作りだし、なおかつ――脱皮できない状況を作りだすことだ」
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