〈36〉ちょっと何を言っているのか分からないのだけれど
「クルッポッポー! 人間だぁー! 人間の生き残りがいたっポー!」
「フゴゴゴゴッ! 馬鹿な奴め! 正面から堂々とやって来やがった!」
「ワンワンワーン! 袋叩きにしろって言ってるのと同じワン!!」
「ガルルルルルッ!! さぁ、どうしてやろうか!? 焼き人間にするか、はたまた、ハンバーグにするか、さぁ、どうやって食ってやろうかぁ!!」
ぎゃあああっ! 囲まれてる! 獣人四体に囲まれてるよぉー!!
どうしようどうしよう!
以前、獣人一体にも殺されかけたっていうのにぃ! 今回は木の枝も持ってきてないし……てゆーか、武器に木の枝って……あの時の私は正気じゃなかったなぁ……。
などと、余計なことを考えている内に、ジリジリと……獣人四体は距離を詰めてくる。
どうする? どうすれば…………………………あ、そういえば、今の私――――
「【勇者の力】が、戻ってたんだった。てへぺろ」
四体の獣人の頭上に、巨大な銀盾ちゃんを召喚。
「クル?」
「フゴ?」
「ワン?」
「ガルルン?」
そしてその銀盾ちゃんを――――
「潰れちゃえ!!」
重力に任せて落っことしちゃえ。
「「ぎゃあああぁああぁああーーっ!!」」
凄まじい轟音と共に、大きな銀盾ちゃんが頭上から落下。
獣人四体は、瞬く間に銀盾ちゃんに押し潰されてしまったとさ。
ふふん。盾が身を守るためだけの物だと思った?
それは残念。使い方によっては――――
「盾だって、立派な武器になるんだから」
ナーチャ王国内で轟音を立ててしまったがために、次々と、獣人たちが現れる。
「チュチュチュー! 敵襲だぞ皆!!」
「メェー! 人間だ!! 捕らえて、クイーン・スネーク様へ献上せよ!」
「ウキキッ! 手柄だ手柄だぁー!!」
「モォー!! この獲物はワシのものじゃあー!!」
「ウオオッオッオ!! 私のものよ!」
「ぴょんの獲物っぴょんっ!」
「ヒヒーン!! 我々の手柄だぁー!!」
ぞろぞろと、欲にまみれた獣人たちが仕掛けてくる。
けど、今の私は……何も怖くない。
だって――――
「今の私には、【
それに感じるの……沢山の人達の魂が、この銀盾ちゃんに集まっていることを……。
私の盾は――――人の想いが集まれば集まるほど、強くなる!
銀盾ちゃんは、まるで私の周囲を取り囲むように変形し、獣人たちの攻撃を、容易く防いでみせた。
その程度の攻撃では……私の銀盾ちゃんには、傷一つつけることができないわよ。
「チュ!?」
「メェ!?」
「ムキャ!?」
「ウオ?」
「ピョン?」
「ヒヒンッ!?」
驚きの表情を見せる獣人たち。
それでは、そんな獣人たちに見せてあげましょう。
私の【
「出てきなさい! 銀盾ちゃんたち!」
そう声を上げた瞬間、私の周囲に、プカプカと浮かぶ九つの銀盾(小型)が出現した。
私は……この銀盾を、全部で十個出現させることができる。
そしてその十個それぞれを、自由自在に操ることができる。
行動も……そして、大きさも、形も。
例えばこんな風に……九個全てを、槍のように形を変えて――――放つ、とか。
「「うぎゃぁぁぁぁああああっ!!」」
あ、数が合わなくて、二個刺しちゃった獣人もいたわ。
私、数も数えられないの、ごめんなさいね。
このように、私は銀盾を思うがままに操れる。さも、念動力を使用しているかのように。
攻撃面も長けているけれど、やはり、この力は守りの力。
上記のような攻撃は、強い敵には通用しない場合がある。
「シャシャシャシャシャッ!!」
「っ! 放て! 銀盾の槍ちゃん!」
「シャアーーッ!!」
「っ!!」
ほら、こんな風に弾かれることもある。
てゆーか……なに? この、蛇の獣人――――速……。
「シャシャシャ、シャアーーッ!!」
「ちょっ!!」
その蛇の獣人は、凄まじい速さで接近してきて、その右拳を思いっきり、私目掛けて放ってきた。
指示が間に合わなかったので、オートで銀盾ちゃんが守ってくれた。
けど……正直、焦った。
あと少し、銀盾ちゃんのカバーが遅かったらと思うとゾッとする。
もの凄い、パワーだった。
この蛇の獣人…………只者じゃない!
「シャシャシャ! 相変わらず凄い盾ねぇー? 私の全力パンチを受けて、ビクともしないだなんてぇー」
蛇の獣人は言う。
ケタケタと……いや、シャシャシャと笑いながら、蛇の獣人は言う。
そんな、只者じゃない獣人と向かい合う私。
ピンときた。
「あなた…………【原種】ね?」
「ご名答」
即答だった。
私の問いかけに対して、隠すこともなく、即答で蛇の獣人は頷いた。
「私の名前は、クイーン・スネーク。誇らしき、十二神獣が一人! その銀の盾を操っているということは、あなたが、この世界の勇者ね?」
「……ご名答」
敵と同じように即答とはいかなかったかったものの、ご名答返しをしてみる。
「シャシャシャシャシャッ! まさか一人でのこのこと、この国まで来るとはねぇ! チュー太郎くんから聞いていた通り、面白い人間だこと!」
「そうよ……私は、面白いの」
良く知ってるじゃない、獣人のくせに。
「気に入ったわぁ、ジーパ・ナデシコ! たった一人でこの国へ殺されにきた、その勇気に免じて、あなたを、私一番のお気に入りコレクションとして、枕元に置いてあげるわぁ、泣いて喜びなさいな」
そんなことをいう、蛇の【原種】。
ちょっと何を言っているのか分からないのだけれど、ここは丁重に……。
「お断りします!」
断っておこう。
そんな訳で……私、ジーパ・ナデシコは、うっかりミスから、しーちゃんよりも先に、蛇の【原種】こと――――クイーン・スネークと、拳を混じえることとなったのだった。
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