第21話

 先日買った革鎧を服の上から身に着け、防具を購入した帰りに服屋のおばあさんから貰ったマントをつける。革鎧は初めて着たが、想定していたよりも動きが阻害されることはない。ちょっと違和感がありはするものの、死にゲーの様にポコポコ死ぬ訳にはいかないのだ。


 因みにマントは緑色なのでもしもの時は茂みに飛び込んで隠れる事が出来る……かもしれない。


 只でさえ弱いのだから小手先でも工夫はした方がいいはずだ。


 俺は腰にポーチを巻き付けると何度か軽く体を動かして動きが阻害されないか確認する。


 そして最後はステータスの確認だ。。


 神崎 廻


 職業 探索者


 レベル 四


 筋力 E-

 耐久 F-

 敏捷 D+

 魔力 F-

 運  E+(変動あり)


 《スキル》

『言語理解』 レベルMax

  『料理』 レベルMAX

  『鑑定』 レベルMax

『アイテムボックス』 レベルMax

『女神ガチャ』 レベル一

『逃げ足補正』        レベル五

『敵感知』          レベル二

『投擲』           レベル二

 New!『身体強化』 レベル一


 何故か『逃げ足補正』のスキルがすっごい被った。拳銃等のレアアイテムは残念ながらGET出来なかったが、念願だった『身体強化』のスキルをゲット出来たのと、他のスキルのレベルが底上げが出来たのは嬉しい。


 すべての確認が終わったタイミングで俺の部屋の扉が軽く叩かれる。


「マワル殿、着替えは終わりましたか?そろそろ出発とのことなのでお迎えに上がりました!」


 俺は元気な声でそう言ったのは、今回俺の命を預ける事になる仲間の内の一人。普段は武器を破壊したり、何かしらドジをしたりする問題児ではあるものの、戦闘面に関して言えば申し分ない位には優秀だ。……いや、本当に今回ばかりはドジしないでね?今回ばかりはドジったら間違いなく死ぬ……俺が。


 俺は外に出たくないなと思いながらも、何時もより重たく感じる扉を開けて外に出る。外にはハルが何時もの鎧を着て待っていた。


「準備は終わりましたか?」


「あぁ。取り敢えず、はぐれて一人になっても逃げ切れる様に秘密兵器を持ってきた」


「コレは……煙幕ですか?」


「ちょっと違うな。……まぁ、もしもの時のお楽しみだ」


「ふむふむ……やはりマワル殿は手先が器用なのですね」


 まじまじと俺の作った手のひらより少し小さい玉を手に取ると、感心したようにそう言った。


「作った物自体はそこまで作成難易度は高くないからな。多分これくらいならお前も作れ……ないな」


「あはは……」


 残念ながら俺には、ハルが黙々と何かを作る姿が想像出来ない。うっかり手を滑らすか、力を入れすぎるかのどっちかは分からないが、道具を壊す姿しか想像できなかった。まぁ、この秘密兵器より遥かに硬い刀を戦闘以外で破壊している時点で皆も察しは着くはずだ。絶対壊すぞコイツ。


「シスターは下にいるのか?」


「はい!リア殿からお話があるとかで呼び出されていましたが、もうそろそろ話も終わっているはずです」


「呼び出し……」


 俺はシスターが呼び出されたと聞いて、若干不安になる。もしかしなくても、リアさんから説教されてるんじゃないだろうか?今回の事を考えればシスターは怒られても仕方が無いと思うが、友人としては多少心配でもある。


「周囲の残党狩りか。……楽では無いよな」


「はい。オークは個の力ではなく、その圧倒的な数を最大の武器としています。外に出張っている数によっては拙者達の役割の方が厳しい状態になる可能性も高いです。因みにボスと巣にいるオークはこの街最強の冒険者パーティーと、Cランクの冒険者達がが受け持つそうです」


 俺は階段を降りながら、ハルから俺たちのパーティーの役割について教えてもらう。


「最強……あぁ、フロスト兄貴のパーティーか。なら安心だな」


 因みにフロストの兄貴とはこの街に唯一存在するBランクパーティーのリーダーで白色の槍を持つ、この街において最強の冒険者だ。戦闘能力だけでいえば、Aランクに届くとも言われているが、Aランクは王都の審査を受けなければなる事は出来ないため、今のところは昇格を保留にしているらしい。


 パーティーメンバーも単独でBランク相当の実力があり、何故こんな辺境に居るのかが分からないパーティーだ。ついでに言っておくと、シスターもAランク相当の実力はあるらしいが、問題行動が多すぎてAランク昇格の資格を剥奪されたらしい。本人は受けるつもりはなかったらしいのでさほどダメージにはなっていないが。


 ハルと話しながら、下の階に降りると何処かやつれた様子のリアさんと正座させられているシスターが居た。シスターの方は階段から降りてきた俺を見ると、チャンスだとばかりに目を輝かせると、こっちに縋り付いてくる。


「______マワルくん〜!リアちゃんが虐めてくるんです〜!」


「虐めてませんよ。そもそもBランクならもう少し報告を………」


「もう小言は聞きたくないです〜!リアちゃんもそんなに怒ると禿げちゃいますよ〜?」


「禿げません。と言うか、シスター・ノルンはもう少し報連相を覚えて下さい。書類に纏める時、私がどんな気持ちで貴方のことを濁してるか分かりますか!?」


「それはもう五回くらい聞きましたから勘弁して下さい〜!」


「……ならあと十五回聞かせてあげますよ」


 ランク降格はしなかった訳だし、まぁこの位の折檻は仕方ないと思う。……これに懲りたらちゃんと正確に報告をするようにしてください。じゃないとリアさんの胃が死んじゃう。


 俺とハルは説教をくらっているシスターを置いて、緊急クエストを受ける冒険者が集まっている酒場の方へと移動すると、シスターが来るまでの間の時間を潰すため、酒場の椅子に座って、作戦会議を始める。


 すると、俺の横に黒色のライトアーマを着て、白色の槍を持った野性味溢れるイケメンが座った。


「_____よっ、坊主!それと嬢ちゃんも!」


「フロスト兄貴……何だか久しぶりな感じがしますね」


「確か、北の山脈に出現した火竜の討伐に出向いていたと聞き及んでいます!火竜はどうでしたか!?」


 興奮した様子でフロストの兄貴に問いつめるハルの姿に俺は若干引く。……なんでギルド職員より、ほかの冒険者事情に詳しいんだろうか?てか、今聞き捨てならないセリフが聞こえた気がする。


「さすが兄貴、そんなヤベー奴も余裕で倒せるなんて、下っ端の俺も鼻が高ぇでさぁ」


「……何だその腰巾着やってそうな口調」


 フロストの兄貴はワクワクが止まらないといった様子のハルを見て、なんだか苦苦そうな表情をすると、そんな表情になった理由を話し始めてくれる。


「……火竜ってのは小さな街くらいなら余裕で燃やし尽くすぐらいの天災なみの化け物だってのは知ってるか?本来なら、俺たちでも苦戦する相手のはずなんだが、件の火竜は瀕死だった。……俺の相棒の一突きでコテンッと、くたばっちまった」


「瀕死?ドラゴンがですか?」


 竜種は生きてきた年月にもよるが、それなりに若い個体でも街を破壊しつくしてしまう程に強い存在だ。そんな竜種を瀕死にまで追い詰めるなんて、何処のどいつの仕業何だろうか?


「鱗もボロボロで金にはならなかった。牙とかは無事だったし別にいいんだが、楽しみにしてただけあって煮えきらないまま帰ってきたんだが、そしたら丁度いい強敵が湧いてきたて聞いてな。戦えなくて不完全燃焼な俺達は他の奴らに頼んで今回のボスを譲ってもらったって訳だ」


「兄貴達なら心配は無いと思いますが、気を付けてくださいね?何か今回は普段とは違ってイレギュラーが異常に多いらしいので」


「これでも一応ベテランだからな。油断だけはしないから安心しろ。……それよりギルド職員のお前が今回のクエスト受ける事になってる事の方が驚きなんだが……」


「……上司命令なんで」


「なんだそりゃ」


 俺の言葉を聞いた兄貴は白い歯を見せてニカりと笑うと、白い槍を持ってパーティーメンバーのいるテーブルへと戻って行った。


「ひぃ〜……やっと終わりました〜……」


「だ、大丈夫ですか……?」


 やっと開放されたのか俺たちのテーブルへとフラフラと歩いてきて、ハルの横の椅子と座ったシスターを春が心配そうに支えた。


「ハル、その人のそれ演技だから放っておいていいぞ?」


「いえ、そういう訳には……」


「マワル君は素直じゃないですね〜。本当は心配だったんでしょ〜?」


「全然」


 迷うこと無くそう答えた俺にシスターが両手を上げてジリジリと近付いて来たので、俺も負けじと威嚇しようとしたが、説教を終えたリアさんが前に出てきたので、直ぐに黙る。同時に周りにいたガヤガヤと騒いでいた冒険者たちも静かになる。


 背筋をピンッとして前に出てきたリアさんは俺たちに向かって一礼すると、クエストの内容話し始めた。


『今回はお集まり頂きありがとうございます。各々の持ち場はそれぞれを書いた紙を配ったと思いますのでそちらご覧下さい。その他の質問については後に私の方へと来てください。それではクエストの大まかな説明ですが______』


 ………。……もう帰りたくなってきた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る