第3話

「____んぁ……」


 背中が少しひんやりしていて心地が良い。感触からして、今俺の背中には芝生の様な草が生えているのだろう。


「暖かいな……」


 このまま二度寝を決め込もうかと考えてしまう程に暖かな陽だまりと芝生のダブルパンチが俺の顎にクリーンヒットしたのが分かる。


「______まぁ、そうも言ってらんないんだけどな」


 ある程度の説明は女神様から受けていはいるのでこんな場所でうかうかお昼寝なんて出来ない。女神様の性格的に安全なところで復活させてくれているとは思うが、長居するのが得策では無いことくらいは分かる。


「さて、此処からどうするかね」


 取り敢えず、女神様から貰ったヘルプを読むとしよう。街も見渡した感じ見えないし、どこ行けば良いかすらもわかんないからな。


「『ステータスオープン』」


 女神様に教えられた通りそう唱えると目の前に透明な板が現れる。VRゲームののウィンドみたいだ。と言うか、見た目的にはウィンドウそのものだ。





 神崎 廻


 職業 探索者


 レベル 一


 筋力 E-

 耐久 F-

 敏捷 D+

 魔力 F-

 運 E+(変動あり)


 《スキル》

  『言語理解』 レベルMax

  『料理』 レベルMax

  『鑑定』 レベルMax

『アイテムボックス』 レベルMax

  『女神ガチャ』 レベル一






 ……うん、何もわかんないや。でも、少なくとも変人に追いかけ回されていたせいか、敏捷が他のスキルより高い。因みに感謝はしない、絶対にだ。


 あと、運の(変動あり)が気になる。土壇場になると運が良くなるとかだろうか?まぁ、運って身体能力とかと違って何時でも変動するし、コレが普通なのかもしれない。


 因みにスキルは女神様に貰った分と日々の研鑽のおかげか『料理』スキルが生えている。


 弟よ、兄ちゃんお前のためだけに磨いた技術が異世界に来て認められたよ……。そして何か以上に高いよ、レベル。まぁ、料理の技術とか毎日作ってたら普通に上達するのは当たり前だし、最高レベルだから何だという話でもある。


 兎にも角にも、ヘルプヘルプと……あった!スキルのしたの空欄の場所二右端に凄い大きな字でヘルプ!って書いてある。主張がめっちゃ激しいから分かりやすかった。


 俺はやたらと主張の激しい文字をを指でタッチする。連動するようにして、三つの項目が出てきた。




 〈始めに/この世界について〉


 〈スキルについて〉


 〈ヘルプについて/最後に〉




 取り敢えず全部読んだ方が良いよな?俺はゲームをする時は、説明書をちゃんと読まない派ではあるが、コレを読み飛ばすのがヤバいことくらい解る。多分、折角の異世界生活が簡単に詰むぞ。


 〈始めに/この世界について〉


 『無事に異世界転生を果たしたようですね。おめでとうございます。それでは、始めに、この世界についての説明をしておこうとと思います。


 この世界は貴方がいた世界とは違い、多種多様な種族が共存しています。貴方と同じ見た目をした一般的な人間種であったり、所々に動物と似た部位を持つ獣人種。後は魔族と呼ばれる、魔力によって突然変異を果たした人間族の末裔である種族。


 他にはこの三つに当てはまらない、例外も居たりするかもしれませんが、普通に暮らしているだけでは滅多に出会うことは無いと思いますので割愛しておきます。


 彼らの歴史や常識は此処に書き記すには、少し余白が足りません。もし、興味が出たのであれば、暇な時にでも大きな街の図書館にでも行って調べてみてください。


 話を戻しますが、この世界は基本的に上記三つの種族を主として大陸が分かれています。。そして、その中から更に国ごとに領土が決められ、それぞれが独特な文化を持ち暮らしし


 貴方がいる草原は、人間領の西側にある国『ウルティア王国』の領土です。そのまま道沿いに進めばアリアドの街に着きます。冒険者になる人が始めに訪れるという始まりの街として有名ですので、旅を始めるにしても、スローライフを楽しむにしても、暫くはそこを拠点にしてみるのが良いと思います。


 町に入るときに、門番に止められるかと思いますが『迷い人』だと言えば通してもらえると思います。その為に制服のまま転生させたので恐らく疑われることは無いはずですよ。


 資金は身分証ついでに冒険者登録を済ませて、『鑑定』を活かせる薬草採取でもして稼ぐのをお勧めします。貴方の『鑑定』のレベルなら薬草採取の依頼は直ぐに終わるでしょうし、一週間ほどで粗方の生活基盤は整うと思われます。


 他には自身の腕を活かして、何処かしらの飲食店で働くのもいいのでは無いでしょうか。きっと、マワルさんの腕なら引く手数多ですよ!


 微力ではありますが貴方のポケットに日用品を揃えるための資金を入れておきましたが、使い方が分からないでしょうから、冒険者ギルドの受付さんや門番にでも聞くといいですよ!


 では、次の項目に行きましょう!


 〈スキルについて〉


 スキルとは訓練やスキルカードで手に入れることのできるものです。因みにスキルカードは迷宮の宝箱や迷宮の魔物からドロップします。


 スキルは自身の技術を一歩向上させるための力です。一応、『魔法』などもその一種ですね。これは普通に習得する場合、そこそこの修練が必要になります。レベルアップも同様です。


 スキルはレベルによって出来ることが増えて行きます。ちなみにスキルレベルを上げる方法は二つ。


 一つ目はひたすらスキルを使い続けること。辛いですが、スキルを鍛える上で一番オーソドックスな方法です。


 二つ目はスキルレベルアップポーションを飲むこと。此方は迷宮でのレアドロップですので、入手には億と言うお金がかかりますのでお勧めはしかねます。


 貴方の場合、スキルは殆どがレベルMaxになってると思いますので、基本的にそのスキルで出来ることは最大限出来ると思います。


『女神ガチャ』についてですが、それだけは他のスキルと違いレベルアップ方法が一つです。それは、『ポイント』をためてランクアップさせること。


『ポイント』は魔物を討伐するか善行を積むかで溜まっていきます。『ポイント』はガチャをする為にも必要ですので、使い所は自分で判断してください。


 お試しで三十連分の『ポイント』をプレゼントしておきましたので、異世界始めの運試しとして使ってみても良いかも知れませんね。


 『女神ガチャ』の景品は全て『アイテムボックス』に行くように設定しています。


 後、『女神ガチャ』ではスキルカードが出ますが、それは基本的に貴方にしか使えません。もし被ってしまった場合にはもう一度使えばスキルレベルが上がりますので、カードが無駄になるということはありません。



 では、次!



 〈ヘルプについて/最後に〉


 このヘルプは基本的なことしか書いていませんが、貴方が望むならば項目が増える可能性があります。


 まぁ、大体のことは先に語った通り、図書館に行けば分かると思いますが、もしそれでも分からないことがあれば、街にある教会に来て祈祷を捧げて下さい。


 最後になりましたが、貴方の次の人生が幸福に満ちていることを願っています。






 俺はヘルプを全て読み終えると右端にあるボタンを押し、ステータスボードを閉じる。


 アフターケアまでしてくれるとか、マジで女神様に感謝しかない。


 凄い優遇措置してくれてるし、俺もう信者になろうかな?あぁ……でも俺、無宗教派のまま死ぬって決めてたんだった。あっ、もう一回死んでたわ。


「取り敢えず、ガチャ回してみるか」


 まだ、陽が落ちるまでは大分猶予はあるし、一度ガチャを回してみても良いかも知れない。


 てか、どうやって回すんだろうか?やっぱりステータスボードのスキル欄から選べるのかな。


「______うぉっ!?」


 女神ガチャの項目をスキルボードでタッチすると、ヴォンっという音と共に、何も無い場所から俺のスマホが現れた。偶然、キャッチできる場所に現れたから良かったけど、もうちょっと位置が遠かったら普通に落としてるぞ。


「電源は点いた……でも、アプリが全部消えてる」


 元々やっていたソシャゲや連絡ツールなどが根こそぎ消去されている。元々スマホに備え付けられている時計や電卓、メモなどの標準機能は存在しているが、大抵のものは消えている。


 ちょっと物悲しくはあるが、こんな場所じゃインターネットなんて繋がらないし別にいいか。


「代わりにガチャが手に入ったし、問題なし!」


 俺は『女神ガチャ』と書かれた、白のアイコンをタッチする。ダウンロードなんて存在しないのか、ほぼノータイムで開いた。


「おぉ、まんまガチャだ」


 白の台座に、ガチャBOXが乗っている画面が映し出される。見ると、金のコインのアイコンと30.00という数字が右上に浮かんでいる。


 何となくガチャBOXをタップすると、『一回回す』と『十回回す』というボタンが出てきた。十回につき10.00と書いてあるので、三十連分無料でプレゼントしてくれた分だ。


「んじゃ、運試しと行きますか」


 両肩をぐるぐると回したり、首を回したりして体を解す。流石に異世界最初のガチャくらいは、ちょっと気合い入れておこう。俺の前世はガチャで構成されていた。なら、この三十連は新しい人生の幸先を決める重要な一戦と言って差し支えないのでは?

 



 取り敢えず、【十回回す】を選択する。


 すると目の前にコインが現れ、入れ口にカチャリとハマる。そして、持ち手を右に回すと_______



【塩 一キログラム】




 ______しょっぱいぜ!……いろんな意味で!


 いや、次だ次に行こう!まぁ、一発目に大当たりとか、爆運じゃあるまいし______おっ、今度は赤いカプセルだ!街のガラガラとかなら、結構な当た_____


【牛肉(ミンチ)三百グラム】


 ……次!


【牛肉(ミンチ)三百グラム】


 ……ん?嫌な予感がするぞ?


【牛肉(ミンチ)三百グラム】

【牛肉(ミンチ)三百グラム】

【牛肉(ミンチ)三百グラム】

  ・


 まぁ、二十連くらいは遊んだりするから仕方ないね。


  ・


  ・


 おかしい……。


 因みに残り二十連で出て来たのは【豚肉(バラ)三百グラム】【鶏肉(モモ)三百グラム】が五つずつ。【魔物避け】が五個。


 そして、【塩胡椒 五十グラム】と【フライパン】、【白米 十キログラム】と【たこ焼き 十人前】が、一つずつ。そしてラストに出て来たのは【割り箸】だった。料理店でも開けってか?


 景品を見てみたが、食べ物系の排出確率は殆ど同じだった。


 因みにスキルの中で排出率が一番高いものは『逃げ足補正』で、逆に低いものは『獣化』だった。ちょっと格好いい。


 食べ物以外のアイテムは【テント】や【カセットコンロ】【フライパン】【拳銃(ゴム弾)】の排出率が一番高かった。……えっ?一番出る確率が高い奴?【割り箸】と【つまようじ】だよ?


 ま、まぁ、何気にレアリティが高い【フライパン】引いてるしね!ある程度は仕方がないんじゃないだろうか?仕方ないわけねぇだろ、クソが。


 ……あぁ、コレだ。この感覚だ。あまりにも理不尽な爆死をした時のこの感覚。これこそが俺がガチャ中毒になった原因。たまんねぇぜ、へへへっ……!まぁ、イラついたり暴言吐いたりするのも愛ゆえにだ。DV彼氏かな?


 兎に角、街へ向かうとしよう。このままでは草原で野宿をする羽目になってしまう。


「ある〜日〜、森の中〜」


 ワクワクが止まらない俺は、先程拾った相棒『マサムネ』をブンブンと振りながら、オペラ版『森のくまさん』を歌いなが、街道に出る。


「花咲〜く、森のみ____何だあれ?」


 街道に出て、しばらく歩くと俺が来た方向とは反対側で大きな砂ぼこりが巻き起こっている。


目を細めて砂煙の原因を視認しようとする。


「アレは、ダチョウと______幼女?」


 ……組み合わせおかしくない?

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