第2話 物語の始まり

街についたレッド、ブルー、グリーンはあたりの様子を見て言葉を失っていた。


「ッ・・・」


「なんだこれ・・」


「これはマズイですね。」


見渡す限り怪人しか見えない。人の悲鳴は聞こえていることから、まだ、逃げ遅れた人がいるはずなのに、その姿は確認できないほど、怪人で埋め尽くされていた。


「とにかく、人命救助を優先。可能な限り敵を倒しながら進もう。」


「「了解!!」」紅の指示にその場で2人もうなずき、救助が始まった。


「桃!!俺達も今すぐ現場に行くぞ!!」


スクリーンを桃と一緒に見ていた王食が、紅の指示を聞く前に動く。



「これは仕方ないですわね、行きましょう。手遅れになる前に。」


「レッド!!敵が多すぎる!!いくら倒しても切りがない!」


「泣き言を言う暇があったらすこしでも多くの人を救え!ブルー!」


「とはいえ、この全身タイツ達みんなそこそこ強いんだよなー!」


「2人とも!、大方の避難は終わったで!!」グリーンが言い終わると2人は示し合わせたかのように武器を展開する。


「よし、こい!!黒棒!!」紅が手を前にだし、叫ぶとどこからともなく六角形の棒状の物が飛来してくる。それを掴み振り回すと全身タイツの怪人が、まとめて吹き飛ぶ。



紅の武器【黒棒】は、秘密結社の施設を建設中に掘り出されたもので、当時は誰にも抜くことのできなかった代物だった、秘密結社所長が面白がり、黒棒を残し施設を建設した。


以後、新隊員が入隊する時の儀式として抜こうとしていたが、紅の時に抜け専用武器となっている。


紅以外の人が持とうとすると、重すぎて持てないが、紅が持っていても普通に思いらしい。


「待ってました!!グリーンナイスです!!ウィンチグローブ展開!!」ブルーは両手の拳を合わせるとそこにオープンフィンガーグローブが装着された。


蒼の武器【ウィンチグローブ】は手のひらにナノマシンが密集し、吸盤のような役割を果たしている。蒼の怪力を活かし一度つかめば離さないようにしている。任意でナノマシンを好きな箇所に移動させガードにもできる。


その性能を活かし全身タイツ怪人の頭を掴み、振り回しながら投げ飛ばしながら、敵陣を切り開いていく。


「皆を守る盾よこい!」グリーンは両手を広げると盾を半分に割った物がそれぞれの手に現れる。


縁六の武器【あわせ鏡】は2つを合わせれば盾になり、左右の手で持っている時は双剣のように使うこともできるが、盾状態で攻撃することのほうが多い。


左右を合わせ、盾モードにしながら、全身タイツの怪人に突っ込む。怪人を、吹き飛ばしながら前に進む。


避難が済んだことで、何も気にせず怪人を倒すことができていたが、快進撃も突然とまる。


「だれか!誰かたすけてー!!!」突如、聞こえた声に3人は一瞬動きをとめる。


「今、助けに!・・・ッ!!」そして、声のする方を向くと完全に動きを止めた。


「ファッファッファー!!!レッドさん達これでは動けまい。」



全身タイツ軍団を纏めているのであろう、スーツに身を包み背中に大きな蜘蛛を背負った怪人がそこに立っていた。


「お、お前はぁぁぁぁ!!」普段の姿では想像がつかぬ勢いで縁六が、叫んだ。


「グリーン!?」紅も様子がおかしいと直に気がつき、声をかけるが聞こえていなかった。


「これはこれは、誰かと思えば何時ぞやの戦隊レッドさんですね?まだ、惨めったらしく活動していたとは驚きましたよ。」


「仲間の・・・仲間の敵ィィぃ!!」


「待って!縁六さん!!」


紅の静止を聞かず、敵に躍りかかろうとしたが、その動きをピタリと止める。


「まだ、冷静な部分が残っていましたか、残念・・・気づくのがもう少し遅かったらこの人質の首を飛ばせたものを。」


「お前は!いつも汚い手ばかりをつかう!!」


「なんとでも言えば良いです、怪人とはそうゆうものですし、あなた方に理解してほしいとも思いません、ファッファッファッ。」


「縁六さん!落ち着いて!何か・・何か方法があるはず!!」口ではそう言っているが、なにもアイディアが浮かばず、内心では焦る紅の心を見透かした様に怪人が言う。


「何をするのも勝手ですが、少しでも変な動きを見せたら、1人ずつ首を飛ばしていきます。それが嫌ならおとなしく殺されなさい。」


(どうする!?どうする、どうする!!こんなとこで死ぬわけにはいかない!でも動けない!!ヤバいヤバいヤバい!!)


ジリジリと迫る敵を前に、同じ言葉がグルグル回るだけで、なにも手がない。覚悟を決めようとしたその時だった。


どこからともなく聞こえる飛来音と共に、怪人の後ろ側を半円を描くかのように矢が突き刺さる。


「な、なんですかこれは!!」怪人も驚き、周囲を見渡す。


地面に突き刺さった矢は、勢いよくシェルターのようなものを形成していった。


「リ〜ダ〜、助けに来てやったぜ〜、俺流のやり方でな!!」


その声に、状況を覆す希望を一瞬見出したが、すぐに間違いだと思い直し、止めに入ろうとする紅。


「やめろ王食!!とまれ!!人質がまだ捕らえられてる!!」


姿も見えない王食に向かって叫ぶが、返ってきたのは無慈悲な一言。


「無・理♡」


突然の出来事に戸惑っていた怪人もすぐ持ち直し、人質を1人自分の前に突き出す。


「この人質が見えないのですか!!どこにいるのかわかりませんが、今すぐでてこないとコイツを殺します!」


「勝手にしやがれ、桃ぉ!!開けろ!」


「下民が命令しないでくれます?言われずとも何がしたいのか、理解しておりますので。」


半ドーム型に形成されたシェルターの真上から、一筋の光の柱が現れる。光の柱から落ちてくるのは、王食だった。


「グリーン!急いでレッドとブルーを守りなさい!巻き添えを喰らいたいのですか?」桃が、忠告を入れるとすぐさまグリーンが動き2人を守るよう盾を構える。


「王食!やめろ!!やめてくれー!!」紅が叫ぶが、王食の耳には、届かず。


「人質を殺りたいなら殺りやがれ、俺様には関係ねぇ!!


喰らえ、必殺!!ナノブレイカー!!!」


空から降ってきた王食の腕には、ミサイルが抱えられていた。それに怪人が、気づく頃にはもう、遅かった。


「貴様ぁ!!全てを巻き込むつもりか!!」


「ご明察!もう何をしても遅えがなぁ!!!」


大・爆・発・・・


全てを燃やし尽くそうとする爆炎と爆風、唯一無事なのは盾で守っていた3人と1人のみ、紅はその場で崩れ落ちていた。


「ヒャッハー!!最高の気分だぜぇ!!やっぱ、怪人は爆破で倒すのが1番気持ちいいぜぇ!!」


興奮したように王食が叫ぶ姿を、ただ眺めていた紅だが、


巻き上げられた砂埃から何かが飛んでいくのを偶然見つけた。


そして、飛んでたそれが何なのか気がつき、駆け出した。


「ちょ!レッド!?どこにいくの!?」


蒼が声を掛けるが、紅の耳には届いていない。


自分の力が足りず、自分の手から滑り落ちた命達。


全部なくなったと思っていたが、1滴だけ残っていたのだとわかったからだ。


「脚力強化!!届けぇぇぇぇぇ!!!」


スーツのナノマシンをほとんど足に集めて脚力を強化し、ジャンプした。


吹き飛んでいく命を救うために。


「間に合った!って・・・・赤ちゃん!?!?」


空中でキャッチした命の顔を覗き込むと、赤ん坊がキャッキャと笑っていた。


これが、戦隊レッドである紅の物語の始まりだった。


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