第5話 約束
光に目が眩む。瞼を開くと、そこは知らない場所だった。体を起こすと、そこは綺麗に整えられた部屋の中で、すぐ外は庭があった。小鳥の囀る声も聞こえてくる。
「起きたか」
声がして、振り向く。そこには、最愛の、神様が居た。
「おはよう、吹雪。っと、そんなに泣くでない。また目が腫れてしまうぞ」
おれはいつから泣き虫になってしまったのだろうか。狐霧と再会してから、泣いてばかりだ。
「おはよう、狐霧」
涙を堪えながら、はにかんだ。ここに居られることが嬉しくてた堪らなかった。狐霧は、そっとおれを抱きしめてくれた。この両腕が、何よりもあたたかかった。そのまま暫く、幸せを噛み締めていた。
「ここは何処?」
数分経って、ようやく狐霧の手から離れたおれは、彼に問う。
「ここか?ここは我の家。そして、お前の家でもある場所。これからここで暮らすことになる。但しほとんど異世界のような場所だ。庭なども含めたら、お前の住んでいた村と同じくらいだと思うぞ」
「すごい、大きな家なんだ……。こんなところで暮らせるなんて、夢みたいだ」
確かに庭は広そうで、相当広い敷地があるのだろう。
「喜んでもらえそうで良かった」
「ありがとう、おれを花嫁に選んでくれて。おれは世界で一番、幸せだ」
「それは、我が言うことであるよ、吹雪。我を選んでくれて、ありがとう。お前のことを、世界で一番、幸せにしてやる」
「ふふ、約束だよ」
二人で指切りをした。もうとっくに叶っている夢だけれど、この先もずっと、この幸せが続きますように、と願いを込めて。
大事な、大事な、二人だけの約束を、この幸せを、これから先ずっと、忘れないように。
心臓を、君に。 観音堂 紅葉 @cho_no_hane
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