第7話 戦闘 巨大ワニとの戦い
鉄の鎧が噛み砕かれるよりも早く、ユウトの魔法攻撃は怪物の目に直撃した。
弱点を撃ち抜かれ、目を焼かれた巨大ワニは「GOGOYYYYYYYYYYYA!」と悲鳴のような雄たけびをばら撒く。
顎、そして牙の緩みを感じたユウトは、身を捻じるように巨大ワニの口内から脱出。
地面に着地を成功させた。見上げれば、巨大ワニに異変が起きていた。
ただでさえ巨大なはずのワニが、さらに大きく見える。その理由は単純だ。
「なんだと……二足歩行だって!」
彼が驚くのも当然だ。目前の巨大ワニが立ち上がっている。
両腕────いや、前足だろうか?
とにかく、それを振り上げてユウトに狙いを定める。
薙ぎ払うかのような攻撃。
そうかと思うと、踏み潰すような攻撃を始めた。
当たるわけにはいかない即死攻撃。それどころか盾で防御することもできない。
受ければ彼の体は軽々と宙を舞い、あるいは踏み潰されてしまうだろう。
「危ねぇ」とユウトは回避に集中する。
巨体ワニの体が反転して尻尾が振るわれる。
これも避ける。しかし────
「こいつ、フェイントを!?」
尻尾を避けた直後だった。巨体ワニは、更に反転して正面を向くと噛み付き攻撃に出た。
(避けられない! 防御も不能────だったら!)
ユウトは向かいくる巨大ワニの牙────その奥にある口内に狙いを定めると
『
「流石に、その巨大さ。狙いを定めぬ連続撃ちでも――――よく当たる」
生物の弱点である粘膜。それを計5発の魔法攻撃を受けて、巨大ワニの噛み付き攻撃はユウトから逸れていった。
(────間一髪、助かった。だが、この攻撃でも戦意は衰えてくれないか)
後方に距離を取ったユウトは、装備の杖を持ち帰る。
今までの杖は、魔力が一点に集中し易いように先端の魔石が美しく研磨された杖――――
次に手にした杖は、むしろ逆。 杖に取り付けられた魔石は、宝石ダイヤのようなカットされている。
魔力を広く分散させるために加工された魔石だ。
「詠唱 灼熱の炎よ、我が身を包み込み、敵の攻撃を跳ね返せ――――『
炎系の防御魔法。 炎の概念が付加された魔法の壁がユウトの前に出現する。
魔力によって質量を持った炎の壁が敵の攻撃を弾く。
それは、巨大なワニの攻撃を相手にしても有効だった。
「――――ふう」と戦闘によって乱れた息を深い呼吸によって、無理やり整える。
「これで少しは時間稼ぎができる。
腰に付けた
戦闘で失われた体力が蘇っていく感覚。 傷も癒え、流血さえも止まる。
仮に致命傷であっても、飲みさえすれば生き残れるほどの品物だ。
ただし、高額で乱用はできない。
「このまま逃げ出したいところだが……」と彼は言葉を止めた。
自分が笑っていることに気づいたからだ。
「やっぱり、止められないよな。冒険者ってのは」と苦笑する。
「さて――――やはり炎属性は効果が薄いか。有効なのは雷属性の攻撃か?」
彼の防御魔法 『
炎属性と相性が悪い相手であっても簡単に突破できるものではない。
魔法が発動している間、彼は回復に専念すると同時に、巨大ワニの観察と戦闘考察に頭を働かせる。
すると、不意に疑問が浮かんだ。それは余裕が生まれたからこその疑問――――
「……こいつ、なんで山にいるんだ?」
周囲を見渡す。 巨大ワニの巨体さから、移動してきた痕跡が残っている。
「確か、この方向には川があったはず。下流から昇ってきた? それこそ――――」
なんのために? その疑問が瓦解していく。
「わかったぜ。コイツの正体は巨大ワニじゃない……」
「こいつは――――」とユウトは最後まで言えなかった。
防御魔法 『
続けられていた巨大ワニの突進に魔法の障壁が限界を迎えた。
まるでガラスのように砕け落ちて、消滅した『炎壁』
しかし、その先にユウトはいなかった。
巨大ワニは気づかない。自らの頭上に浮遊魔法で飛翔している彼の姿に――――
そして彼は詠唱を唱え始めた。
「詠唱 雷霆の力を我に与え 今こそ地に落ちろ――――
雷属性の魔法。
詠唱が終わると巨大ワニの周辺に魔法陣が浮かび上がる。
次の瞬間、強烈な光と轟音が響き渡った。
ユウトの魔法――――『
それを受けた――――魔法の雷撃に体を貫かれた巨大ワニは、その巨体を地面に倒した。
その衝撃で地面が揺れる。
「やったか?」と浮遊魔法を解除して、着地したユウト。
巨大ワニの様子を確認するために近づくも――――
何かが蠢き、ユウトを襲った。
それは、巨大ワニに巻き付き、鎧のようになっていた土草――――それが生物のように動き、ユウトを――――
「だが、それもわかっていた」と彼は笑みを崩さなかった。そして――――
「詠唱 凍てつく極寒の風よ 静かに我の敵を閉ざせ――――
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