第22話
東京のアパートでの二日目、ゴミを捨ててくれる業者と、実家に送る荷物を宅急便業者に任せる為来てもらった。
業者が、帰った後、部屋を見渡すと大きな家具と壱の物だけになった。
もしかしたら、偶然にも壱がアパートに来る可能性も考えてきたが、丸一日以上経って、なんとなくだがまず来ないなと確信した。
もう夕方なので今日もここに泊まって、明日実家に寄ってお昼過ぎには新幹線に乗ろうと考えた。
お腹が空いたので近くのコンビニに食料を買いに外に出た。
歩きながら壱にはいつ連絡しようか迷っていた。今日の夜か、明日岐阜に帰ってからか…。
目的の片付けは終わった。
夏の夕暮れはまだ日差しが強いが、一仕事終えたような、心に空間が出来たような複雑な心境で、空を見上げると、雲ひとつない薄い水色だった。
この気持ちを小説に書きたいと、久々に心から思った。
次の日、実家に寄り母に明日荷物届くから僕の部屋に入れて置いてと言うと、出かけるつもりだったと言ったが、聞こえないふりをして仕事を始めた事を言った。
「壱くん元気?」
と、聞いてきた。僕の仕事には興味がないのかと思った。
「たぶん」
「一緒じゃないの」
「仕事先、岐阜なんだ」
「そうなの、壱くんは東京?」
「うん、僕そろそろ帰る」
壱の事を根掘り葉掘り聞いて来そうだと思って帰る事にした。この中途半端な状態を言葉で表すのは難しい。
「えっ、早いのね」
「色々やりたい事あるから」
早々に実家を出た。壱の事を聞かれたくなかった。僕の気持ちも良くわからない。
昨日考えた間をとって東京駅でお茶を飲みながら壱に連絡を入れた。
(僕の荷物片付けた 家具類は全て壱に任せる)
用件だけ送った。
直ぐに
(今、どこにいる)
と、聞いてきた。
(岐阜に帰るところだよ、新幹線の中)
ちょっとの嘘をついた。
(わかった)
もう暫くは東京に来る事はないかなと思いながら席を立った。
なんか僕の事をジロジロ見る人達が多い。僕の近くに有名人でもいるのかなぁと思ったが、特に気にしない事にした。
残りのお盆休みは、ゆっくり小説を書いた。
僕には珍しく恋愛もので、2万字で締め括った。出版社に送ったが音沙汰ないから使われないのか、その辺はま
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