第19話



 東京へ向かう新幹線は寂しい。成に付いて慌てて岐阜に一緒に行ったが、少し気になったので、とりあえずアパートに帰る事にした。

 2人で簡単に掃除をしていったおかげで、まあまあ綺麗だった。

 さっきまで成とこの部屋にいたような錯覚に落ちいる。


 岐阜で数日一緒に過ごしたからだろうか、

 成の大好きなソファ、岐阜のと同じのがあるからだろうか。

 ダメだ辛い、もう会えない訳じゃないが、辛い。

 和井さんのいるマンションに帰れば良かったかなと思っていたら、


(アパートに帰ったのか?)

と、連絡アプリに和井さんからだった。


新幹線の中で(東京に戻る)って連絡入れていた。


(ああ、明日そっちに帰る)

と、返信した。


(了解)


 今からそっちに帰るって、なんで言わなかったんだろう。まあ、いいか。

 心の整理もままならない、けど仕事はもう休めない。



 次の日、仕事部屋に行った。

 和井さんが、俺の顔を見て

「おかえり」

と、一言だけで後は何も言わなかった。


「休み、…ありがとう。明後日のコンサートは準備大丈夫か?」


「ああ、ショッピングモールの30分のコンサートだから主催者任せだ。ゆチューブにライブ配信用だ」


「少し練習するよ」

と、俺はピアノの部屋に行った。


 ピアノを前にすると、成が早先生のピアノを聴きに行くのかなあとか、気が削ぎれてしまう。


 哀しみの曲の選曲じゃない。誰もが知っている曲のアレンジ曲だ。

 胸の奥がギュッと小さくなっているが、なんとか気持ちを浮上させ練習した。

 

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