第18話

 一週間が過ぎて壱が東京に帰る日だ。

 昨日のうちに壱の岐阜で増えた荷物を宅急便で東京に送った。


 朝、名古屋まで送って行くよと僕が言うと断られた。


「成、俺は寂しい、明日から顔が見れないんだな。

 仕事をしないで、成の帰りを待つ日々だったが、日が経つにつれ仕事をしない自分が不安になってきた。反面この生活もいいなと思ってた」


「僕も寂しいよ。明かりがついている家に帰れない」


「明かりじゃないだろう。俺がいないからだろう。また連絡するよ」

と、苦笑いして壱が言った。


「今月から振り込みいらないよ。ここのアパート代は、家賃支払い口座を変更するよ。東京のアパートの僕の荷物は近いうちに片付けるよ」


「ああ、じゃまたな」


「じぁね」


 壱がアパートから出てドアが閉まった瞬間から涙が出てきた。


 何の涙なのか、強がってが見せたが、寂しくて不安だ。今までは一緒に居なくとも壱が僕を守ってくれた。

 なにも気にしない、感じない僕だったらよかっと思う。

 

 壱は僕にはもったいない。

 きっかけは愛ちゃんから教わった引っ越しだったが、僕と壱はそれより前からすれ違いが始まっていた。気づかないふりが心の中で越えてしまった。


 


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