第17話
次の日は日曜日で俺が起きて顔を洗いに行こうと思ったら、成がソファでゴロゴロしていた。
俺は成の伸ばしていた足を退けてソファの端に座って、
「すっかり寝過ごした。もう昼か。昨日のお礼を早先生に明日伝えてくれ」
「わかった。後、一週間のんびりしていくの?」
「…、早先生カッコいいな、ビックリした」
成の質問には答えないで、俺の思っていた事を言った。
「僕もそう思うよ。早先生は僕の方がカッコいいって言ってくれるけど、目が悪いんだろうな」
「えっ、普段そんな事2人で言い合っているのか?」
「まさか、たまにだよ」
「たまにでも変だ」
「別に真剣に話しているわけじゃないよ」
「ふぅん」
と、俺は言って顔を洗おうと立ち上がったら、成が俺の背中に、
「昨日の肉、美味しいかったね、もう昼だけど何か食べる?」
「もう少ししたら俺が適当に作ってやるよ、とりあえず顔を洗ってからコーヒーを入れてくる」
と、俺は歩きながら言った。
「ありがとう、僕は食パン食べたいから焼くよ」
「あっ、俺も食パンでいいや、俺の分も焼いて」
「わかった」
あっと言う間にパンとコーヒーが出来た。
2人で食べながら、俺は成に、
「後、一週間で東京に帰る。俺達の未来どうなるんだろうな」
「壱、僕は自立する。東京のアパートの僕の荷物は、片付ける。もし壱が住むなら家具類はそのままで、住まないなら処分しよう」
「そうなるのか?俺に未練はないのか?」
「壱には感謝だけだよ。この先もずっと」
「一緒に居たいと思わないのか?」
「僕は、半人前だけど、自分の未来を人の為に尽くせたらと思う。もちろん好きな人と一緒に居られれば尚いいんだろうが、……壱の事は…好きだ、けど何かが今は違うんだ。
壱は、僕をずっと幼く見ているだろう、まあ確かに社会ズレしてない分、子供のままだよ、このままの僕だと壱も近い未来に僕を嫌いになるよ」
「はっ、嫌いになる訳ないだろう」
「今は、ぎりぎり若いからいいけど、おじさんになるんだよ僕達。薄っぺらいおじさんになりたくないし、壱だけカッコいいおじさんになるんじゃ釣り合わないでしょ」
「そんなのは全て成の考えだろう。俺は一生一緒に居たい」
「壱は、意地になっているだけだよ」
「毎日一緒に居ても、端と端で寝て寂しい。俺はどうしたらいいのかわからない」
「仕事を認めてくれる事。
もしだよ、このまま壱との関係続けて、5年後あたりに、壱が別れたいと僕に言ったらどうなるか想像出来るだろう。
壱の手の中で楽していた僕は生きていけないと思う」
「絶対に離さない」
「人生に絶対はない。今、僕が僕になる時だと思う」
「何を難しい事、言い出すんだ」
「うぅん、今までの僕は僕であって僕じゃない
壱の分身のような感じかな、……なんかちょっと違うな、どういえばいいんだろう」
「離れたいって事?捨てられると思うからか?俺が成を捨てるって思っているんだ」
「えっーと、今まで言った事ないけど、東京での壱との生活、最近は辛かった。
岐阜に来ると楽に息が出来る」
「えっ、最近っていつ頃から…辛いって?何が?」
「連絡なしで帰ってこない日とか、事故かなとか、夜遅い時は夕飯準備した方良いのかとか、細かい事だよ。いちいち聞くな見たい感じになっていたし。
空気の読めない僕でも分かるんだ。
もっと大事な事は、自分に自信がないから不安なんだ」
「…、仕事を増やして一杯一杯だった。成がいるから頑張れた…」
言い訳を言う壱が珍しい。
「こう言うのをすれ違いって言うのかなぁ」
「言葉の多少の違いがあるが、同じ様な話の繰り返しだな、…散歩の行ってくる」
と、壱は外へ出て行った。
「ああ」
僕はまたソファでゴロゴロした。
僕も同じ事を思う。同じ繰り返しだ、結論が出ない。
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