第9話

 通しで働き1週間が過ぎた休みの今日は、午前中からソファでゴロゴロして、天井を眺めながら今までを振り返って考えた。


 僕は僕を自覚する必要がある。

 今までの午前中だけの仕事と違い、僕の診療室で僕の責任で患者さんを見て、1週間経って僕が変わる必要があると感じた。

 

 先週、食事をしながら僕の事を早先生に指摘されビックリしたが、わかる人にはわかるのだろう。

 早先生の秘密も知った気がして今まで感じていた緊張感が薄れた、仕事もしやすく、僕が診断に迷っても丁寧に教えてくれる、前以上に優しい、とても近くに感じて心がふわふわしている。

 気を引き締めてと自分に言い聞かせながらの1週間で、今まで自分を持っていなくて、常に壱に庇護された生活を続けてきた。

 午前中だけの仕事の時は、早先生のやり取りを見て覚えて入れば良かった。

 これからの仕事は、やってもらうから、やってあげる、正反対だった。


 違和感はあるが、充実感もあるような感じだ。自分を出し自分から指示を出す、あたり前の事に戸惑って足踏みしているが、自分は変わる必要性を感じる。テキパキと動く看護師さんたちの上に入れるよに頑張って働きたいなあと、頭の中でぐるぐると考え込んだ。


 壱とはキチンと話したと思っているが、僕が僕をはっきり伝える自信がまだない。

 いつになっても、たぶんない。

 

 きっかけは、知らされない壱の引っ越しだったが、ただのきっかけだったのだろう。

 自由気ままに、働かずのんびりして飽きたなんて、贅沢な事を思ってちゃいけないと心に蓋をしてきたが、張り合いがない生活は、28歳の僕にはキツかったようだ。


(時間が取れる日を教えて

ゆっくり話がしたいる  成)

僕から連絡を入れるなんて何年ぶりだろう。


 時間を置かず、

(来週の土曜日の夕方から、東京のアパートで待ってっいる)

と、壱から連絡がきた。


(わかった  成)


 どうなるのか予測が付かないが、離れる覚悟で、会話を進めるつもりだ。

 働かないで欲しいと僕ではなく、違う誰かに言えばいい。

 一週間後に、壱と会うんだなあと思った。

 ちょつと前までのドキドキ感なんて全くない会うのが嬉しいという気持ちも、うぅん少しはあるかなぁ、僕は壱とどうなりたいのか結論はない。

 そろそろ、掃除とスーパーに行かなくてはと、思い切って立ち上がった。

 冷蔵庫の中が、空っぽだった。


 次の日の帰り際、早先生から土曜日あたり飲みに行かないかと言われたが、週末は東京に行くと断った。また次に誘うと言ってくれた。

 早先生と飲み会で頭の中でぐるぐるしていた事を聞いてもらいたかった、とても残念だが壱とは絶対に会う必要がある。





 

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